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第四世代

ホビットMk-Ⅱ編 そのように見える部位

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ただ、ヒト蜘蛛アラクネが他の地域にはいないと言っても、かつてグンタイの女王が人間に似た部分の見た目はシモーヌのそれをとりつつ、全体の構造はヒト蜘蛛アラクネとほぼ同じだったわけで、ヒト蜘蛛アラクネの姿になったのがいなかったわけじゃない気はするな。

それに、ビアンカがケインやイザベラやキャサリンを生んだように、<自家受精>を行う個体もいなかったわけじゃないだろうな。

あくまで繁殖に成功しなかっただけって感じか。

しかもヒト蜘蛛アラクネは、肉体こそ強靭で頑健ではありつつ、同時に生物としてはかなり無理のある構造をしてるから、実は子供の生存率は必ずしも高くない。

アラニーズであるケインやイザベラやキャサリンは幸い無事に育ってくれているが、<突然死>という形で命を落とすヒト蜘蛛アラクネ幼体こどもは珍しくないようなんだ。

そういうのも、あちこちで繁殖してるわけじゃない原因の一つかもしれないな。

などということはさて置き、ルカニディアが警戒しているホビットMk-Ⅱは、敢えてそちらには<顔>を向けずに、しかししっかりと観察は行っていた。

まあ、ロボットにとって<顔>は、

<そのように見える部位>

でしかなく、実際の顔というわけじゃなかったりするしな。特に非人間型のロボットの場合はそれこそ、

『頭の部分に頭の機能があるとは限らない』

わけで。人間そっくりに作られているメイトギアでさえ、人間の<脳>と同じ機能を持つ部分は、<胸>に格納されている。

人間の生命維持に必要な臓器が要らないことで空いたスペースに、小型大容量のストレージと高性能AIが収まってるんだよ。

他にはバッテリーとかも収納されてるが。

で、ホビットMk-Ⅱの場合も、

『なんとなく顔のようにも見える』

ようにカメラなどを配置しているものの、カメラはそこだけじゃないんだ。

だから、<顔>を向けてなくてもちゃんと見えてる。

そうして観察してるルカニディアは、雌のようだった。しかもまだ若そうだ。それこそまだ幼体こどもと言ってもいいくらいの若さだと感じた。

昔のめいを思い出す。

まあ、マンティアンだっためいほどは険しい様子じゃないけどな。体の色も違うし、何より立派な角が生えている。

それでもどこか面影がある気がする。

いや、実際に、めいに血縁上で連なるマンティアンが不定形生物に捕食されてその遺伝子情報が取り込まれ、さらにその遺伝子情報を基に顕現したのがいても何もおかしくない世界なだけに、そういう可能性についても否定しきれないってのが間違いなくあるんだよ。

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