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異世界生活編
106.子どもたちは可愛いね
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実は最近村の小さい子と遊んでいる。
前は俺の体力がなさすぎて走るだけでも負けてたけど、今は互角……なのは悔しいけど、まあそんな感じだ。俺もロープ上りだってできるようになったしさ。
ルイ的には子どもたちと遊ぶのも俺のトレーニングになってるって思ってるっぽくてなんか微妙な気分にもなる。
俺は走り回ってる子どもに休憩って声をかけて木にもたれて立っているルイの隣に座った。
「いやー、なんで子どもってあんな……元気なの……」
「イクミも一緒になって走ってたじゃないか」
「俺は……あの子たちとは、全然……違う」
だって、俺が離脱したあとも走り回ってるもん。あと取っ組み合い? 違うな、レスリング的なトレーニングを兼ねた遊び? なのかな。
寒いからそこまで時間をかけないけど俺の真似して弓矢に興味を持った子と一緒に少しだけ構えてみたり射ってみたりもした。結構楽しそうにしてくれるのが俺としても嬉しい。
それに何といっても日本人にはいない髪色の子たちはいつ見ても天使だ。俺より少し背丈が小さいだけの子ですら顔のつくりが違う。
「あー、みんな可愛いなー。天使すぎる」
「イクミも可愛いだろ?」
「は?」
「…………失言だ。忘れろ」
──うっそ、俺ってまだルイの中で子どもと一緒なのかよ。でも、可愛くないと思われてるよりは……いい、よな? いや、だめか? うぅ、ルイは失言って言ったけど、可愛いって言って悪かったってこと? まあ男に言う言葉じゃないもんな。とはいえ、俺もたまにルイのこと可愛いって思っちゃうことあるけど。うーん……。
俺が悶々と悩みかけたところで子どもたちが寄ってきた。
「イークーミー、もう休憩終わりー! 次、はやくー」
「はいはい。次は何するの?」
「新しいお話してー」
どっこいしょっと立ち上がれば両手をつかまれて引っ張られる。こういうのは結構ヴァンの役目だったらしいんだけど、ヴァンは今いろんな準備で忙しいから俺が代わりになってるというか。俺は魔法は使ってあげられないけど、木を削っておもちゃ作ってあげたり俺の世界の昔話なんかをしてあげたりしたらあっという間に囲まれたんだよな。
俺の世界じゃ誰もが知ってるような昔話や童話でも、こっちの子たちには初めての話だからみんな目をキラキラさせて聞いてくれる。それが楽しくてつい感情込めて身振り手振りなんかも加えてノリノリで聞かせちゃったんだ。
なんかさ、俺からするとただのおとぎ話でも、こっちの世界にはいろんな種族もいるし魔法もあるからか普通にリアル感があるらしくて、子どもだけじゃなくて小さい子と一緒に聞きに来たママさんもソワソワ聞いてるときがあるんだ。
「イクミー、海の人魚? 見たことある?」
「見たことは……俺はないなぁ。俺の世界の海には何度も行ったけど会ったことはないよ」
「海は怖いんだよね。人魚が強い魔物なのかなー」
「え? なんで?」
子どもたちの言うことが突然理解できなくなった。でも子どもたちは「ぐわーって大きい魔物が出るんだって!」「誰も倒せないって言ってた」「だから海に出たらいけないんだよ」と口々にキャーキャー言うばかりで全然わからない。
「ボクは人魚は魔物じゃないと思う! だっていいことしたもん」
「あたしも人を助ける魔物はいないと思うな」
「でも海には強い魔物がいるんだから、住むなら強くないと無理だよ」
「あっ! かくれんぼの天才なのかも!」
「「すげー!!」」
だめだ……完全に置いてけぼりになってしまった。でも子どもたちの話からすると、海に強い魔物がいるってことだよな。
この通訳の魔導具がどの程度俺の言葉と伝えたい事柄を伝えてくれてるのかわからないけど、多少聞き手の認知で変わるっぽいからなぁ。たぶんだけど、話を聞いてくれた一番小さい子と一番大きい子ではイメージ化に差があるんじゃないかな。
切ない童話なはずの人魚姫が魔物にさせられそうになって、今はかくれんぼの天才一族……。まあ、いっか。
なんて思ってたら小さい子が来てしょんぼりした顔で言った。
「こんど、みんながなかよしのがいい」
「あ、そうだよね。ちょっと思い出してみる……」
とは言ったものの、意外と終わり方が微妙な話多くないか? 元々が教訓みたいなところからきてるからなんだっけ? 確かにちょっと今まで誰かがいじめられてたとか食べられたとかのアレな話をすることが多かったかもなぁ。もう、なんなら俺が変えちゃうか。桃太郎とかさ、倒すのを鬼から魔物に変えれば倒してもギリセーフな気がする。
これでも最初は『うさぎとかめ』みたいな普通の話から始まったんだよ。でも最初はめっちゃ小さい子だけだったのにだんだん来る子の年齢層が広がっちゃってさ。俺だってそんなに童話を知ってるわけじゃないから、思い出しつつ最近はシンデレラ、カチカチ山、人魚姫ときてる……。俺もちょっとカチカチ山はねぇなって話してから思ったけどさ。それでも初めて聞く話に前のめりになってくれた子どもには感謝だよな。
子どもたちとバイバイして筋トレに入る前に、俺は子どもたちが騒いでいたことをルイに聞いてみた。
「ねえねえ、こっちの海って危険なの?」
「人が加工した入り江以外に安全な海があるわけないだろ?」
「え!?」
びっくりしすぎた俺の様子にルイはすぐ察してくれたようだった。
「なるほど。イクミの世界じゃ海も危険がないのが普通なんだな?」
「そりゃ、海流が危なかったり岩礁とか氷山が危険だったりはあるけど……」
「イクミの世界には魔物がいないんだからそりゃあそうか」
子どもたちの話はみんなが口々に話すからよくわからなかったけど、ルイが言うにはこっちの海には大型の海洋生物が魔物化していて本気で危険らしい。普通の動物が魔物化しても巨大化するんだから、大型海洋生物が魔物化したら……なるほど、そういうことか。しかも海は魔力噴出しやすいのか魔物が多いみたいで……怖っ。
遠い遠い過去には挑んだ人がいたらしいけど結果は言わずもがな。いくら魔法を使えても海の上で戦うのはあまりにも分が悪いし、巨大すぎて倒すのに何人がかりになるんだってことで海に出てはいけないという教訓だけが残っているんだそうだ。
デカすぎて浅瀬には入ってこられないから海岸とか人工の入り江は一応大丈夫ってことらしくて、そういうところでしか漁はできないんだって。でも海岸も魔物が出ないわけじゃないから意外と海の魚は珍しい部類の食べ物みたい。
ルイは魚が結構好きみたいで、海辺の街に行ったときは結構食べてるっぽい。確かに最初サバの炊き込みご飯への食いつきすごかったもんな。
「そういえば、ここって渓谷の割に魚1回も見てない……」
「あー、ここは基本的に魚は獲らないんだ。俺は旅をしてれば安全な川で魚を獲ることはあるが」
「なんで?」
「伝統? 言い伝え? みたいな感じというか。上の神殿が関わってる」
口伝で代々伝えられていくうちに理由がわからなくなっちゃうのあるあるだよな。とりあえず、俺も街に行ったら魚食べよ……。
前は俺の体力がなさすぎて走るだけでも負けてたけど、今は互角……なのは悔しいけど、まあそんな感じだ。俺もロープ上りだってできるようになったしさ。
ルイ的には子どもたちと遊ぶのも俺のトレーニングになってるって思ってるっぽくてなんか微妙な気分にもなる。
俺は走り回ってる子どもに休憩って声をかけて木にもたれて立っているルイの隣に座った。
「いやー、なんで子どもってあんな……元気なの……」
「イクミも一緒になって走ってたじゃないか」
「俺は……あの子たちとは、全然……違う」
だって、俺が離脱したあとも走り回ってるもん。あと取っ組み合い? 違うな、レスリング的なトレーニングを兼ねた遊び? なのかな。
寒いからそこまで時間をかけないけど俺の真似して弓矢に興味を持った子と一緒に少しだけ構えてみたり射ってみたりもした。結構楽しそうにしてくれるのが俺としても嬉しい。
それに何といっても日本人にはいない髪色の子たちはいつ見ても天使だ。俺より少し背丈が小さいだけの子ですら顔のつくりが違う。
「あー、みんな可愛いなー。天使すぎる」
「イクミも可愛いだろ?」
「は?」
「…………失言だ。忘れろ」
──うっそ、俺ってまだルイの中で子どもと一緒なのかよ。でも、可愛くないと思われてるよりは……いい、よな? いや、だめか? うぅ、ルイは失言って言ったけど、可愛いって言って悪かったってこと? まあ男に言う言葉じゃないもんな。とはいえ、俺もたまにルイのこと可愛いって思っちゃうことあるけど。うーん……。
俺が悶々と悩みかけたところで子どもたちが寄ってきた。
「イークーミー、もう休憩終わりー! 次、はやくー」
「はいはい。次は何するの?」
「新しいお話してー」
どっこいしょっと立ち上がれば両手をつかまれて引っ張られる。こういうのは結構ヴァンの役目だったらしいんだけど、ヴァンは今いろんな準備で忙しいから俺が代わりになってるというか。俺は魔法は使ってあげられないけど、木を削っておもちゃ作ってあげたり俺の世界の昔話なんかをしてあげたりしたらあっという間に囲まれたんだよな。
俺の世界じゃ誰もが知ってるような昔話や童話でも、こっちの子たちには初めての話だからみんな目をキラキラさせて聞いてくれる。それが楽しくてつい感情込めて身振り手振りなんかも加えてノリノリで聞かせちゃったんだ。
なんかさ、俺からするとただのおとぎ話でも、こっちの世界にはいろんな種族もいるし魔法もあるからか普通にリアル感があるらしくて、子どもだけじゃなくて小さい子と一緒に聞きに来たママさんもソワソワ聞いてるときがあるんだ。
「イクミー、海の人魚? 見たことある?」
「見たことは……俺はないなぁ。俺の世界の海には何度も行ったけど会ったことはないよ」
「海は怖いんだよね。人魚が強い魔物なのかなー」
「え? なんで?」
子どもたちの言うことが突然理解できなくなった。でも子どもたちは「ぐわーって大きい魔物が出るんだって!」「誰も倒せないって言ってた」「だから海に出たらいけないんだよ」と口々にキャーキャー言うばかりで全然わからない。
「ボクは人魚は魔物じゃないと思う! だっていいことしたもん」
「あたしも人を助ける魔物はいないと思うな」
「でも海には強い魔物がいるんだから、住むなら強くないと無理だよ」
「あっ! かくれんぼの天才なのかも!」
「「すげー!!」」
だめだ……完全に置いてけぼりになってしまった。でも子どもたちの話からすると、海に強い魔物がいるってことだよな。
この通訳の魔導具がどの程度俺の言葉と伝えたい事柄を伝えてくれてるのかわからないけど、多少聞き手の認知で変わるっぽいからなぁ。たぶんだけど、話を聞いてくれた一番小さい子と一番大きい子ではイメージ化に差があるんじゃないかな。
切ない童話なはずの人魚姫が魔物にさせられそうになって、今はかくれんぼの天才一族……。まあ、いっか。
なんて思ってたら小さい子が来てしょんぼりした顔で言った。
「こんど、みんながなかよしのがいい」
「あ、そうだよね。ちょっと思い出してみる……」
とは言ったものの、意外と終わり方が微妙な話多くないか? 元々が教訓みたいなところからきてるからなんだっけ? 確かにちょっと今まで誰かがいじめられてたとか食べられたとかのアレな話をすることが多かったかもなぁ。もう、なんなら俺が変えちゃうか。桃太郎とかさ、倒すのを鬼から魔物に変えれば倒してもギリセーフな気がする。
これでも最初は『うさぎとかめ』みたいな普通の話から始まったんだよ。でも最初はめっちゃ小さい子だけだったのにだんだん来る子の年齢層が広がっちゃってさ。俺だってそんなに童話を知ってるわけじゃないから、思い出しつつ最近はシンデレラ、カチカチ山、人魚姫ときてる……。俺もちょっとカチカチ山はねぇなって話してから思ったけどさ。それでも初めて聞く話に前のめりになってくれた子どもには感謝だよな。
子どもたちとバイバイして筋トレに入る前に、俺は子どもたちが騒いでいたことをルイに聞いてみた。
「ねえねえ、こっちの海って危険なの?」
「人が加工した入り江以外に安全な海があるわけないだろ?」
「え!?」
びっくりしすぎた俺の様子にルイはすぐ察してくれたようだった。
「なるほど。イクミの世界じゃ海も危険がないのが普通なんだな?」
「そりゃ、海流が危なかったり岩礁とか氷山が危険だったりはあるけど……」
「イクミの世界には魔物がいないんだからそりゃあそうか」
子どもたちの話はみんなが口々に話すからよくわからなかったけど、ルイが言うにはこっちの海には大型の海洋生物が魔物化していて本気で危険らしい。普通の動物が魔物化しても巨大化するんだから、大型海洋生物が魔物化したら……なるほど、そういうことか。しかも海は魔力噴出しやすいのか魔物が多いみたいで……怖っ。
遠い遠い過去には挑んだ人がいたらしいけど結果は言わずもがな。いくら魔法を使えても海の上で戦うのはあまりにも分が悪いし、巨大すぎて倒すのに何人がかりになるんだってことで海に出てはいけないという教訓だけが残っているんだそうだ。
デカすぎて浅瀬には入ってこられないから海岸とか人工の入り江は一応大丈夫ってことらしくて、そういうところでしか漁はできないんだって。でも海岸も魔物が出ないわけじゃないから意外と海の魚は珍しい部類の食べ物みたい。
ルイは魚が結構好きみたいで、海辺の街に行ったときは結構食べてるっぽい。確かに最初サバの炊き込みご飯への食いつきすごかったもんな。
「そういえば、ここって渓谷の割に魚1回も見てない……」
「あー、ここは基本的に魚は獲らないんだ。俺は旅をしてれば安全な川で魚を獲ることはあるが」
「なんで?」
「伝統? 言い伝え? みたいな感じというか。上の神殿が関わってる」
口伝で代々伝えられていくうちに理由がわからなくなっちゃうのあるあるだよな。とりあえず、俺も街に行ったら魚食べよ……。
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