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第十二章

491 それで問題ない!

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本来の近衛騎士達は『国のため』に王族につくものだ。

職業としての『近衛騎士』なのだ。人である以上、警護する者と性格的に、考え方に合わないという場合もある。

だが、職業なのだから、いくら上司が気に入らなくても、護衛対象と気が合わなくてもその職を全うしなくてはならない。

そんな事情はあるが、この国では比較的関係が良好になる場合が多い。

一緒に城を抜け出したり、一緒に冒険したりするのだ。自然と、国のためというよりも、感情的には守りたい友人レベルまですぐに上がってしまう。

もちろん、冒険者をする王族であるため、プライドの高い騎士は反発を覚えることもあった。そうした場合は、近衛騎士という立場を誇るだけで、仕事に特に反映されないこともあり、穏やかに退場してもらうらしい。

仕事だからと割り切っている人よりも、この人のためにと盾になろうとする者の方が強くなるし、対応力も変わってくるのも当然だ。

だが、始まりは誰しも『国のため』から入るのだ。よって、普通はこんな『憧れのアイドルの護衛に選ばれた!』というキラキラした顔はしないし、『どうしようっ、直視できないっ』なんて事態にはならない。

参列している貴族達からしてそうなのだ。もうどうにもできない雰囲気だった。

「あ~、おほんっ」

ベルナディオが端に控えていたニールに視線を送り、咳払いをする。

かつて、これほど落ち着きのない様子をこの謁見の間で前にしたことはない。ベルナディオも戸惑っていた。

そこに、ニールが近寄って行くと、ベルナディオは小さな声で確認する。

「これは……続けて良いのだろうか?」
「構いません。対策はしております。ささっと済ませてしまいましょう。長引けば、夜の懇親会に響きます」
「そ、そうだな……分かった……本当にお前は……」

今更ながらにベルナディオは、ニールが補佐官から外れたことを惜しく思っていた。こうした時にもニールは頼りになるのだ。

とはいえ、ここまではっきりと優秀さを見せるようになったのは、コウヤからの影響が大きいということも分かっていた。

よって、戻って来て欲しいとは口が裂けても言えない。ただ、付く相手がコウヤなので、ベルナディオは少し安心してもいる。

「……はあ……コウヤ様に、時々貸し出してもらえるように交渉するか……」

侍従としての仕事がない時や、仕事が忙しい時は、手伝いを申し出てみようと考えているベルナディオだ。何だかんだ言って、コウヤは優しいので、王家に迎え入れるということもあり、少しは融通が効くと見ている。コウヤも断らないだろう。

そして、あわよくばコウヤとも一緒に仕事もできたら嬉しいなと、ベルナディオ自身も少しウキウキしている。彼も間違いなくコウヤファンだった。心情的には祖父の立場で考える時も多い。

そんな思いを誤魔化すように、ベルナディオは姿勢を今一度正して口を開いた。

「では、アルキス様お願い致します」
「おう」

全ての騎士と兵をまとめる総帥の立場となったアルキスが前に出た。総帥とは言っても、形だけというのが実際の所だ。

アルキスはほとんど冒険者として外に出ているし、普段は騎士団達だけでまとめている。

こうした式典の時には役目としてきちんとするが、ほぼ放置だ。しかし、アルキスが外に出て直接他国を牽制しているところもあるため、全く役目を果たしていないというわけでもない。

今日のアルキスは、冒険者仕様でもなく、キラキラしたカッコいい騎士服のようなものを来ている。

それがいかにも『総帥』というイメージの服装で、コウヤが目を輝かせる。

「かっこいいっ……」

是非ともこうした服を着てみたいと思うコウヤだ。だが、その様子を見ていたアビリス王とミラルファがコウヤにはに合わないんじゃないかという言葉を必死に呑み込んでいた。

「「っ……」」

二人は目を合わせ、小さく頷き合い、いつかは似合うようになればいいねとコウヤを微笑ましげに見つめておいた。

そんな中、アルキスが前に出て宣言する。

「お前達は、本日より『近衛師団』となる。国のためと無理に意識する必要も、血筋がどうのと思う必要もない。ただ、お前達の護るべき者のためにと行動して欲しい。それで問題ない!」
「「「「「はっ!」」」」」

コウヤを一番に考えられる彼らだ。コウヤが好まない行動はしない。ならば、国のためにならない行動もしないだろう。信頼度は高かった。

アルキスが元の場所に戻ると、ベルナディオが進める。

「引き続き、師団章の授与に移ります」

これは一番時間が掛かる。なんせ、一人ずつに確実に着けていくのだから。

「授与はこちらの三人からとなります」

コウヤ手ずからとはならない。これは、パックン、ダンゴ、テンキが分かれて着けていくことになっていた。

それぞれの列の前に、人化した三人(?)が立った。それだけで小さなどよめきが起きる。

この三人のファンも多かったのだ。









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