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第四世代
凛編 群れ
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凱は野生に暮らすレオンだが、俺の子供でもあるからか、
<大切な相手を弔うという概念>
を持ち合わせているようだ。
しかし、同じく俺の子供で、ある程度までは俺の元で育ったはずの走は、ずっと割り切った反応を見せる。
彼のパートナーの一人である沢が亡くなった時もそうだった。分かりやすく悲しみを表現する凱とは対照的に、走は平然としているようにも見えた。その姿は<冷淡>と言ってもいいくらいのものだったと思う。
だがそれでいて、ドーベルマンMPMらが沢の遺体を収容した時にはただそれを険しい表情で見守るだけで、邪魔をするわけでもなかったんだ。だから彼には分かっていたのかもしれない。俺達が、沢を弔うためにドーベルマンMPMらに収容させたことが。
それこそが彼の<悼み方>だったんじゃないかと今でも思う。まあ、単なる<親の贔屓目>の可能性ももちろんあるものの、走が他の野生のレオンとは違っているのもまぎれもない事実だからな。
悼み方にもいろいろあるということだ。
地球人社会だとえてして自分が思う悼み方をしない他人のことを『薄情だ』『常識がない』などと悪し様に言ったりもするが、そんなものは、
<礼儀礼節をわきまえた大人>
がすることじゃないと俺は思うんだよ。
だから、凱のような悲しみ方をしないからといって走は薄情でも冷酷でもないと俺は思ってる。
何しろ彼は、凱が阪や枚の死を悲しみ遠吠えを上げても、それを諫めたりはしないからな。本当に阪や沢や枚の死を何とも思っていないのなら、凱のそれはただ迷惑なだけだろうし、やめさせることだってできたはずだ。
けれど、彼はそうしなかった。悲しみを隠そうとしない凱を好きにさせてただけなんだ。
そんな兄二人を間近で見つつ自らも群れを実質的に率いている凛も、一般的なレオンの群れとは毛色の違うそれを作り上げていた。
性分化疾患により雄でも雌でもない状態で、ロボットであるドーベルマンDK-a伍号機をパートナーのようにして共に暮らす按。
母親の兄である走の息子、つまり<従兄>と番った萌。
一度は巣立って群れを離れたにも拘らずパートナーの雌を連れて戻ってきて、再び群れに合流した朗。
そんな子供達三人が中心となった群れは、他の群れから巣立って合流した者達も合わせて十人余りの規模となった。レオンの群れとしてはやや小さ目ながらも、仲が良く結束力の強い群れになったと思う。
その中で、凛は幸せに暮らしているんだ。
少なくとも俺にはそう見えていた。
<大切な相手を弔うという概念>
を持ち合わせているようだ。
しかし、同じく俺の子供で、ある程度までは俺の元で育ったはずの走は、ずっと割り切った反応を見せる。
彼のパートナーの一人である沢が亡くなった時もそうだった。分かりやすく悲しみを表現する凱とは対照的に、走は平然としているようにも見えた。その姿は<冷淡>と言ってもいいくらいのものだったと思う。
だがそれでいて、ドーベルマンMPMらが沢の遺体を収容した時にはただそれを険しい表情で見守るだけで、邪魔をするわけでもなかったんだ。だから彼には分かっていたのかもしれない。俺達が、沢を弔うためにドーベルマンMPMらに収容させたことが。
それこそが彼の<悼み方>だったんじゃないかと今でも思う。まあ、単なる<親の贔屓目>の可能性ももちろんあるものの、走が他の野生のレオンとは違っているのもまぎれもない事実だからな。
悼み方にもいろいろあるということだ。
地球人社会だとえてして自分が思う悼み方をしない他人のことを『薄情だ』『常識がない』などと悪し様に言ったりもするが、そんなものは、
<礼儀礼節をわきまえた大人>
がすることじゃないと俺は思うんだよ。
だから、凱のような悲しみ方をしないからといって走は薄情でも冷酷でもないと俺は思ってる。
何しろ彼は、凱が阪や枚の死を悲しみ遠吠えを上げても、それを諫めたりはしないからな。本当に阪や沢や枚の死を何とも思っていないのなら、凱のそれはただ迷惑なだけだろうし、やめさせることだってできたはずだ。
けれど、彼はそうしなかった。悲しみを隠そうとしない凱を好きにさせてただけなんだ。
そんな兄二人を間近で見つつ自らも群れを実質的に率いている凛も、一般的なレオンの群れとは毛色の違うそれを作り上げていた。
性分化疾患により雄でも雌でもない状態で、ロボットであるドーベルマンDK-a伍号機をパートナーのようにして共に暮らす按。
母親の兄である走の息子、つまり<従兄>と番った萌。
一度は巣立って群れを離れたにも拘らずパートナーの雌を連れて戻ってきて、再び群れに合流した朗。
そんな子供達三人が中心となった群れは、他の群れから巣立って合流した者達も合わせて十人余りの規模となった。レオンの群れとしてはやや小さ目ながらも、仲が良く結束力の強い群れになったと思う。
その中で、凛は幸せに暮らしているんだ。
少なくとも俺にはそう見えていた。
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