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18話

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 応急措置を施した花嫁は、すぐさま王宮にある医務室に運ばれた。

「一度意識を取り戻しているとのことですが……まだまだ油断はできない状態です」

 廊下で待っていたメルヴィンに、医師は硬い表情でそう告げた。
 あとは本人の体力次第、とも。

「ねえねえ、お兄様! あのお姉さんって、銀色の薔薇のお姫様なのかな!?」

 やけにそわそわした様子で裾を引っ張ってくるリーネを、メルヴィンはジト目で見下ろした。
 この妹は、あの花嫁のことが気になって仕方がないらしい。


「それは童話の話だろうが。彼女はただの人間だぞ」
「だって、とっても綺麗だったもん! 絶対に神様にお願いして、人間になったんだよ!」

 鼻息を荒くして熱弁するリーネ。
 その姿に気圧されつつ、メルヴィンは花嫁の顔を脳裏に浮かべていた。
 救助している時は、じっくり眺めている余裕などなかったが、とても整った顔立ちだったと思う。
 まだまだ夢見がちな妹が、空想の姫君だと勘違いするのも納得できる。

(……それにしても、何かあったのか?)

 メルヴィンたちが王宮に戻ると、文官や兵士が何やら慌ただしく動いていた。
 本日はあの・・ソルベリア公爵の結婚式に、父が参列しているらしいが……

「メルヴィン、リーネ!」

 この国で二人を敬称なしで呼ぶ者は、ごく限られた人物。
 メルヴィンが振り向くと、数人の側近を引き連れたロシャーニア国王がいた。

「あっ、お父様ー! 抱っこして!」

 久しぶりに父親に会えて大喜びのリーネが、国王へと駆け寄る。
 こういう時、いつもならだらしなく頬を緩める国王だが、その顔は強張ったままだった。

「すまない、リーネ。その前に、一つ聞いてもよいか?」
「なぁに?」
「お前たちが森で保護した少女は、銀髪の花嫁なのだな?」
「うん、そうだよ!」

 元気な声で答える娘に、国王は「そうか」と相槌を打って、そのまま黙り込んでしまった。
 いったい何だと言うのか。メルヴィンがその様子をじっと見つめていると、側近が耳打ちしてきた。

「……実は、本日ソルベリア公爵と式を挙げる予定だったレオーヌ侯爵家の令嬢が、行方不明となっております」
「…………」

 おおよその状況を理解して、メルヴィンは医務室の扉へ視線を移した。

「父上、俺たちが助けたのは……」
「ひとまず、彼女が目覚めるのを待とう。詳しい話はそれからだ」

 息子の言葉を遮るように、国王が冷静な口調で言う。

 しかし謎の花嫁は、一向に目を覚まそうとはしない。
 そして国王の意向により、リーネの住む離宮へと移されて、今に至る。
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