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1年後
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私は王都を拠点にしていて、時々領地のレオナルドを確認しに行く程度。レオナルドは領地に入り浸りだ。
叔父一家と一緒に過ごすのが楽しいようで生き生きしている。
「お帰りなさいませ」
「ただいまオリヴィア、叔父上からのお土産だ」
私達は婚姻し夫婦になっている。
今回はウィリアム王太子殿下に第二子が産まれるということで戻って来た。
「……」
叔父様からの手紙は丸めてポケットにしまった。
「どうした?」
「いえ、特には」
叔父様からの手紙には“レオナルドは浮気していないぞ”と書いてあった。
あんなに女遊びをしていた人が大丈夫なのだろうか。それとも都会の女性がいいのかしら。
「オリヴィアの予定は?」
「後で持って行かせます。レオナルド様はご自由に外出なさってください」
「オリヴィアと一緒でなければ外出するつもりはない」
「無理をなさらなくても、」
「もしかして他の女と寝るとでも?そんな心配は無用だ。私はオリヴィアを望んで妻にしたんだ。その意味を理解してくれと何度も言っているだろう」
「ですがそう思われても不思議ではない下地を作ってしまったのはレオナルド様です。
……もう言いません。ですが私が言いたいことは変わりません。囲ったり屋敷に連れ込んだり使用人や領地の者、私の血縁に手を出さなければ構いません」
「……」
「明日から宮に泊まるのでしたね。私は明日挨拶をして屋敷に戻ります。ゆっくりおやすみください」
この1年、レオナルドが頑張っていることは知っている。だけど私が頑張ったのは13年。その間に酷い扱いを受けた記憶は消えるものではない。
翌日、登城したが、案内されたのはレオナルドの部屋だった。そこにいたくなくて散歩に出た。
城で働く少し懐かしい人達とすれ違っては呼び止められる。あの頃とは違って気分はいい。愛想よく返事を返していると、とんでもない事を耳にした。
は!?
早歩きで戻ると、王妃殿下の侍女の一人が私の姿を見て縋ってきた。
「オリヴィア様っ」
「案内してくださるかしら」
「はいっ」
侍女について行き 通されたのは王族のプライベートリビングだった。
王妃「今すぐ処刑よ!」
陛下「他国の王女にそれは無理だ」
王妃「王太子妃のクセに他の男との子を産んで“お義母様 待望の男児です”などと吐いたのですよ!」
さっき耳に挟んだのは、今朝 王太子妃が男児を産んだのだけど、顔立ちも色も王太子妃の専属護衛騎士に瓜二つなのだとか。
ウィ「はぁ」
陛下「オリヴィアはどう思う?」
私「私ですか!?」
陛下「参考までにな」
私「隔世遺伝ということもあります。当人達は認めたのでしょうか」
ウィ「護衛騎士は認めたよ。男児が産まれないと、別の妃を迎えてしまうと泣き落としを使われたらしい。嫁いだ時に一緒に祖国から連れて来た騎士だ。
次期王妃の地位を脅かされるかもしれないと危惧して応じたが、まさかあんなにそっくりに産まれるとは思わなかったようだ。先に産んだ長女が母親似だから次もそうだろうと思ったらしい」
私「産まれた子は認知するわけには参りませんが、ウィリアム王太子殿下は王太子妃殿下をお慕いしていらっしゃいますか」
ウィ「無い」
私「情も?」
ウィ「無い」
私「仮にですが、王太子妃殿下は婚姻前から護衛騎士と恋仲だったのでしょう。一途な恋物語という見方も悲恋話という見方もできますが、いずれにしても彼の子を産むほど愛していた、ということにして差し上げます。護衛騎士の命を救うにはそれしかありませんし、王太子妃殿下も良くてお飾りの妃、悪くて幽閉の可能性があるのですから 祖国に戻って護衛騎士と再婚し親子3人で幸せに暮らすことを望むかもしれません。
皆様次第で望ませることも可能です」
王太子殿下はじっと私の顔を見た。
私「ですが、私には王太子妃殿下との政略結婚の詳細は分かりません。交易の他に何かあるようでしたら、王太子妃はそのままに 次のお妃様をお迎えしてしまう方がよろしいかと」
我が国では男児を産めない妃は立場を失う。
今の王太子妃が他国の王女であったとしても、男児を産まない以上、次に迎えた妃が男児を産めば立場が入れ替わる。つまりただの妃になり王妃になることはない。
王妃「やっぱりオリヴィアがいいわ。今からでも実行しない?」
私「何のことでしょう」
王妃「ウィリアムとのことよ」
私「本気ですか!?」
王妃「もちろんよ」
私「私はそんなつもりは、」
レ「どういうことですか」
王妃「貴方達は白い結婚なのだから、オリヴィアにウィリアムとの子を産まないかと打診していたのよ」
レ「は?」
王妃「オリヴィアが実子を望むとき、他の殿方との子を産む可能性も承知の上で婚姻したのでしょう。
驚くことはないわ」
レ「兄上は知っていたのですか」
ウィ「知ってはいたが本気にはしていなかったよ」
レ「リアは私の妻です!誰にも渡す気はありません!」
陛下「だが、それを決めるのはオリヴィアだ」
王妃「そうよ。婿入りの身で女遊びをしていたのは貴方じゃないの。自分だけ許されるなどと思わないでちょうだい。オリヴィアは貴方のために諦めたもの失ったもの飲み込んだものがいくつあると思っているの。
本当は貴方の希望で婚約を解消したときに、オリヴィアを第二妃に迎えたかったのよ」
陛下「ルシアン王太子のことも、オリヴィアが望めば嫁がせるつもりでいた。だが条件付きで2人で復縁すると言うから、ルシアンを国に戻し、ウィリアムの第二妃への打診もしなかった。
その条件をレオナルドが反故にすることはできん」
レ「絶対に嫌です!愛する妻をみすみす他の男と関係を持たせたりしません!」
その日からレオナルドは私の部屋の隣に移った。
叔父一家と一緒に過ごすのが楽しいようで生き生きしている。
「お帰りなさいませ」
「ただいまオリヴィア、叔父上からのお土産だ」
私達は婚姻し夫婦になっている。
今回はウィリアム王太子殿下に第二子が産まれるということで戻って来た。
「……」
叔父様からの手紙は丸めてポケットにしまった。
「どうした?」
「いえ、特には」
叔父様からの手紙には“レオナルドは浮気していないぞ”と書いてあった。
あんなに女遊びをしていた人が大丈夫なのだろうか。それとも都会の女性がいいのかしら。
「オリヴィアの予定は?」
「後で持って行かせます。レオナルド様はご自由に外出なさってください」
「オリヴィアと一緒でなければ外出するつもりはない」
「無理をなさらなくても、」
「もしかして他の女と寝るとでも?そんな心配は無用だ。私はオリヴィアを望んで妻にしたんだ。その意味を理解してくれと何度も言っているだろう」
「ですがそう思われても不思議ではない下地を作ってしまったのはレオナルド様です。
……もう言いません。ですが私が言いたいことは変わりません。囲ったり屋敷に連れ込んだり使用人や領地の者、私の血縁に手を出さなければ構いません」
「……」
「明日から宮に泊まるのでしたね。私は明日挨拶をして屋敷に戻ります。ゆっくりおやすみください」
この1年、レオナルドが頑張っていることは知っている。だけど私が頑張ったのは13年。その間に酷い扱いを受けた記憶は消えるものではない。
翌日、登城したが、案内されたのはレオナルドの部屋だった。そこにいたくなくて散歩に出た。
城で働く少し懐かしい人達とすれ違っては呼び止められる。あの頃とは違って気分はいい。愛想よく返事を返していると、とんでもない事を耳にした。
は!?
早歩きで戻ると、王妃殿下の侍女の一人が私の姿を見て縋ってきた。
「オリヴィア様っ」
「案内してくださるかしら」
「はいっ」
侍女について行き 通されたのは王族のプライベートリビングだった。
王妃「今すぐ処刑よ!」
陛下「他国の王女にそれは無理だ」
王妃「王太子妃のクセに他の男との子を産んで“お義母様 待望の男児です”などと吐いたのですよ!」
さっき耳に挟んだのは、今朝 王太子妃が男児を産んだのだけど、顔立ちも色も王太子妃の専属護衛騎士に瓜二つなのだとか。
ウィ「はぁ」
陛下「オリヴィアはどう思う?」
私「私ですか!?」
陛下「参考までにな」
私「隔世遺伝ということもあります。当人達は認めたのでしょうか」
ウィ「護衛騎士は認めたよ。男児が産まれないと、別の妃を迎えてしまうと泣き落としを使われたらしい。嫁いだ時に一緒に祖国から連れて来た騎士だ。
次期王妃の地位を脅かされるかもしれないと危惧して応じたが、まさかあんなにそっくりに産まれるとは思わなかったようだ。先に産んだ長女が母親似だから次もそうだろうと思ったらしい」
私「産まれた子は認知するわけには参りませんが、ウィリアム王太子殿下は王太子妃殿下をお慕いしていらっしゃいますか」
ウィ「無い」
私「情も?」
ウィ「無い」
私「仮にですが、王太子妃殿下は婚姻前から護衛騎士と恋仲だったのでしょう。一途な恋物語という見方も悲恋話という見方もできますが、いずれにしても彼の子を産むほど愛していた、ということにして差し上げます。護衛騎士の命を救うにはそれしかありませんし、王太子妃殿下も良くてお飾りの妃、悪くて幽閉の可能性があるのですから 祖国に戻って護衛騎士と再婚し親子3人で幸せに暮らすことを望むかもしれません。
皆様次第で望ませることも可能です」
王太子殿下はじっと私の顔を見た。
私「ですが、私には王太子妃殿下との政略結婚の詳細は分かりません。交易の他に何かあるようでしたら、王太子妃はそのままに 次のお妃様をお迎えしてしまう方がよろしいかと」
我が国では男児を産めない妃は立場を失う。
今の王太子妃が他国の王女であったとしても、男児を産まない以上、次に迎えた妃が男児を産めば立場が入れ替わる。つまりただの妃になり王妃になることはない。
王妃「やっぱりオリヴィアがいいわ。今からでも実行しない?」
私「何のことでしょう」
王妃「ウィリアムとのことよ」
私「本気ですか!?」
王妃「もちろんよ」
私「私はそんなつもりは、」
レ「どういうことですか」
王妃「貴方達は白い結婚なのだから、オリヴィアにウィリアムとの子を産まないかと打診していたのよ」
レ「は?」
王妃「オリヴィアが実子を望むとき、他の殿方との子を産む可能性も承知の上で婚姻したのでしょう。
驚くことはないわ」
レ「兄上は知っていたのですか」
ウィ「知ってはいたが本気にはしていなかったよ」
レ「リアは私の妻です!誰にも渡す気はありません!」
陛下「だが、それを決めるのはオリヴィアだ」
王妃「そうよ。婿入りの身で女遊びをしていたのは貴方じゃないの。自分だけ許されるなどと思わないでちょうだい。オリヴィアは貴方のために諦めたもの失ったもの飲み込んだものがいくつあると思っているの。
本当は貴方の希望で婚約を解消したときに、オリヴィアを第二妃に迎えたかったのよ」
陛下「ルシアン王太子のことも、オリヴィアが望めば嫁がせるつもりでいた。だが条件付きで2人で復縁すると言うから、ルシアンを国に戻し、ウィリアムの第二妃への打診もしなかった。
その条件をレオナルドが反故にすることはできん」
レ「絶対に嫌です!愛する妻をみすみす他の男と関係を持たせたりしません!」
その日からレオナルドは私の部屋の隣に移った。
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