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馬鹿なこと聞くんじゃねぇ、嘘つき女

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 というような感じのこれまでの事情を、赤裸々に語られ。
 ポルカは全身茹でオクトンのように真っ赤になったジルと向かい合い、しばし見つめ合っていた。

「ええと、つまり……つまりだヨ? ジルは、羽を隠してた事は怒ってなくて」
「ああ」
「酷い目にあわそうとか、痛い目みせてやろうって気持ちでアタシを妖精の国こっちへ呼んだ訳じゃなくて」
「当たり前だ」
「それで、これから先いつかアタシをポイッと放り出したりも」
「しねぇよ。何で態々下界から娶ってきた嫁を放り出さなきゃなんねぇんだよ」
「えー…………と」

 じわじわ、じわじわと、ポルカのあまり良くない頭が動き始める。ジルの言葉を噛み砕き、何度も何度も聞き直して………ついに、彼女は、ある結論にたどり着いた。
 ………そして、目の前の大男に負けないくらい真っ赤に茹で上がった。

「つまり……つまり、ジルは……」

 もはや息も絶え絶え、喉もカラカラで、情けない声しかでない。けれど、今しかない。今を逃せば何か重大なものを逃す気がする。

「ジルは、ジルはアタシのこと……」

 ――頑張れポルカ、言っちまえば後は楽だよ!

 ごくり、と粘っこくなった唾を飲み込み、少し乾いた唇を舐め……ポルカは意を決して口を開いた。

「アタシのことッ……す、すき?」
「―――――あ゛ぁア!!!?」
「ヒぇッ!?」

 ……どうやら見当違いな質問をしてしまったらしい。真っ赤に茹で上がったまま物凄い形相で睨みつけられ、ポルカは間抜けな悲鳴を上げてしまった。転生してから一生分の勇気を振り絞ったというのに、何とまぁこっ恥ずかしい。ジルの視線が刺さって痛くて気まずい。穴を掘ってでも入って縮こまりたい。

「ご、ごめんよジルっ……あは、あはははアタシったら何て馬鹿なこと聞いちゃって」
「……あぁ、全くだ」
「うぐ」

 素っ気ない言葉と一緒に奥歯を噛みしめる音が聞こえてきて、ポルカはまた泣きたくなってきた。けれど此処でこれ以上泣いても迷惑なだけだ。何度も瞬きして目の中の涙を散らしながら、ポルカはふうっと震える息を吐いた。

 ――アタシったらとんだ早とちり者だね。そうだよ、嫁として娶った理由が“恋慕”とは限らないじゃないサ。

 “家族愛”か、はたまた偽装とはいえ夫婦になった者への“情”か。何なら欲求不満解消機能付きの体のいい家政婦かもしれない。
 あんまりにも予想外な展開だったから、ついつい都合よく解釈してしまった。身の程知らずで恥ずかしい――

「う、うそうそ今のは忘れとくれ! ちょっと口が滑っ」
「俺ぁな、好いてない女と一緒に住んだり、養ったり、将来子作りするような器用な奴じゃねぇよ」
「へぇエっ?」

 大きさに似合わない柔らかな力で、ジルの手の平がポルカの両頬を包み込む。目尻に溜まった涙を舐めとる彼は、やはり鬼のような形相でポルカを睨み射抜いてきた。
 ……けれど、朝焼け色の瞳に宿る熱は喉がヒリつくほどに甘い。

「馬鹿なこと聞くんじゃねぇ、嘘つき女」
「……っん」

 唇に、合わせるだけのキスをされる。唸るような声色とは裏腹に、触れあうだけの唇は蕩けそうなくらい熱く、どこまでも優しかった。
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