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第4章 晴嵐宅配便

第4-8話 カイザーファーマサイド・元秘書の思惑

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「まぁ、今回出現したレッドドラゴンのでしたが……」
「良い実戦データが取れたので良しとしましょう」

「…………」

 コツコツコツ……

 革靴とブーツの足音が人影の少ない港に反響する。
 カイザーファーマのCGO (チーフ・ギフト・オフィサー)に就任したキユーの後につき、フレッチャー級の精霊であるフィルは港の隣にある大型倉庫まで来ていた。

 元いた世界のコンクリートのような材質で作られた倉庫は、幅100メートル、奥行き300メートルほどもあり、駆逐艦どころか彼女が護衛した事のある大型航空母艦ですらすっぽりと納まりそうだ。

(各種整備機材が装備されたドライドックで、マホー防御もされているらしいデスが……これだけの施設、カイザーファーマがこの世界最大の企業というのも、あながち誇張ではなさそうですね)

 ここに来るのは初めてだが、彼女の母国であったステイツでもなかなか見ない規模の施設に興味津々になる。

(ふふっ……この姿になってから全力でbattleしたのは初めてでしたが……フィルはもっと強くなれそうデス!)

 なにより、敵はMONSTERなのだ。
 気兼ねなく撃ちまくれるのがGOOD!!

 イオニ達との第二戦に向けて、改めて気合を入れなおす。


 ギイイイィ


 重い鉄製の扉が開き、倉庫の中へと促される。

「さて、我がカイザーファーマは新たなギフトを入手しました。
 ブリーディングしたところ、空中と海中の敵に対して特別な効果を発揮するようですね」

 キユーが指さす先、海水が満たされたドライドックの中には駆逐艦フレッチャーが浮かんでおり、数人の魔法使いが起重魔法で巨大な部品を艦体に取り付けている。

「アレは……ブリテン製の最新型ヘッジホッグ (水中の敵を攻撃する多弾散布型の最新兵器)!?」
「それに……Really!? 完成したばかりのAN/SPS-6レーダー!?」

 思わずフレッチャーの艦体に駆け寄るフィル。
 彼女の主体記憶では戦争終結後、続々と改修に入った姉妹艦たちが取り付けられた最新装備のはずだ。

 こんなものまでがこの世界に?

「YES!! これでフィルが最強デスっ!!」

 彼女も見たことがない最新装備に飛び上がって喜びを表す。

 その様子を無感動に見つめるキユー。

「まったく能天気な……これだけのギフトと施設を整えたというのに」
「動かすのに”精霊”が必要なのも考え物だな……兵器は兵器らしく、ただ動いていればいいものを」

 僅かにいら立ちを募らせ、ぼそりと吐き捨てる。
 まあいい……我々カイザーファーマが世界の物流を独占するためには必要なことだ。

 魔の海のモンスターに対する干渉の件も含めて、まだまだ課題は多い。

「そ~だ、チーフマネージャー、聞きたい事があるんデスが!」

 焦っては事を仕損じる……今後の施策を検討していたキユーの思考をフィルの元気な声が中断する。

「……なんですかフレッチャー君」

「ずっと疑問だったんだケド……なんでゼンブの装備をフィルだけで動かせるんですか?
 イオニ……伊402達はフェドの魔力を使ってるのに?」

 無邪気なフィルの疑問に、ピクリと片方の眉を跳ね上げるキユー。

「ちっ…………社の機密事項です。 現場の君が知る必要はありません」

「ええ~っ!? 教えてくださいよチーフマネージャーさん!!」

(本当に……意志を持った精霊というのは面倒だな)

 諦めきれないのか、まとわりついてくるフィルを振り払いながら、キユーは倉庫の出口へと向かう。

(私の野望を叶えるため……苦労してこの地位を手に入れたのだ)
(精々派手に働いてもらいますよ、フレッチャー)
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