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天使につられて

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その日からレオナルドは番犬になった。
何処に行くにもついてくる。ロクサーヌと会うときでさえついてきてロクサーヌに呆れられていた。
“まあ、夫が護衛になったと思えばいい?…でもレオナルドじゃ護衛にはならないわね、牽制程度?”
などと言って笑っていた。そのロクサーヌも今やロクサーヌ・ヘイデンとなり、夫アーサーが目を光らせていた。

私の部屋のドアにベルを通した紐を打ち付け、出入りで音が鳴るようにして隣の部屋でレオナルドが耳を立てている。
それが続くこと2ヶ月以上。ほとんど眠れなかったのだろう。頭痛や吐き気が出て目眩を起こしてしまった。

医師と相談して強制的に眠らせようかと思ったが、疑心暗鬼になり二度と飲み物や食べ物を口にしなくなると困るから説得するしかないと言われ、レオナルドの部屋でソファに横たわるレオナルドと話し合っていた。

「ベッドで寝てくださいませんか」

「ベッドだとベルが聞こえない」

「見張らなくても、そのようなときは正直に告げますから」

「出会いの根を潰そうとしているんだ」

「条件をお忘れですか」

「邪魔をしないとは言っていない」

「お食事をしませんか」

「食べたくない。スープだけ飲み干しているからいいだろう」

「全然良くないです」

「王妃達が私のリアと兄上をくっつけようとしていたなんて」

「このままですと見張ることも出来なくなりますよ」

「リアを他の男に取られるくらいなら餓死でもした方がマシだ」

立ち上がり部屋を出ようとするとレオナルドも立ちあがろうとしたがふらついていた。
使用人にソファに座らせるよう命じて部屋を出た。

厨房に行き、肉や野菜を細かく刻み、煮込みにしてレオナルドの部屋に戻った。

「レオナルド様。召し上がってください」

「食べたくない」

「私が作ったのですから食べてください」

「リアが?」

「レオ様のために作りました」

「食べる」

「熱いですからゆっくり召し上がってください」

「美味い」

「良かったです。……世話がやけますね」

「まだあるの?」

「ありますが、時間を置きましょう。胃がびっくりしてしまいます」

「またリアが持って来てくれる?」

「大きな子供ですね」

「……」

レオナルドの瞳から涙がポタポタとこぼれ落ちた。
食べる手が止まってしまったので、器とスプーンを取り上げた。

「あーん」

「……」

スプーンで掬って口元へ運ぶと大人しく食べた。

「狡いんだから」

涙をこぼしながら嬉しそうに微笑むレオナルドに私は母性を刺激されたようだ。
それ以降、作りはしなかったが食事の面倒を見て、夫婦の間を使うことにした。
同じベッドに寝れば安心するだろうと思ったけど、
“寝たら抜け出すかも”とじっと私を見ていた。

手首をリボンで繋ぐ案を出したが解けば終わりだと譲らない。
仕方なく、鎖で繋がれた手枷を私の手首とレオナルドの手首に付けて 鍵はレオナルドに渡した。
寝返りは上かレオナルドの方を向くしかない。

だけど慣れるうちに鎖を引っ張って逆側に寝返るようになり、引っ張られたレオナルドが私を背後から抱きしめるように寝ていた。

時々硬いモノがお尻に当たる。
最初はこんなモノを挿れるのかと恐れ慄いたものだ。慣れたら無害な生き物が生えてると思うようになった。


結局、王太子妃とは離縁になり、護衛騎士と生まれた子の3人で祖国に還えされた。
今から妃教育を始めては時間がかかるので、また他国の王女を迎えた。

そしてロクサーヌが男児を産んだのは、私とレオナルドが婚姻してから2年半後のことだった。

この頃には手枷で繋ぐのは止めていた。アザができてしまったからだ。その代わりレオナルドは私を抱きしめて眠るし私も慣れてしまった。

「あう~」

「セレスくんはロクサーヌに似て可愛いですねぇ」

「あ~」

人見知りのセレスタンは私の抱っこは受け付ける可愛い赤ちゃんだ。中身もロクサーヌにそっくりかもしれない。

抱っこするたびに自分の子が欲しくなってきた。
それを察したレオナルドはピリピリしていた。



ある夜、レオナルドはベッドの上に正座をした。

「リア。私と子を作るのは嫌か」

「……」

「養子を取ろうか」

「養子?」

「探すなら早くしないと、すぐに見つかるかもしれないし、時間がかかるかもしれない。どの子でもいいわけじゃないだろう?」

「……」



ロクサーヌの子、セレスタンが1歳になったお祝いをした日の夜。

「レオナルド様」

「ん?」

「私はまだ蟠りがあります」

「……」

「長すぎました」

「……」

「ですが子を作ろうと思います」

「それは私との子でいいという意味か?」

「はい。だって貴方は私から離れないじゃないですか」

「ありがとう、オリヴィア」

「…経験はないです」

「知ってる。できる限り優しくする」

「はい」

「キスをしても?」

「…はい」



翌朝、裸の私を裸のレオナルドが抱きしめて眠っていた。ちょっと下腹部が重い。それにヌルヌルするし違和感もある。

昨夜の挿入時、痛みのあまり“小さくして”とお願いしたけど“小さくしたら挿入できない”と返され、宥められ貫かれた。

内臓裂けた?と思いたくなる痛みだったけど、慣れるのも早かった。

そう。王妃殿下の言っていた女の悦び…とまではいかなかったが最終的には気持ちよくなっていた。

それが普通なのか、レオナルドの経験値がそうさせるのか。

「何で寝起きに抓るんだ?」

「ちょっと腹が立って」

「そうか。私は嬉しかった。ありがとう」

額にキスをされたが、また苛立ってきた。

「それ、クセですか?」

「何が」

「事後の」

「よし、はっきりさせよう。
私が関係を持ってきたのは事実だ。だがそこにはカケラの愛も無い。
共寝さえしない。用が済めば終わりだ。
抱きしめて寝たことも額におはようのキスもしたこともない。体を舐めたことも無い。
処女だとしても気遣いをしたことなどない。あまり騒ぐようなら止めたからな」

「……」

「本当だ。だからリアが妬く必要はない」

「や、妬いてなんて、」

「ああ、嬉しい。嫉妬されるのがこんなに嬉しい日が来るなんて」

と言いながら、もう一度私を抱いた。





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