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2章 逃避行は従者と共に
17話 矢の嵐
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そして次の日の朝。
「姫様お時間です」
「う~ん、もう朝? ってここどこ?」
「峡谷のド真ん中だよ。なに寝ぼけてんだよ姫」
「そっか……そうだよね」
私はうつ向いた。
こんな泣いた顔二人に見せたくない。
地面に一粒、また一粒と涙が頬を伝って流れ落ちる。
「姫様…………」
「ううん、ごめん。なんでもないから」
ネムは私を優しく抱き寄せた。
そして頭を撫でながら、
「お辛いのかもしれませんが、今が姫様にとって踏ん張る時です。それを乗り越えた先にきっと幸せな日々が待っていますから」
私は頷きながら鼻をすすった。
そう、ネムの言う通り今が私にとって踏ん張る時であり、一生で一度の試練なのかもしれない。
本当に女神様がいるのなら、なんで私にこんな酷な試練を与えたの?
「おい、ネム少しばかりマズくないか」
「そうですね、どう対処しましょうか」
「二人共なんの話をして――」
私が二人に問いかけたその時、
「マズい、矢が飛んでくるぞ!」
「姫様は我の後ろに」
私はすぐさまネムの後ろに移動し、ユーシスは慌ただしくしている私達の前に出て、腕に装着している盾を構えた。
「ネム一応剣を構えてろ!」
そのユーシスの言葉にネムは静かに頷き、鞘から剣を抜いた。おそらく大量の矢が飛んでくるのを想定した上でのことだろう。
もしユーシスの盾で防ぎ切れなかった矢をネムが剣で対処する、でもそんな上手く行くのかな。
ネムの後ろにいれば安全だとは思うけど。
「ここで鍛錬の成果を見せてやる。〈物理防御盾〉!」
ユーシスの前に突如として巨大な光の盾が現れた。
私達に向かって飛んでくる矢は次々と盾に弾かれ地面に落ちていく。
しかし矢の嵐は一向に止むことはなく、移動するのもままならない。
急いで峡谷を抜けるっていうのもありだけど、矢が私達目掛けて正確に飛んで来るということは、正確な位置を探知する魔法か、それとももうすでに包囲されている状態なのか。
背後には誰の気配もない。
ユーシスがシールドを展開しながら走れるのなら……可能性はある。
「ねぇネム、背後は取られていないようだし、ユーシスが盾を展開しながら走れる――」
「姫様の仰りたいことはわかります。ですがそれではユーシスの負担が大きくなることは間違いありません。あの盾も魔力を消費していますので」
「でもこの場を切り抜けるのに他に方法が!」
「お話中悪いが、ネム気づいてるか?」
ユーシスは真剣な面持ちでネムにそう問い掛けた。
「ええ、包囲されてますね」
「でも後ろには……」
私が後ろを振り返ると、そこには鷲の紋章が描かれた鎧を身に着けた兵士達の姿。
隊列を組んだまま私達の方へと前進してくる。
その顔を凛々しく、いかにもやる気に満ちた表情だった。
隊列の後方には白馬に乗ったマキアスさんの姿があった。
私はマキアスさんに向けて大きく手を振った。
それに答えるかのように手を振り返してくれるマキアスさん。
やっぱりマキアスさんは悪い人じゃないよね。
「マキアスさん助けてください。矢が――」
マキアスさんに駆け寄ろうとした時、焦っていたせいか脚がもつれて転んでしまった。
「姫様! ご無事ですか?」
「うん…………」
そしてネムが私の肩に手を置いた瞬間、マキアスさんが驚きの言葉を兵達に告げた。
「姫様お時間です」
「う~ん、もう朝? ってここどこ?」
「峡谷のド真ん中だよ。なに寝ぼけてんだよ姫」
「そっか……そうだよね」
私はうつ向いた。
こんな泣いた顔二人に見せたくない。
地面に一粒、また一粒と涙が頬を伝って流れ落ちる。
「姫様…………」
「ううん、ごめん。なんでもないから」
ネムは私を優しく抱き寄せた。
そして頭を撫でながら、
「お辛いのかもしれませんが、今が姫様にとって踏ん張る時です。それを乗り越えた先にきっと幸せな日々が待っていますから」
私は頷きながら鼻をすすった。
そう、ネムの言う通り今が私にとって踏ん張る時であり、一生で一度の試練なのかもしれない。
本当に女神様がいるのなら、なんで私にこんな酷な試練を与えたの?
「おい、ネム少しばかりマズくないか」
「そうですね、どう対処しましょうか」
「二人共なんの話をして――」
私が二人に問いかけたその時、
「マズい、矢が飛んでくるぞ!」
「姫様は我の後ろに」
私はすぐさまネムの後ろに移動し、ユーシスは慌ただしくしている私達の前に出て、腕に装着している盾を構えた。
「ネム一応剣を構えてろ!」
そのユーシスの言葉にネムは静かに頷き、鞘から剣を抜いた。おそらく大量の矢が飛んでくるのを想定した上でのことだろう。
もしユーシスの盾で防ぎ切れなかった矢をネムが剣で対処する、でもそんな上手く行くのかな。
ネムの後ろにいれば安全だとは思うけど。
「ここで鍛錬の成果を見せてやる。〈物理防御盾〉!」
ユーシスの前に突如として巨大な光の盾が現れた。
私達に向かって飛んでくる矢は次々と盾に弾かれ地面に落ちていく。
しかし矢の嵐は一向に止むことはなく、移動するのもままならない。
急いで峡谷を抜けるっていうのもありだけど、矢が私達目掛けて正確に飛んで来るということは、正確な位置を探知する魔法か、それとももうすでに包囲されている状態なのか。
背後には誰の気配もない。
ユーシスがシールドを展開しながら走れるのなら……可能性はある。
「ねぇネム、背後は取られていないようだし、ユーシスが盾を展開しながら走れる――」
「姫様の仰りたいことはわかります。ですがそれではユーシスの負担が大きくなることは間違いありません。あの盾も魔力を消費していますので」
「でもこの場を切り抜けるのに他に方法が!」
「お話中悪いが、ネム気づいてるか?」
ユーシスは真剣な面持ちでネムにそう問い掛けた。
「ええ、包囲されてますね」
「でも後ろには……」
私が後ろを振り返ると、そこには鷲の紋章が描かれた鎧を身に着けた兵士達の姿。
隊列を組んだまま私達の方へと前進してくる。
その顔を凛々しく、いかにもやる気に満ちた表情だった。
隊列の後方には白馬に乗ったマキアスさんの姿があった。
私はマキアスさんに向けて大きく手を振った。
それに答えるかのように手を振り返してくれるマキアスさん。
やっぱりマキアスさんは悪い人じゃないよね。
「マキアスさん助けてください。矢が――」
マキアスさんに駆け寄ろうとした時、焦っていたせいか脚がもつれて転んでしまった。
「姫様! ご無事ですか?」
「うん…………」
そしてネムが私の肩に手を置いた瞬間、マキアスさんが驚きの言葉を兵達に告げた。
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