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第四世代

凛編 見えてる世界

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だからこそ俺は、自らの<情>に従ってそうの墓参りに行くことにしつつ、水帆みなほが俺達の考えに合わせてくれないことに憤ったりもしない。そんなことに憤るなんての自体が、<思い上がり>ってもんだろ。

自分じゃない人間が自分の思い通りになってくれると考えるとか、それが、自他の区別が十分についてない理解できてない未熟な子供ならまだしも、いい歳をした大人のすることか? 自分じゃない人間には自分とは違う人格が備わってるとすら理解できてないとか、それまでの人生で何を学んできたんだ? って話だろうさ。

幸い俺はそれを理解できた。だから憤る必要を感じない。

それだけの話なんだよ。

なんてことを頭によぎらせつつも、仮設ヘリポートに待機していたアリアンへの搭乗準備を行う。

「わあ、でっかい!」

ローバーから下りた錬慈れんじが、アリアンを見るなりそう声を上げた。アリアンを見ること自体は初めてってわけでもないはずなんだが、ここまで間近で見るのは確かに初めてか。

アリアンの全長は約三十メートル。光莉ひかり号の全長が五十メートル強だから、その半分以上の大きさがある。

しかも現在の光莉ひかり号はまったく動かすことがなく事実上の、

<建築物>

みたいなもんだから、錬慈れんじにとっては、

<変な形の建物>

という認識しかないだろうな。

「ああ、でっかいだろう。これならみんな一緒に乗れるぞ」

俺が応えると、

「やったあ!」

彼は満面の笑顔になる。<家族>のことが大好きな錬慈れんじは、ローバーに全員が乗れないのが少し不満だったようだ。

いや、実際には無理すれば乗れなくはないんだが、法律がまだないここじゃ<乗車定員>を守る根拠もないんだが、さすがに窮屈になってしまうからな。だから分乗してきた。

しかし体がまだまだ小さい錬慈れんじにとってはローバーでさえ、

<十分に大きな乗り物>

に感じられるんだろう。それに『全員乗れるんじゃないか?』と感じてしまうんだろうさ。これも、

『幼いがゆえの認識の違い』

ってことか。子供が大人と同じことができない理由の一つなんだろうなあ。大人なら何とも思わないようなことでも苦痛に感じてしまったりする時があるのはそれが原因だと今は分かるよ。

ただの<我儘>じゃないんだ。大人とはそもそも、

<見えてる世界>

が違うしな。

子供に頃に見ていた景色を大人になってから見ると、

『こんなんだったか?』

と感じることがあるだろう? <見え方>が違うから、同じものを見ているはずなのに違って見えるんだ。

そういうものなんだよ。

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