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第五章その2 ~おめでとう!~ やっと勝利のお祝い編

子供の頃のスーパーマーケットは何故あんなに楽しかったのか

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 やがて鬼達も腰を上げ、一同は玄関まで送って行った。

「もう遅いし、泊まってったらいいのに」

 誠が言うと、刹鬼姫は首を振った。

「敵同士だったんだから、これ以上は甘えすぎさ。旨い飯食わしてもらっただけで十分だ」

 剛角も頷いて後を続けた。

「わしら鬼じゃし、野宿なんて普通だぞ。風邪もひかんし、渡辺以外に怖いものも無いしな」

「そうそう、剛角の言うとおりじゃ。熊でも虎でも猪でも、こっちにとっちゃ獲物じゃからの。渡辺以外は」

 紫蓮もそう言うので、誠は渋々納得したが、そこで渡辺さんが笑顔で言った。

「そんな寂しい事言うんじゃないよ。あたしも一緒に帰ったげるから」

『ひいいいいっっっ!?』

 鬼達は悲鳴を上げ、夜の闇へと駆け出していく。

 渡辺さんもそれを追い、鶴は元気に手を振った。

「元気でねーオニーズ、渡辺さん! また遊びましょう!」

 鬼達を見送り、誠達は室内に戻った。

「なんか、祭りの終わりって感じやな」

 難波の言葉はもっともだった。

 心地よい疲れと興奮の余韻。帰っていく人々。少し寂しい気もするし、満足しきった感じもする。まさに子供の頃の、お祭りが終わった後の感覚だ。

 順番にお風呂に入って、歯磨きと着替えを終えると、男子・女子の部屋に分かれて眠る事になった。

 難波は戸口から顔を出し、イタズラっぽく言ってくる。

「ヒヒヒ、鳴っち、うちはかまへんけど、夜這いでもするんか?」

「誰がするかっ!」

「ほーか? カノっちは待っとると思うけど」

「あ、あんたねえっ!」

 カノンが難波の口をふさぐが、そこで誠と目があった。

 少し抗議するような目で誠を睨むと、カノンは座敷の中へと消えた。



「階段急だから気をつけて」

 誠が先頭になって2階に上がる。

 男子連中は、誠の部屋に布団を敷いて眠るのである。

 3人で寝るには少し手狭だが、男同士、キャンプのテントで眠ると思えば十分なスペースだ。

 宮島は部屋中を物色している。

「おーっ、懐かしいなあこういう漫画。ガキの頃思い出すぜ」

 分厚い子供用の漫画雑誌をめくりながら、宮島は言った。

「その手の本、よくスーパーの会計所レジ横に置いてたよな」

 誠が言うと、宮島は嬉しそうに笑った。

「そうそう、レジ待ちの間にねだって買ってもらうんだよ。後はあれだ、玩具がついたガムとかもあったぜ」

「菓子よりおまけの方がでかいやつだろう?」

 香川も懐かしそうに会話に参加する。

子供ガキ時分じぶんは、親と行く店が宝箱みたいに思えたもんだ。何でもあって、何でも買えて。世界も家族も、いつまでも変わらない磐石なものに思えたんだが……随分あっさり壊れたもんだ。まさに諸行無常だよ」

 少ししんみりする一同だったが、誠はそこで口を開いた。

「………………またやり直せばいいさ」

「やり直す?」

 宮島も香川も、不思議そうに繰り返す。

「ヒメ子が言ってた。どんな戦があっても、何度でも復興してきたんだから……何度でもやり直せばいいってさ」

「……そうだなあ」

 香川はタンスにもたれかかり、電灯の明かりを見上げた。

 スキンヘッドが電灯を反射して、いつもより神々しく見える。

「日本が復興して……結婚して家庭が出来て。今度は俺達が親になる。それが本当に、あの幸せな日々を取り戻すって事なのかも知れん。いつか自分の子供を連れて、金比羅さんにのぼって……そんで帰りにうどんを食べて」

 宮島がそこでツッコミを入れてくる。

「あれ、お前んち寺なのに、神社行っていいの?」

「殆どの仏教は神社を否定しないぞ。弘法大師もそうだったしさ」

 香川が柔軟な事を言うので、宮島も楽しそうに笑顔を見せた。

「そっか。じゃあ俺様は厳島神社だな。でもってあなごと牡蠣食って、夜は野球観戦して、帰りにお好み焼きも食うっ! 家に着いたらもみじ饅頭だ」

「どう考えても食い過ぎだろう。仏罰が当たるぞ?」

 香川の言葉に、一同は笑った。この台詞も随分久しぶりな気がする。

 やがて宮島がぽつりと言った。

「……俺達、絶対幸せになろうな。折角生き残ったんだから……駄目だったみんなの分までさ」

「……ま、それが一番の弔いだな」

 香川は手を拝むようなポーズにして目を閉じる。

 だが誠は、そこで妙な違和感を感じた。

「な、なんか……2人とも変に余裕がないか?」

「えっ? そうかあ?」

「まさか、そんな事はないんじゃないか。なあ宮島」

 そう否定しつつもニヤニヤしている。

「いや、絶対おかしいだろ。俺がいない間に何かあったのか?」

 誠がしつこく問い詰めると、宮島と香川はとうとう自白した。

「実は俺達、彼女出来たんだよ。別の避難区の守備隊なんだけどさあ」

「隊長や姫があちこち行ってる間、四国は俺達が守ってただろう? 俺達けっこうベテランていうか、操縦がうまいんで……不慣れな隊と共闘する事が多くてな。そこで助けてるうちに、自然と……」

「うわっ、なんかずるい! 詳しく話せよ!」

「よせ隊長、くすぐるな! 仏罰が……アーッ!?」

 その後もしばらく雑談し、やがて3人は就寝したのだ。
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