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第六章 新教会のお披露目
195 色々試して作ってみたやつの一つ
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次はとベニは宙に視線を投げる。
「本国に警告もしよか。とりあえず、あんたら、ちょっと協力してくれるか?」
ベニは未だ正座中の男たちへ声をかけた。怯えながらも男達は顔を上げる。その目が必ず一度は担がれたままのメイスに向くのは仕方がない。
「一体何をすれば……?」
「あんたら、治療費の請求にも行かされとったね?」
「はい……」
「今なら、それが公正だったかどうか分かるだろう」
「それは……はい」
自分たちの治療代さえいい加減だったのだ。強引に請求した相手も、正当な金額だったとは言えないと理解していた。
「そのだいたいの金額と相手を知りたいんよ。あんたらのように中途半端な治療しかできとらんのやったら、連れてきてくれん? 場所はこの西にある一番賑やかなところや。屋台が出とるで分かるやろう。あんたらも、全員来るんやで?」
「わ、わかりました……」
場所が曖昧な認識ながらも、とりあえず返事をしておく男達だ。迷ってもサーナ達が何とかしてくれるはずなので問題はない。
「コウヤは先に城に報告に行って来てくれるかい」
「ばばさまは? 一人で中央の教会に行くのはダメだよ?」
コウヤが見る限り、ベニはかなりイラついている。このまま行けば、間違いなく教会の神官達ごと消されるだろう。テンキが選別をしているのだから『後はゴミやね』の一言で、三からカウントダウンが始まる。滅びはすぐだ。ある意味元邪神のコウヤより邪神感がある。
「別に大丈夫だけどねえ。まあ、心配してくれてるんなら待ってようかね。中に残してきた女達のこともあるし」
「うん。そうして。なら、行ってくる」
コウヤは転がしてあった鉄球を亜空間に放り込もうと手を伸ばす。だが、そこでベニの視線に気付いた。
「ん? あ、これ?」
「ふむ……中距離用に良さそうだねえ」
「そうでしょ? キイばあさまが前に中距離から長距離用の武器を考えて欲しいって言ってたから、色々試して作ってみたやつの一つ」
コウヤはやっぱり愛用のペーバーナイフ(?)が気に入っている。とはいえ、対人用として持っているものではないので、今回のコレは、殺傷能力を抑えるために思いつきで取り出したに過ぎなかった。
「で、出来たのが、えっと……これなんだけどっ」
コウヤは鉄球を亜空間に放り込み、代わりに白銀に光るメイスを取り出した。
「まだ試作品なんだ。名前もなくて……このボタンを長押しで、頭の所が離れて鎖が伸びるんだ。それでもう一度押すと戻ってくるよ」
「なんとまあっ」
ベニの目が輝いた。コウヤはその興奮具合に驚き、思わず特製メイスをベニに渡してしまった。
「コウヤ! すぐに城に行っといでっ。そんですぐに中央へ殴り込みさねっ」
「あ、うん。うん?」
目的が殴り込みとはっきり聞こえた。だが、上機嫌に新作のメイスを見つめるベニに確認する気はない。きっともう決定だ。変な所で試されるよりは良いと無理やり納得する。
「えっと。行ってきます」
「早くだよっ」
人目に付かない場所まで駆け、そこで城の地下へ転移する。
「……ちょっと早まったかな……」
そんな呟きが出たのは仕方のないことだった。
儀式場から出ると、そこに待ち構えていたのはテンキとニールだった。
《主様。救出、万事完了しました》
「あ、ありがとう。もう奥に?」
「テンキ様がお連れになった方々は、既に休んでいただいております」
テンキの存在を自然に受け入れているニールには驚きだ。適応能力が高いのだろう。
「そう。ニールっ、もありがとう。あ、一つ頼んでもいい?」
「何なりと」
ここにニールが居てくれたのは良かった。突然こうして城に来ても、王に報告するのは難しいだろう。そこで、教会がどういう状態だったのかを書面として用意することにした。
一応は事務職のプロ。速書きでもきちんと読めるものになる。
「正規の手続きではないので申し訳ないですが、これを宰相様にお願いします」
「コウヤ様ならば構いませんよ。承知いたしました」
国の中枢へ報告を上げるのには、本来ならば時間がかかる。だが、ここは申し訳ないが直通で通させてもらう。コウヤならばアビリス王に直接話が出来るだろうが、そこまでするのは良くない。これでも十分反則だ。
「では、お願いします。テンキは事情をセイばあさま達に話して来てくれる? それで、白夜部隊に教会の内部監査お願いしてきて」
《承知しました》
この場はオスロリーリェが見ていてくれるとのことでお願いし、コウヤは急いでベニの元へ戻った。
************
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
「本国に警告もしよか。とりあえず、あんたら、ちょっと協力してくれるか?」
ベニは未だ正座中の男たちへ声をかけた。怯えながらも男達は顔を上げる。その目が必ず一度は担がれたままのメイスに向くのは仕方がない。
「一体何をすれば……?」
「あんたら、治療費の請求にも行かされとったね?」
「はい……」
「今なら、それが公正だったかどうか分かるだろう」
「それは……はい」
自分たちの治療代さえいい加減だったのだ。強引に請求した相手も、正当な金額だったとは言えないと理解していた。
「そのだいたいの金額と相手を知りたいんよ。あんたらのように中途半端な治療しかできとらんのやったら、連れてきてくれん? 場所はこの西にある一番賑やかなところや。屋台が出とるで分かるやろう。あんたらも、全員来るんやで?」
「わ、わかりました……」
場所が曖昧な認識ながらも、とりあえず返事をしておく男達だ。迷ってもサーナ達が何とかしてくれるはずなので問題はない。
「コウヤは先に城に報告に行って来てくれるかい」
「ばばさまは? 一人で中央の教会に行くのはダメだよ?」
コウヤが見る限り、ベニはかなりイラついている。このまま行けば、間違いなく教会の神官達ごと消されるだろう。テンキが選別をしているのだから『後はゴミやね』の一言で、三からカウントダウンが始まる。滅びはすぐだ。ある意味元邪神のコウヤより邪神感がある。
「別に大丈夫だけどねえ。まあ、心配してくれてるんなら待ってようかね。中に残してきた女達のこともあるし」
「うん。そうして。なら、行ってくる」
コウヤは転がしてあった鉄球を亜空間に放り込もうと手を伸ばす。だが、そこでベニの視線に気付いた。
「ん? あ、これ?」
「ふむ……中距離用に良さそうだねえ」
「そうでしょ? キイばあさまが前に中距離から長距離用の武器を考えて欲しいって言ってたから、色々試して作ってみたやつの一つ」
コウヤはやっぱり愛用のペーバーナイフ(?)が気に入っている。とはいえ、対人用として持っているものではないので、今回のコレは、殺傷能力を抑えるために思いつきで取り出したに過ぎなかった。
「で、出来たのが、えっと……これなんだけどっ」
コウヤは鉄球を亜空間に放り込み、代わりに白銀に光るメイスを取り出した。
「まだ試作品なんだ。名前もなくて……このボタンを長押しで、頭の所が離れて鎖が伸びるんだ。それでもう一度押すと戻ってくるよ」
「なんとまあっ」
ベニの目が輝いた。コウヤはその興奮具合に驚き、思わず特製メイスをベニに渡してしまった。
「コウヤ! すぐに城に行っといでっ。そんですぐに中央へ殴り込みさねっ」
「あ、うん。うん?」
目的が殴り込みとはっきり聞こえた。だが、上機嫌に新作のメイスを見つめるベニに確認する気はない。きっともう決定だ。変な所で試されるよりは良いと無理やり納得する。
「えっと。行ってきます」
「早くだよっ」
人目に付かない場所まで駆け、そこで城の地下へ転移する。
「……ちょっと早まったかな……」
そんな呟きが出たのは仕方のないことだった。
儀式場から出ると、そこに待ち構えていたのはテンキとニールだった。
《主様。救出、万事完了しました》
「あ、ありがとう。もう奥に?」
「テンキ様がお連れになった方々は、既に休んでいただいております」
テンキの存在を自然に受け入れているニールには驚きだ。適応能力が高いのだろう。
「そう。ニールっ、もありがとう。あ、一つ頼んでもいい?」
「何なりと」
ここにニールが居てくれたのは良かった。突然こうして城に来ても、王に報告するのは難しいだろう。そこで、教会がどういう状態だったのかを書面として用意することにした。
一応は事務職のプロ。速書きでもきちんと読めるものになる。
「正規の手続きではないので申し訳ないですが、これを宰相様にお願いします」
「コウヤ様ならば構いませんよ。承知いたしました」
国の中枢へ報告を上げるのには、本来ならば時間がかかる。だが、ここは申し訳ないが直通で通させてもらう。コウヤならばアビリス王に直接話が出来るだろうが、そこまでするのは良くない。これでも十分反則だ。
「では、お願いします。テンキは事情をセイばあさま達に話して来てくれる? それで、白夜部隊に教会の内部監査お願いしてきて」
《承知しました》
この場はオスロリーリェが見ていてくれるとのことでお願いし、コウヤは急いでベニの元へ戻った。
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