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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 次の行動

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新暦〇〇三九年十一月十三日



そうして見守っていても、なかなか<進展>はなくて、代り映えしない毎日が淡々と続いていただけだった。

興味のない人間にとってはさぞかし退屈だろうな。これといった<イベント>もないんじゃ。

それでも俺にとっては、ただ見てるだけも楽しいもんだったよ。

まあ、

<先に亡くなった我が子の面影が見えるという、いわば下駄を履かせた状態>

だからというのが明らかに大きいけどな。しかしその上で彼女の姿を穏やかな気持ちで見守る。

そうしてると、細かい部分も見えてくる。

見た目こそめいの面影を持つ彼女であるものの、その振る舞いそのものは、なかなかどうして違いがあるんだ。

まず、<隠れ方>が違う。めい、と言うか<マンティアン>は、敢えて『物陰に隠れる』という形はとらず、それこそ風景そのものに溶け込むことで身を隠すのに対して、ルカニディアは普通に物陰に身を潜める形だった。

それもあってか、なんだかシャイな女の子が気になる相手を覗き見てるような印象もなくはない。

まあこれ自体は俺がここの<獣人>達を見慣れてるからという補正も込みの印象だろうけどな。そうじゃなきゃ普通に<クリーチャー>にも見えるだろうし。

だがその上で俺には、

『可愛らしい』

と映るんだ。

「……」

ただ、<人間(地球人)の奥手なタイプ>というのはそこから先に進めなかったりするもんだろうが、彼女の場合は『シャイでそれ以上は踏み出せないから』というわけじゃなくあくまで<慎重>なだけで。

だから、変化がないように見えて実は徐々に距離を詰めていってたんだ。今は、最初の頃に比べると三分の二ほどになってる。

『いつまで経っても進展しない』

わけじゃないにせよ、まさに、

『ナメクジが這うようなじれったさ』

も感じさせもするな。そういうのを、

『イライラする!』

と毛嫌いする人間もいるだろう。だが俺にしてみればそんな慎重さがむしろ頼もしくもある。安心感もある。得体の知れないもの相手に無闇に近付いていくのは、野生ではそれこそ自殺行為に等しいだろうし。そんな奴は生き延びられないだろうさ。

さりとて、新しいことを、それまでとは違うことを成してみせるのも、こういうタイプなんだろうけどな。

で、

『ホビットMk-Ⅱに接触する』

という<挑戦>を、彼女は今まさに成し遂げようとしているわけだ。ある意味では、

<歴史的瞬間>

と言えるかもしれない。

彼女の中でそれまで得た情報が形を成して、<次の行動>に移らせたということか。

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