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第二章 失恋
2:母の追い討ち
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珍しいリリカの口答えに、リチャードはリリカの心痛を察し顔を歪めた。
「ローズ! 落ち込む可愛い娘に、もっと優しい言葉をかけてはやれないのか!?」
リチャードの言葉もお構いなしに、ローズはいつものように自分の言いたいことを主張し続ける。
「あらリチャード様、私はリリカのためを思って言っているのです。母親として、きちんと教えるべきことは教えないと。リリカ、結婚はビジネスも関係するのよ。互いにメリットのある結婚をしなさい。貧乏研究員などと結婚しても、我が家になんのメリットもないどころか、金の無心でもされたら堪らないわ! ウィリアムとの結婚は諦めなさい!」
ローズは、リリカの伯爵夫人への道が閉ざされたことで、少し気が立っていた。
レッドフィールド伯爵家には男児がおらず、リチャードの年の離れた弟に爵位を早めに引き継ぐ予定となっている。
そのため金遣いの荒いローズには、今後の生活に対する不安があった。
領地が広大で資源も豊富なブルーム伯爵領領主の妻にリリカがなれば、今後の自分にとっても有益であると考えていたのだ。
「ちょうど社交界デビューが間近に迫っているし、ちょうど良いわ! リリカ、良い人を見付けるのですよ。容姿や性格ではなく、"結婚することで、如何に我がレッドフィールド伯爵家にメリットがあるか"で選びなさい」
「お母様、私もそのようなことを考えた方が良いのですか?」
両親の後ろから、急にキャサリンの言葉が飛んで来る。
会話に割り込んで来たキャサリンは、どうやら一部始終を聞いていたようだ。
「あら、キャサリンいたのね! キャサリンは妹だし、あなたが幸せになれると思った人なら、誰でも良いのよ。勿論、スターリン以外でもよ。まあ……あなたは選びたい放題だし賢い選択をするでしょうから、私は心配していないわ。好きにして良いのよ」
ローズは、優しくキャサリンの手を取って言う。
ずっと下を向いていたリリカは、この隙に自分の部屋へ逃げ帰った。
(今は何も聞きたくないし、考えたくない。放っておいて……)
部屋に入ると直ぐにベッドへ突っ伏したリリカは、押し殺したように泣き続けたのだった……
故意なのかは定かではないが、昔からリリカがローズに小言を言われていると、キャサリンは間に入って来てローズの気を逸らしてくれるところがある。
ただ単に”自分が注目を浴びたいだけだろう”とリリカは考えているが、助かっていることもまた、事実だった。
幼い頃から、キャサリンにはローズがいつもべったりとくっついているため、リリカとキャサリンは二人で時間を過ごすことは殆どなかった。
(キャサリンは私とは違う)
母親からの愛情の差は明らかで、リリカはずっと、キャサリンに対して劣等感を抱いている。
そしてこれ以上傷付きたくないリリカは、キャサリンの存在について深く考えないようにわざとしていた。
キャサリンを出来る限り視界に捕えないようにする習慣が、いつの間にか身についているのだった……
「ローズ! 落ち込む可愛い娘に、もっと優しい言葉をかけてはやれないのか!?」
リチャードの言葉もお構いなしに、ローズはいつものように自分の言いたいことを主張し続ける。
「あらリチャード様、私はリリカのためを思って言っているのです。母親として、きちんと教えるべきことは教えないと。リリカ、結婚はビジネスも関係するのよ。互いにメリットのある結婚をしなさい。貧乏研究員などと結婚しても、我が家になんのメリットもないどころか、金の無心でもされたら堪らないわ! ウィリアムとの結婚は諦めなさい!」
ローズは、リリカの伯爵夫人への道が閉ざされたことで、少し気が立っていた。
レッドフィールド伯爵家には男児がおらず、リチャードの年の離れた弟に爵位を早めに引き継ぐ予定となっている。
そのため金遣いの荒いローズには、今後の生活に対する不安があった。
領地が広大で資源も豊富なブルーム伯爵領領主の妻にリリカがなれば、今後の自分にとっても有益であると考えていたのだ。
「ちょうど社交界デビューが間近に迫っているし、ちょうど良いわ! リリカ、良い人を見付けるのですよ。容姿や性格ではなく、"結婚することで、如何に我がレッドフィールド伯爵家にメリットがあるか"で選びなさい」
「お母様、私もそのようなことを考えた方が良いのですか?」
両親の後ろから、急にキャサリンの言葉が飛んで来る。
会話に割り込んで来たキャサリンは、どうやら一部始終を聞いていたようだ。
「あら、キャサリンいたのね! キャサリンは妹だし、あなたが幸せになれると思った人なら、誰でも良いのよ。勿論、スターリン以外でもよ。まあ……あなたは選びたい放題だし賢い選択をするでしょうから、私は心配していないわ。好きにして良いのよ」
ローズは、優しくキャサリンの手を取って言う。
ずっと下を向いていたリリカは、この隙に自分の部屋へ逃げ帰った。
(今は何も聞きたくないし、考えたくない。放っておいて……)
部屋に入ると直ぐにベッドへ突っ伏したリリカは、押し殺したように泣き続けたのだった……
故意なのかは定かではないが、昔からリリカがローズに小言を言われていると、キャサリンは間に入って来てローズの気を逸らしてくれるところがある。
ただ単に”自分が注目を浴びたいだけだろう”とリリカは考えているが、助かっていることもまた、事実だった。
幼い頃から、キャサリンにはローズがいつもべったりとくっついているため、リリカとキャサリンは二人で時間を過ごすことは殆どなかった。
(キャサリンは私とは違う)
母親からの愛情の差は明らかで、リリカはずっと、キャサリンに対して劣等感を抱いている。
そしてこれ以上傷付きたくないリリカは、キャサリンの存在について深く考えないようにわざとしていた。
キャサリンを出来る限り視界に捕えないようにする習慣が、いつの間にか身についているのだった……
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