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第4章 晴嵐宅配便
第4-7話 競争の行方
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「レッドドラゴンにやられた所は……外装が壊れただけか」
レッドドラゴンの群れを殲滅した後、フィルの損傷具合を確かめるために
僕たちは駆逐艦フレッチャーの艦上に集まっていた。
「これならコンバージョンだけで直せそうだな……はあっ!」
キラキラキラ……
コンバージョンの魔法によりマテリアルが変換され、砲塔の傷がふさがっていく。
「スゴい! ここまでのマホーツカイはこっちにはいませんヨ!?」
驚きの声を上げるフィル。
「詳しい設計図がないと内部の機械までは直せないけどね」
「よしっ……とりあえずこんなもんかな!」
フレッチャーの後部甲板に搭載された台形の単装砲。
その周囲をぐるっと回り、傷一つなく修復された事を確認する。
内部の回路?に損傷はなさそうだったから、これで大丈夫なはずだ。
「Excellent!! Thanks! フェドっ!」
ぎゅっ!
「わぷっ!?」
我ながら完璧な修理具合に驚いたのか、感極まった様子のフィルが抱きついてくる。
彼女は僕より少し背が高い。
ぴょんと抱きつかれると、ふかふかで大迫力の胸が顔に押し付けられて……おふっ。
「こらフェドっ! こっちには見目麗しい大和撫子がいるのに、お下品なヤンキー胸にデレデレしないのっ!」
「Fuuuunn~? そっちのサブマリナーはともかく、IJNのヒコーキはとっても流線形ね、セーラ?」
突然の暴挙?に驚いたセーラがフィルに突っかかるが、余裕たっぷりの彼女はなだらかなセーラの稜線を一瞥すると、ぷっと吹き出す。
「むき~っ! 奥ゆかしい大和撫子はこれでいいのよっ!」
「ふふふ~んっ☆」
予想通りの反応に満足した様子のフィル。
彼女の両腕に力が入り、僕の顔面はより強く胸に押し付けられる。
おおおっ……天上の感覚っ。
「くっ……個艦性能で及ばないなら連携で勝負。 イオニ! アンタの力、見せつけてやんなさい!」
劣勢になったセーラは増援を呼ぶが……。
「うおおおおお……これが魅惑のSGレーダー。 ねえねえフィルちん、ここの部品持ってっていい? 先っぽだけだから!」
「興味なし!?」
IJN随一の胸部装甲を誇るイオニは、フィルに搭載された最新電子装置の方に興味津々なのだった。
「HAHAHA! やっぱりおふたりは面白いですネ!」
「お礼にステイツのBigステーキをごちそうしますから、こっちに来てくだサ~イ!」
「Ice Creamもありますヨ?」
「マジでっ!? アイスっ!?」
「…………」
勝利を確信したフィルのお誘いに、あっさりと陥落するイオニなのだった。
*** ***
「Fu~、何とか無事に着きました!」
「エマージェンシーな出来事がありましたし、最初の勝負はDrawという事でどうカナ?」
「ふん……仕方ないわね。 水上砲戦では助けてもらったし」
「おかげで魚雷を節約できたしね~」
「あっ、フィルちん! US Navy特製アイス、また食べさせてねっ!」
「もち、オッケー♪」
「……アンタは結局メシか!」
レッドドラゴンの襲撃から1週間ほど……僕たちとフィルは船団を組んでレイニー共和国の港へ到着していた。
結局、ジェント運輸とカイザーファーマの運送競争第1戦は引き分けという事になりそうだ。
「ふふっ……っと、それより、魔の海に棲んでいるモンスターの活性化が気になるな……ふたりとも! 僕は共和国政府に報告に行くから、先に宿に入っててくれない?」
仲良くじゃれ合う彼女たちの様子に思わずほっこりしてしまったけど、レッドドラゴンの群れの襲撃といい、明らかに異常事態だ。
伊402とフレッチャー、晴嵐で水中・水上・空中をカバーできたから無事に来れたものの、どちらか単独では危なかったかもしれない。
あの後、シーサーペントなど海棲モンスターにも襲われたのだ。
「了解だよフェドくんかんちょー! こっちも各部整備を終えてから行くから、遅くなるようなら先に入ってて」
イオニは伊402の状態が気になるようだ。
大きな損傷は無いとはいえ、内部の機械に問題がある可能性もある。
「あたしも手伝うから、そっち方面はよろしくね!」
「了解!」
僕はふたりに手を振ると、伊402の甲板から桟橋に飛び乗る。
「おっと……」
共和国中央庁舎がある方向に走り出した僕は、ひとりの男性とすれ違う。
眼鏡をかけ、いつも冷徹な雰囲気を崩さない男……あれ、あの人って運送ギルドの秘書?
いや、胸元に光る社員証はカイザーファーマの物で……。
「まったく……フレッチャーさん。 貴方には新型ギフトとして多額の投資がされているのです」
「いくら想定よりモンスターの出現数が多かったとはいえ、ライバルであるジェント運輸を助けるなど、感心しませんね」
「所詮は小国の運送ギルド……まずは圧勝してもらわないと。 投資家も見ているんですよ」
「Oh……すみませんデシタ、シニアディレクター」
「でも、カノジョたちの助力無しではとこっちもやられてました」
「貴方のスペックならもっとできるはずです……新たなパーツも準備していますので、こちらへ」
「Funnnn……イオニ、セーラ、艦体の修理もあるから、ここでバイバイね。 また会いまショ」
こちらは勝ち負けにそこまでこだわっていないけど、カイザーファーマはそうはいかないという事か。
いつの間にかカイザーファーマに転職していたらしい元秘書に叱られ、少ししゅんとしたフィルは男性に付いて右手に拡がる港湾施設の方に行ってしまった。
やれやれ……モンスターの事といい、面倒な事が増えそうだ。
僕は頭を掻きながら、共和国中央庁舎に急ぐのだった。
レッドドラゴンの群れを殲滅した後、フィルの損傷具合を確かめるために
僕たちは駆逐艦フレッチャーの艦上に集まっていた。
「これならコンバージョンだけで直せそうだな……はあっ!」
キラキラキラ……
コンバージョンの魔法によりマテリアルが変換され、砲塔の傷がふさがっていく。
「スゴい! ここまでのマホーツカイはこっちにはいませんヨ!?」
驚きの声を上げるフィル。
「詳しい設計図がないと内部の機械までは直せないけどね」
「よしっ……とりあえずこんなもんかな!」
フレッチャーの後部甲板に搭載された台形の単装砲。
その周囲をぐるっと回り、傷一つなく修復された事を確認する。
内部の回路?に損傷はなさそうだったから、これで大丈夫なはずだ。
「Excellent!! Thanks! フェドっ!」
ぎゅっ!
「わぷっ!?」
我ながら完璧な修理具合に驚いたのか、感極まった様子のフィルが抱きついてくる。
彼女は僕より少し背が高い。
ぴょんと抱きつかれると、ふかふかで大迫力の胸が顔に押し付けられて……おふっ。
「こらフェドっ! こっちには見目麗しい大和撫子がいるのに、お下品なヤンキー胸にデレデレしないのっ!」
「Fuuuunn~? そっちのサブマリナーはともかく、IJNのヒコーキはとっても流線形ね、セーラ?」
突然の暴挙?に驚いたセーラがフィルに突っかかるが、余裕たっぷりの彼女はなだらかなセーラの稜線を一瞥すると、ぷっと吹き出す。
「むき~っ! 奥ゆかしい大和撫子はこれでいいのよっ!」
「ふふふ~んっ☆」
予想通りの反応に満足した様子のフィル。
彼女の両腕に力が入り、僕の顔面はより強く胸に押し付けられる。
おおおっ……天上の感覚っ。
「くっ……個艦性能で及ばないなら連携で勝負。 イオニ! アンタの力、見せつけてやんなさい!」
劣勢になったセーラは増援を呼ぶが……。
「うおおおおお……これが魅惑のSGレーダー。 ねえねえフィルちん、ここの部品持ってっていい? 先っぽだけだから!」
「興味なし!?」
IJN随一の胸部装甲を誇るイオニは、フィルに搭載された最新電子装置の方に興味津々なのだった。
「HAHAHA! やっぱりおふたりは面白いですネ!」
「お礼にステイツのBigステーキをごちそうしますから、こっちに来てくだサ~イ!」
「Ice Creamもありますヨ?」
「マジでっ!? アイスっ!?」
「…………」
勝利を確信したフィルのお誘いに、あっさりと陥落するイオニなのだった。
*** ***
「Fu~、何とか無事に着きました!」
「エマージェンシーな出来事がありましたし、最初の勝負はDrawという事でどうカナ?」
「ふん……仕方ないわね。 水上砲戦では助けてもらったし」
「おかげで魚雷を節約できたしね~」
「あっ、フィルちん! US Navy特製アイス、また食べさせてねっ!」
「もち、オッケー♪」
「……アンタは結局メシか!」
レッドドラゴンの襲撃から1週間ほど……僕たちとフィルは船団を組んでレイニー共和国の港へ到着していた。
結局、ジェント運輸とカイザーファーマの運送競争第1戦は引き分けという事になりそうだ。
「ふふっ……っと、それより、魔の海に棲んでいるモンスターの活性化が気になるな……ふたりとも! 僕は共和国政府に報告に行くから、先に宿に入っててくれない?」
仲良くじゃれ合う彼女たちの様子に思わずほっこりしてしまったけど、レッドドラゴンの群れの襲撃といい、明らかに異常事態だ。
伊402とフレッチャー、晴嵐で水中・水上・空中をカバーできたから無事に来れたものの、どちらか単独では危なかったかもしれない。
あの後、シーサーペントなど海棲モンスターにも襲われたのだ。
「了解だよフェドくんかんちょー! こっちも各部整備を終えてから行くから、遅くなるようなら先に入ってて」
イオニは伊402の状態が気になるようだ。
大きな損傷は無いとはいえ、内部の機械に問題がある可能性もある。
「あたしも手伝うから、そっち方面はよろしくね!」
「了解!」
僕はふたりに手を振ると、伊402の甲板から桟橋に飛び乗る。
「おっと……」
共和国中央庁舎がある方向に走り出した僕は、ひとりの男性とすれ違う。
眼鏡をかけ、いつも冷徹な雰囲気を崩さない男……あれ、あの人って運送ギルドの秘書?
いや、胸元に光る社員証はカイザーファーマの物で……。
「まったく……フレッチャーさん。 貴方には新型ギフトとして多額の投資がされているのです」
「いくら想定よりモンスターの出現数が多かったとはいえ、ライバルであるジェント運輸を助けるなど、感心しませんね」
「所詮は小国の運送ギルド……まずは圧勝してもらわないと。 投資家も見ているんですよ」
「Oh……すみませんデシタ、シニアディレクター」
「でも、カノジョたちの助力無しではとこっちもやられてました」
「貴方のスペックならもっとできるはずです……新たなパーツも準備していますので、こちらへ」
「Funnnn……イオニ、セーラ、艦体の修理もあるから、ここでバイバイね。 また会いまショ」
こちらは勝ち負けにそこまでこだわっていないけど、カイザーファーマはそうはいかないという事か。
いつの間にかカイザーファーマに転職していたらしい元秘書に叱られ、少ししゅんとしたフィルは男性に付いて右手に拡がる港湾施設の方に行ってしまった。
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