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第二章 失恋
1:現実
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リリカが屋敷へ戻ると、よく知る顔の人物と鉢合わせた。
リチャードを来訪していたウィリアムの父ブルーム伯爵が、ちょうど帰るところだったのだ。
リリカは、伯爵がリリカを見つけた途端に渋い顔をしたのを、決して見逃さなかった。
「……リリカ……」
「伯爵様、こんにちは」
リリカは先程のウィリアムの話が信じられなくて、信じたくなくて、顔に笑顔を貼り付けてそう言う。
リリカの様子から、ウィリアムに話を聞いたのを察したブルーム伯爵は、一瞬で申し訳なさそうな顔に変わった。
「……リリカ、本当に申し訳ないと思っている。君もずっとウィリアムの研究を応援してくれていたね。だからどうか、わかってくれ……」
本当に申し訳ないと思っていることが、伯爵の全身から伝わってくる。
(嘘でも夢でも、何かの間違いでもなかったわ……)
「ウィリアムのことは忘れて、良い人と幸せになるのだよ」
何も言わずに立ち尽くしているリリカにそう言い、ブルーム伯爵は馬車へ乗り込み速やかに去って行った。
(良い人……? だから、私にとっての"良い人"はウィリアム様なのよ。ウィリアム様以外の人に目が行ったことなんて、今の今までに一度もないわ。私は、ウィリアム様が良いのよ……。なのに何故、ウィリアム様も伯爵様も、そのような酷いことを言うの……?)
リリカは立っているのもやっとだった。
早く一人になりたくて、目に込み上げてくる涙を堪えながら足早に自室を目指す。
すると部屋に辿り着く前に、廊下でふと呼び止められた。
「リリカ、戻ったか。……たった今、ブルーム伯爵から謝罪を受けたところだ。……今日、ウィリアムから話を聞いたかい?」
リリカが、声の主である父リチャードを振り返ることが出来ずにいると、リチャードの傍から違う声が発せられる。
「あんなに頑張って媚びを売っていたのに、残念ね。リリカにしては頑張っていると感心していたのに」
今のリリカには、ローズの言葉を受け流すことが出来るだけの、心の余裕はなかった。
「……放っておいて下さい!」
リチャードを来訪していたウィリアムの父ブルーム伯爵が、ちょうど帰るところだったのだ。
リリカは、伯爵がリリカを見つけた途端に渋い顔をしたのを、決して見逃さなかった。
「……リリカ……」
「伯爵様、こんにちは」
リリカは先程のウィリアムの話が信じられなくて、信じたくなくて、顔に笑顔を貼り付けてそう言う。
リリカの様子から、ウィリアムに話を聞いたのを察したブルーム伯爵は、一瞬で申し訳なさそうな顔に変わった。
「……リリカ、本当に申し訳ないと思っている。君もずっとウィリアムの研究を応援してくれていたね。だからどうか、わかってくれ……」
本当に申し訳ないと思っていることが、伯爵の全身から伝わってくる。
(嘘でも夢でも、何かの間違いでもなかったわ……)
「ウィリアムのことは忘れて、良い人と幸せになるのだよ」
何も言わずに立ち尽くしているリリカにそう言い、ブルーム伯爵は馬車へ乗り込み速やかに去って行った。
(良い人……? だから、私にとっての"良い人"はウィリアム様なのよ。ウィリアム様以外の人に目が行ったことなんて、今の今までに一度もないわ。私は、ウィリアム様が良いのよ……。なのに何故、ウィリアム様も伯爵様も、そのような酷いことを言うの……?)
リリカは立っているのもやっとだった。
早く一人になりたくて、目に込み上げてくる涙を堪えながら足早に自室を目指す。
すると部屋に辿り着く前に、廊下でふと呼び止められた。
「リリカ、戻ったか。……たった今、ブルーム伯爵から謝罪を受けたところだ。……今日、ウィリアムから話を聞いたかい?」
リリカが、声の主である父リチャードを振り返ることが出来ずにいると、リチャードの傍から違う声が発せられる。
「あんなに頑張って媚びを売っていたのに、残念ね。リリカにしては頑張っていると感心していたのに」
今のリリカには、ローズの言葉を受け流すことが出来るだけの、心の余裕はなかった。
「……放っておいて下さい!」
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