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第五章その2 ~おめでとう!~ やっと勝利のお祝い編
ラッキースケベ。指の隙間からしっかり見るけど
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その大事件の一部始終を、鳳は見ていた。
いや、無理に見たかったわけではないが、見たくなかったわけでもない。
どちらかというと興味津々。だってだって、黒鷹様のお体だもの……!
酔っ払った黒鷹様が立ち上がり、よろめいて倒れそうになった。
横にいた鶉谷司令……雪菜氏が支えようと手を伸ばす。
その手が空振りし、つんのめった彼女が掴んだのは、なんと黒鷹様のズボンである。
反対側からも天草氏がズボンを掴んだので、もうどうやっても逃れられない運命であった。
そのまま黒鷹様は転倒し、座布団が宙に舞う。
料理と逆方向に倒れたため、火傷などはしなかったものの、もっと大変な事が起こったのだ。
つまりズボンが、下着ごと脱げたのである。
現在のところ、男子の下着はトランクス、女子はタンクトップブラとボクサーパンツだ。
体型に影響されにくい下着に統一し、支給品の生産効率を上げるためだが、今そんな薀蓄はどうでもいい。
トランクスの方が熱がこもらず、男子の男子たる部位に良いという知識も、今この場面ではどうでもいい。
「あっ……あああっ!? 黒鷹様っ!!?」
鳳は手で顔を覆い、悲鳴を上げた。
そうしつつも、指の隙間からしっかりと確認した。
「う…………う~ん……」
倒れた黒鷹様は、そのまま眠りに落ちてしまった。
難波さんは照れながらも「す、スクープやで」とカメラポーズでふざけている。
姫様は「まあ、スプーク……!」と呟いて真っ赤だったし、当の脱がせたお2人も、事の重大さに気づいて酔いが吹っ飛んでしまった。
「なっ、なななな鳴瀬くんっ、ごめんなさいっ!」
「そ、そうよ誠くんっ、そんなつもりじゃなかったの! 2度目だし、信じてくれないかもしれないけどっ!」
天草氏は前にもやったみたいな自白をしており、鳳は内心気になったが、とにかく今は追及している場合ではない。
鳳を含め、女性陣は顔を赤らめつつ、決してはしたないと思われない範囲でちらちらそわそわと彼の痴態を眺めていた。
しばし時を忘れていたが、やがて雪菜氏が一同を見渡した。
「……い、いつまでもこのままじゃいけないわよね……? 起こそうかしら……?」
そこで天草氏が止めに入った。
「駄目よ雪菜っ、今起きたら襲ったみたいじゃない! せめて履かせてから起こさないと」
「そ、それもそうね……」
雪菜氏は額の汗をぬぐった。まるで難しい手術を行う執刀医である。
「……で、誰が……やるの……?」
言い出しっぺかつ、脱がしっぺの雪菜氏は、汗を流しながら窓の外を見た。
「鬼達は……渡辺さんと追いかけっこしてるわね」
彼女の言葉通り、鬼神族は庭をぐるぐる回っている。
宮島少年と香川少年も外で見学していたが、彼らがいないのは幸運だった。もし目撃されたら、本当に襲っているとドン引きされるだろう。
彼らが戻ってくる前に、この難解な手術を成功させねばならない。
雪菜氏はそっと天草氏を見る。
「ひ、瞳……?」
「むっ、無理無理無理っ……!」
天草氏は助けを求めるように鳳を見る。
視線のリレーが起こり、最終的に一同の目は難波さんの所で止まった。
「え、ウチなん?」
難波さんは目を丸くしたが、雪菜氏が代表して頼み込んだ。
「ご、御免なさい。なんか難波ちゃんなら、こういうの平気そうだし……」
「酷い偏見やな。そりゃ弟の世話はしとったけど、ウチもうら若き乙女やで?」
難波さんは顔を赤らめ、頭の後ろを何度か掻くと、倒れた黒鷹様に近寄った。
「ま、間近で見ると迫力あるわ……でも女は度胸や。そーっとそーっと、鳴っちを起こさんように、と……」
難波さんは勇敢にも下着に手を伸ばし、『それ』を収納しようと格闘するが、あまり凝視するわけにいかないので、いかんせんうまくいかない。
振動が加わると、それが生き物のように揺れ動くので、見守る女性陣はどよめいた。
「ねえ、何かあったの?」
台所で追加の料理をしているカノン氏から声がかかった。
「い、いや、何でもないで。鳴っちが不思議な水飲んで転んでな。そのままグースカや」
「ケガしてない?」
「してないで。こ、これなかなか動かせんな…………あっ、鳴っち!?」
「ちょっと難波ちゃん、もぞもぞするから……あああああっ!!?」
微かな刺激に黒鷹様の化身が荒ぶり始め、一同は騒然となった。
殿方とはこんなに荒ぶるものなのか、と鳳が混乱していると、再びカノン氏の声が聞こえた。
「何よ今度は」
「そっ、そそそ、それがなカノっち、鳴っちは寝てるんやけど、鳴っちの鳴っちたる部分は疲れを知らないというか、眠らない街・東京というか」
「このみ、あんたも酔っ払ってんの? しっかりしなさいよ」
「ま、まあな……よしっ、これで履けたで!」
「履けた? ちょっとほんとに何やってんの?」
「いやな、鳴っちのパンツが脱げたんで履かせてたんや」
そこで台所からカノン氏が走って来た。
「なっ、ななななっ、何で呼ばないのよっ!!!」
「呼べるわけないやろ、何て呼ぶんや! 呼ぶ方も来る方もアホやないかっ」
「ずるいわよ、なんで私だけ……」
カノン氏は目に涙を溜め、真っ赤な顔でわなわな震えている。
しばし黒鷹様を見つめていたが、我慢が限界に達したのだろう。
「…………う~っ、ううううっ、うわあああっ!!!」
叫んで黒鷹様に飛びつき、パンツに手をかけようとするカノン氏を、その場の全員でなだめすかした。
「やめてカノンちゃん、それ犯罪よ!」
「司令の言う通りや! ってか、ほんと凄い力やな!」
「やだやだやだっ、何であたしだけのけ者なのっ!? 500年も待ったのにっ!」
カノン氏はしばらく泣き喚いていたが、やがて諦めて台所に戻って行った。
(今日の事は、忘れないようにいたしましょう……)
カノン氏に悪いと思いながらも、鳳はそう心に誓うのだった。
しばし後。
時計を見るとそんなに時間は経っていないようだったが、誠はようやく目を覚ました。
「……あれ、俺寝てたのか……?」
目をこすりながら体を起こす。
少し着衣が乱れているのは、倒れた時に脱げかけたせいだろうか。
辺りを見回すと、何だか女性陣がよそよそしいように感じる。
みんな静かに俯いて、料理を口に運んでいるのだ。
「……ご、ご馳走様でした。そしたら、後片付けを……」
「……あ、あたしも手伝うわ……」
雪菜と天草はそう言って立ち上がるが、鳳がそれを制した。
「お2人とも、お帰りにならないといけないのでしょう? そろそろ飛行機も来るでしょうし、片付けはお任せ下さい」
「……そ、そう……? それなら男場……違うっ、お言葉に甘えて……」
2人は明日の朝一番から仕事があるので、これから航空機の迎えが来るのである。
雪菜達は皆に頭を下げ、それからちらりと誠を見た。
そこで一気に顔が赤くなって、2人は逃げるように玄関に走り去っていった。
「……なんか忙しそうだな」
誠は呟き、鳳に視線を移す。
「ひっ!?」
目があって、鳳は真っ赤になって声を上げた。
どうも女性陣の様子がおかしい、などと思いつつ誠は尋ねる。
「あ、あの、片付け俺も手伝いますよ……?」
「えっ、あっ、だだ大丈夫ですっ、黒鷹様! 今お隣に立たれたら、立つっ、立っておられますと、私の方が良くないですからっ」
鳳はどぎまぎしつつ目をそらす。
鶴も難波も同じように顔を赤らめていたが、カノンだけはちょっと拗ねた顔で、悔しそうにこっちを睨んでいる。
(うん、カノンはいつも通りだ。この方が落ち着くな……)
誠はようやく胸を撫で下ろした。
いや、無理に見たかったわけではないが、見たくなかったわけでもない。
どちらかというと興味津々。だってだって、黒鷹様のお体だもの……!
酔っ払った黒鷹様が立ち上がり、よろめいて倒れそうになった。
横にいた鶉谷司令……雪菜氏が支えようと手を伸ばす。
その手が空振りし、つんのめった彼女が掴んだのは、なんと黒鷹様のズボンである。
反対側からも天草氏がズボンを掴んだので、もうどうやっても逃れられない運命であった。
そのまま黒鷹様は転倒し、座布団が宙に舞う。
料理と逆方向に倒れたため、火傷などはしなかったものの、もっと大変な事が起こったのだ。
つまりズボンが、下着ごと脱げたのである。
現在のところ、男子の下着はトランクス、女子はタンクトップブラとボクサーパンツだ。
体型に影響されにくい下着に統一し、支給品の生産効率を上げるためだが、今そんな薀蓄はどうでもいい。
トランクスの方が熱がこもらず、男子の男子たる部位に良いという知識も、今この場面ではどうでもいい。
「あっ……あああっ!? 黒鷹様っ!!?」
鳳は手で顔を覆い、悲鳴を上げた。
そうしつつも、指の隙間からしっかりと確認した。
「う…………う~ん……」
倒れた黒鷹様は、そのまま眠りに落ちてしまった。
難波さんは照れながらも「す、スクープやで」とカメラポーズでふざけている。
姫様は「まあ、スプーク……!」と呟いて真っ赤だったし、当の脱がせたお2人も、事の重大さに気づいて酔いが吹っ飛んでしまった。
「なっ、なななな鳴瀬くんっ、ごめんなさいっ!」
「そ、そうよ誠くんっ、そんなつもりじゃなかったの! 2度目だし、信じてくれないかもしれないけどっ!」
天草氏は前にもやったみたいな自白をしており、鳳は内心気になったが、とにかく今は追及している場合ではない。
鳳を含め、女性陣は顔を赤らめつつ、決してはしたないと思われない範囲でちらちらそわそわと彼の痴態を眺めていた。
しばし時を忘れていたが、やがて雪菜氏が一同を見渡した。
「……い、いつまでもこのままじゃいけないわよね……? 起こそうかしら……?」
そこで天草氏が止めに入った。
「駄目よ雪菜っ、今起きたら襲ったみたいじゃない! せめて履かせてから起こさないと」
「そ、それもそうね……」
雪菜氏は額の汗をぬぐった。まるで難しい手術を行う執刀医である。
「……で、誰が……やるの……?」
言い出しっぺかつ、脱がしっぺの雪菜氏は、汗を流しながら窓の外を見た。
「鬼達は……渡辺さんと追いかけっこしてるわね」
彼女の言葉通り、鬼神族は庭をぐるぐる回っている。
宮島少年と香川少年も外で見学していたが、彼らがいないのは幸運だった。もし目撃されたら、本当に襲っているとドン引きされるだろう。
彼らが戻ってくる前に、この難解な手術を成功させねばならない。
雪菜氏はそっと天草氏を見る。
「ひ、瞳……?」
「むっ、無理無理無理っ……!」
天草氏は助けを求めるように鳳を見る。
視線のリレーが起こり、最終的に一同の目は難波さんの所で止まった。
「え、ウチなん?」
難波さんは目を丸くしたが、雪菜氏が代表して頼み込んだ。
「ご、御免なさい。なんか難波ちゃんなら、こういうの平気そうだし……」
「酷い偏見やな。そりゃ弟の世話はしとったけど、ウチもうら若き乙女やで?」
難波さんは顔を赤らめ、頭の後ろを何度か掻くと、倒れた黒鷹様に近寄った。
「ま、間近で見ると迫力あるわ……でも女は度胸や。そーっとそーっと、鳴っちを起こさんように、と……」
難波さんは勇敢にも下着に手を伸ばし、『それ』を収納しようと格闘するが、あまり凝視するわけにいかないので、いかんせんうまくいかない。
振動が加わると、それが生き物のように揺れ動くので、見守る女性陣はどよめいた。
「ねえ、何かあったの?」
台所で追加の料理をしているカノン氏から声がかかった。
「い、いや、何でもないで。鳴っちが不思議な水飲んで転んでな。そのままグースカや」
「ケガしてない?」
「してないで。こ、これなかなか動かせんな…………あっ、鳴っち!?」
「ちょっと難波ちゃん、もぞもぞするから……あああああっ!!?」
微かな刺激に黒鷹様の化身が荒ぶり始め、一同は騒然となった。
殿方とはこんなに荒ぶるものなのか、と鳳が混乱していると、再びカノン氏の声が聞こえた。
「何よ今度は」
「そっ、そそそ、それがなカノっち、鳴っちは寝てるんやけど、鳴っちの鳴っちたる部分は疲れを知らないというか、眠らない街・東京というか」
「このみ、あんたも酔っ払ってんの? しっかりしなさいよ」
「ま、まあな……よしっ、これで履けたで!」
「履けた? ちょっとほんとに何やってんの?」
「いやな、鳴っちのパンツが脱げたんで履かせてたんや」
そこで台所からカノン氏が走って来た。
「なっ、ななななっ、何で呼ばないのよっ!!!」
「呼べるわけないやろ、何て呼ぶんや! 呼ぶ方も来る方もアホやないかっ」
「ずるいわよ、なんで私だけ……」
カノン氏は目に涙を溜め、真っ赤な顔でわなわな震えている。
しばし黒鷹様を見つめていたが、我慢が限界に達したのだろう。
「…………う~っ、ううううっ、うわあああっ!!!」
叫んで黒鷹様に飛びつき、パンツに手をかけようとするカノン氏を、その場の全員でなだめすかした。
「やめてカノンちゃん、それ犯罪よ!」
「司令の言う通りや! ってか、ほんと凄い力やな!」
「やだやだやだっ、何であたしだけのけ者なのっ!? 500年も待ったのにっ!」
カノン氏はしばらく泣き喚いていたが、やがて諦めて台所に戻って行った。
(今日の事は、忘れないようにいたしましょう……)
カノン氏に悪いと思いながらも、鳳はそう心に誓うのだった。
しばし後。
時計を見るとそんなに時間は経っていないようだったが、誠はようやく目を覚ました。
「……あれ、俺寝てたのか……?」
目をこすりながら体を起こす。
少し着衣が乱れているのは、倒れた時に脱げかけたせいだろうか。
辺りを見回すと、何だか女性陣がよそよそしいように感じる。
みんな静かに俯いて、料理を口に運んでいるのだ。
「……ご、ご馳走様でした。そしたら、後片付けを……」
「……あ、あたしも手伝うわ……」
雪菜と天草はそう言って立ち上がるが、鳳がそれを制した。
「お2人とも、お帰りにならないといけないのでしょう? そろそろ飛行機も来るでしょうし、片付けはお任せ下さい」
「……そ、そう……? それなら男場……違うっ、お言葉に甘えて……」
2人は明日の朝一番から仕事があるので、これから航空機の迎えが来るのである。
雪菜達は皆に頭を下げ、それからちらりと誠を見た。
そこで一気に顔が赤くなって、2人は逃げるように玄関に走り去っていった。
「……なんか忙しそうだな」
誠は呟き、鳳に視線を移す。
「ひっ!?」
目があって、鳳は真っ赤になって声を上げた。
どうも女性陣の様子がおかしい、などと思いつつ誠は尋ねる。
「あ、あの、片付け俺も手伝いますよ……?」
「えっ、あっ、だだ大丈夫ですっ、黒鷹様! 今お隣に立たれたら、立つっ、立っておられますと、私の方が良くないですからっ」
鳳はどぎまぎしつつ目をそらす。
鶴も難波も同じように顔を赤らめていたが、カノンだけはちょっと拗ねた顔で、悔しそうにこっちを睨んでいる。
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