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第73話 岐阜県② 養老の滝、名物、下呂温泉

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「おお、この滝はなかなか迫力があるのじゃ!」

「落差30mもある大きな滝だよ。雪景色の中の滝は初めて見たけれど、とても綺麗だね」

 続いてやってきたのは岐阜県養老郡にある養老の滝だ。養老公園の奥にある滝で、駅からは少し歩いた場所にある。雪景色のこの公園も綺麗なので、みんなで歩いてここまでやってきた。

 観光名所というものはそれまでの道のりも含めてだからな。多少苦労した方がより美しく見えるものである。

 この養老の滝は日本の滝百選に選ばれており、葛飾北斎が浮世絵で描いたことでも有名な滝となっている。冬の雪景色も綺麗だが、緑溢れる春や夏、モミジやイチョウのオレンジや赤色が美しい秋に見る景色も一際綺麗な景色となっているらしい。

「ちなみにこの滝には昔話があって、親孝行な木こりが湧き出た水をひょうたんに汲んで父親に飲ませたら若返ったという話があるんだ。老いを養う滝ということで養老の滝という名前になったそうだよ」

「ほう、面白い話じゃな」

 日本各地にはこういった伝説などがそのまま山や滝の名前になるものも少なくはない。

「そしてこの菊水泉は養老山地から湧き出るミネラルを含んだ水で、病に聞く水として日本の名水百選に選ばれているほど綺麗な水だよ」

 この泉は養老神社の境内の中にあり、この泉で手や顔を洗うと肌がきれいになり、痛いところを洗うと痛みが取れるといわれ、泉の水は菊の香りがすると評判になって菊水泉と呼ばれるようになったらしい。確かに関東の方でも養老の水としてペットボトルで売られていたのを見た気がするな。

 そのまま養老公園と養老神社をぐるりとひと回りしてきた。



「ほう、これはおいしそうな料理が山ほどあるのじゃな!」

「とてもおいしそうですね。なにやら面白そうな料理もありますし」

「岐阜県の名物もいろいろとあるからね。やっぱり一番有名なのは飛騨牛かな」

 今日の晩ご飯は岐阜県のご当地グルメをいろいろと食べることができる料理店だ。

 その中でも一際輝くのは、やはりこの飛騨牛の握り寿司だ。飛騨牛は岐阜県で飼育される黒毛和牛の牛肉だ。肉質がきめ細かくて柔らかいだけでなく、その美しい霜ふりと口の中でとろける食感が特徴的らしい。

「おお! 口の中でとろけていくようなのじゃ! これはうまいのう!」

「ええ、これはおいしいですね!」

 ミルネさんも喜屋武さんも飛騨牛の握り寿司を満面の笑みで食べている。その美しい霜ふり肉をほんのすこしだけ炙った肉寿司は口の中でとろけていく旨さだ。

 本当に高級な肉寿司はこんなにもうまいというのは初めて知った。前に来た時にはこんな高級な料理は食べることができなかったもんな。こういった高級料理を気兼ねなく食べられるのだから、ミルネさんを案内する旅は最高である。

「こっちの葉っぱに乗っているものはなんなのですか?」

「これは朴葉味噌ほおばみそといって、朴葉の上に味噌とネギやシイタケや山菜なんか混ぜたもの載せて焼いた料理なんだ」

 飛騨高山に昔からある郷土料理で、ご飯にこの味噌をかけて食べるのが一般的な食べ方らしい。

「香ばしい味噌の香りが口に広がって美味しいですね」

「こっちの飛騨牛を焼いた肉の味付けにも使えるからね。うん、おいしい!」

 朴葉には抗菌作用があり、包むと食べ物が日持ちし、朴葉の良い香りが移る。昔、山仕事をしていた人が山で朴葉を皿代わりに焼き味噌にしたことが始まりだったらしい。こっちの飛騨牛を焼いた肉の味付けにも使われている。

「こっちの鶏肉も味噌の味がするのう」

「そっちの料理はけいちゃんという郷土料理だよ。醤油や味噌ベースのタレに漬け込んだ鶏肉をキャベツと炒めた料理だんだ」

「……こちらの料理の味は面白い味ですが、まさか漬物ですか?」

「そっちのは漬物ステーキだね。飛騨では昔から漬物を焼いて食べる習慣があったらしいよ」

 その名の通り漬物を焼いて卵でとじた料理となる。焼いた漬物はそのまま食べる漬物とはこれまた違った風味がある。元々は寒い飛騨地方で凍ってしまった漬物を溶かすため囲炉裏で朴葉に載せて焼いたのが始まりらしい。

 本当に地域によって面白い料理がいっぱいあるよな。



「ああ~寒い中の温泉ってどうしてこんなに気持ちいんだろうなあ~」

 雪景色の中の露天風呂。これもまた日本の風情を感じられるもののひとつだな。

 今日の宿は飛騨のさらに南にある下呂温泉のある宿だ。この辺りも山々に囲まれていてまだ寒い。本当に沖縄にいたころとはえらい違いだな。

 下呂温泉は有馬温泉、草津温泉と並ぶ日本三名泉のひとつだ。無色透明でほんのりとした温泉特有の香りがあり、滑らかな肌触りの温泉となる。疲労回復や健康増進に効果があるため、健康の湯とも言われているらしい。

 下呂温泉には湯めぐり手形で入ることのできる様々な温泉があったり、無料で特徴的な足湯や手湯なんかがある。食べ歩きのスイーツなんかもあるらしいし、あとでミルネさんと喜屋武さんと一緒に回ってみるとしよう。
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