19 / 35
2章 逃避行は従者と共に
18話 対峙
しおりを挟む
「皆、そこの女を捕らえよ! 従者は殺しても構わん!」
マキアスさんは兵達にそう告げた。
そしてネムは私の耳元で小さくため息を吐いたあと、
「姫様これが現実です。あの男も所詮王家のいいなり。地下牢に投獄され少しは懲りたのかとも思いましたが、姫様の考えはいつもお花畑のようですね」
「おいネム、そんなに言わなくても」
「黙れユーシス、あなたは前方に集中していなさい」
そう言ってユーシスが庇いに入ってはくれたが、ネムの怒りは一向に収まらない。
自分でも分かってる。
だけどやっぱり信じたかった。
マキアスさんのことを。
「ネムごめんなさい、私……」
その時だった。
「リーゼ姫どうかわたくしめと共に城へお戻りに。もし条件がおありでしたらお聞きいたしましょう」
「…………わた、しは……だったら私があなたと共に城に戻ったらネムとユーシスはどうなるの?」
「反逆の罪で尋問の後、処刑となるでしょう」
「マキアスさんどうかこの二人だけは!」
「………………」
マキアスさんは黙り込んだ。
峡谷は突如として静寂に包まれ、矢の嵐は止み、兵達は前進を止めた。
「マキアスこれ以上姫様を傷つけるというのなら、即刻あなたの首を斬り落とします」
「ハッハハハハ! お前が? 現に姫でもない者の従者風情が!」
「その従者風情を舐めると痛い目に合いますよ。試してみますか?」
「戯言を! 即刻捕らえよ!」
再び兵達が一斉に前進を始めた。
「ふふふっ!」
ネムが突然笑い出したのには、さすがに私も驚いた。
こんな絶対絶命な状況で笑えるなんて、ネムどうかしちゃったの?
もしかしてどうしようもないって思って、笑うことしかできないの?
私はユーシスの表情を確認するも、至って普通。
額から汗を流し、真剣な眼差しで兵達をジッと見つめている。
でも、本当にこのままじゃネムもユーシスも私も危ない。どうしたら……いったいどうしたらいいのよ。
「面白いことになってるね」
峡谷の上から聞こえてきたのは、陽気な女性の声。
私は声がした方向に顔を向けると、そこにはこの世界では珍しい黒髪に赤い瞳、腰に提げているのは東方に伝わる太刀だろうか? それに羽織まで、いかにもこの近辺に住んでいる女性ではないということだけは自信を持って言える。
その女性から漂う殺伐としたオーラに私は腰が引けそうになるも、ネムはその女性を見つめた後、正面の兵達に剣の矛先を向けた。
その瞬間、さっきまで見ていたはずの女性が瞬く間に姿を消し、峡谷に響き渡った兵達の叫び声と命乞い。
女性は目で追えない速度と剣戟で次々と兵達を蹂躙していく。
「な、なんだコイツは!」
「なんなんだよ! 俺たちはなにも悪いことなんて――」
「ぐわっ!!」
人が……死んでる? ウソ……まさか、こんな……。
私の目先にはピクリとも動かない兵達の姿があった。それを見た私は動揺を隠せないでいた。
今まで生きてきて人がこうもあっさりと死ぬ光景は見たことがなかったからだ。
ネムはというと、どうやらマキアスさんに狙いをつけているらしく、剣の矛先を静かに向けた。
それを見たマキアスさんはマキアスさんで腕に余程の自信があるのだろう、ネムに大剣を向ける。
まさか本当に争いが始まるなんて、思ってもいなかった。いえそうじゃない。仮に対峙したとしても争いが始まって欲しくないと願っていた。
しかしそんな願いは叶うことなく、現に血みどろな争いが勃発している。
謎の女性に関しても、何人か仲間を連れていたみたいで参戦しているし、ユーシスも私を守ることで精一杯のようで、常に盾を構えて真剣な面持ちで警戒している。
ネムはというとマキアスさんと死闘を繰り広げている真っ最中。
「ネム・エドワーズなぜその女を渡さない? 渡せばこのような争いを避けられたのだがな」
マキアスさんは大剣をネムに向かって大きく振りかざした。
マキアスさんは兵達にそう告げた。
そしてネムは私の耳元で小さくため息を吐いたあと、
「姫様これが現実です。あの男も所詮王家のいいなり。地下牢に投獄され少しは懲りたのかとも思いましたが、姫様の考えはいつもお花畑のようですね」
「おいネム、そんなに言わなくても」
「黙れユーシス、あなたは前方に集中していなさい」
そう言ってユーシスが庇いに入ってはくれたが、ネムの怒りは一向に収まらない。
自分でも分かってる。
だけどやっぱり信じたかった。
マキアスさんのことを。
「ネムごめんなさい、私……」
その時だった。
「リーゼ姫どうかわたくしめと共に城へお戻りに。もし条件がおありでしたらお聞きいたしましょう」
「…………わた、しは……だったら私があなたと共に城に戻ったらネムとユーシスはどうなるの?」
「反逆の罪で尋問の後、処刑となるでしょう」
「マキアスさんどうかこの二人だけは!」
「………………」
マキアスさんは黙り込んだ。
峡谷は突如として静寂に包まれ、矢の嵐は止み、兵達は前進を止めた。
「マキアスこれ以上姫様を傷つけるというのなら、即刻あなたの首を斬り落とします」
「ハッハハハハ! お前が? 現に姫でもない者の従者風情が!」
「その従者風情を舐めると痛い目に合いますよ。試してみますか?」
「戯言を! 即刻捕らえよ!」
再び兵達が一斉に前進を始めた。
「ふふふっ!」
ネムが突然笑い出したのには、さすがに私も驚いた。
こんな絶対絶命な状況で笑えるなんて、ネムどうかしちゃったの?
もしかしてどうしようもないって思って、笑うことしかできないの?
私はユーシスの表情を確認するも、至って普通。
額から汗を流し、真剣な眼差しで兵達をジッと見つめている。
でも、本当にこのままじゃネムもユーシスも私も危ない。どうしたら……いったいどうしたらいいのよ。
「面白いことになってるね」
峡谷の上から聞こえてきたのは、陽気な女性の声。
私は声がした方向に顔を向けると、そこにはこの世界では珍しい黒髪に赤い瞳、腰に提げているのは東方に伝わる太刀だろうか? それに羽織まで、いかにもこの近辺に住んでいる女性ではないということだけは自信を持って言える。
その女性から漂う殺伐としたオーラに私は腰が引けそうになるも、ネムはその女性を見つめた後、正面の兵達に剣の矛先を向けた。
その瞬間、さっきまで見ていたはずの女性が瞬く間に姿を消し、峡谷に響き渡った兵達の叫び声と命乞い。
女性は目で追えない速度と剣戟で次々と兵達を蹂躙していく。
「な、なんだコイツは!」
「なんなんだよ! 俺たちはなにも悪いことなんて――」
「ぐわっ!!」
人が……死んでる? ウソ……まさか、こんな……。
私の目先にはピクリとも動かない兵達の姿があった。それを見た私は動揺を隠せないでいた。
今まで生きてきて人がこうもあっさりと死ぬ光景は見たことがなかったからだ。
ネムはというと、どうやらマキアスさんに狙いをつけているらしく、剣の矛先を静かに向けた。
それを見たマキアスさんはマキアスさんで腕に余程の自信があるのだろう、ネムに大剣を向ける。
まさか本当に争いが始まるなんて、思ってもいなかった。いえそうじゃない。仮に対峙したとしても争いが始まって欲しくないと願っていた。
しかしそんな願いは叶うことなく、現に血みどろな争いが勃発している。
謎の女性に関しても、何人か仲間を連れていたみたいで参戦しているし、ユーシスも私を守ることで精一杯のようで、常に盾を構えて真剣な面持ちで警戒している。
ネムはというとマキアスさんと死闘を繰り広げている真っ最中。
「ネム・エドワーズなぜその女を渡さない? 渡せばこのような争いを避けられたのだがな」
マキアスさんは大剣をネムに向かって大きく振りかざした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
46
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる