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第四世代

丈編 ニアミス

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新暦〇〇三八年六月二十日



これまでにも何度も触れてきたはずだが、俺がロボットを使って集落の開拓のシミュレーションを行っているのも、結局はそれを含んでのことだしな。

<不定形生物由来の怪物>の件に関しては、あくまで<ダミーとしての集落>だし。

しかも、ヒト蛇ラミアくらいまでであれば、ロボットだけでも対処できることが分かった。あの時に得られた貴重なデータも、戦略や戦術を練り、シミュレーションを行うのにもすごく役に立ってくれている。ロボット達のアップデートについてもそのデータが活かされているんだ。

俺達が平穏に暮らせているのもそのおかげだしな。

その上で、えいは、無駄に冒険をしない。ロボットが自分達を守ってくれているのを理解しているのか、自ら縄張りを守ろうとするような振る舞いも見せない。

れいとメイは、自分達が遭遇したマンティアンと戦おうとする姿勢も見せた一方で、彼は他のマンティアンが接近していることに気付くと、自ら距離を取ろうとする動きを見せる。

彼のそういう部分を『情けない』と言うのもいるだろうが、だからそういう部分が、

『強さに拘っている』

って話なんだ。別に自ら危険を冒して戦わずとも外敵が排除されるならそれに越したことはないだろう?

地球人の社会で外敵から攻撃を受けたからといって自ら武器を手にして積極的に戦いに出る者がどれだけいる? 普段は勇ましいことを口にするような奴でも結局は軍隊なりなんなりに任せるんじゃないのか?

えいの判断はそれと同じだろうさ。彼は感覚的にそれを理解しているんだろう。

彼の知性がそこに垣間見えると思うんだがな。

それに、れいやメイが戦ったのも、どこまでも自衛のためであって別に強さを競うのが目的じゃない。

それも事実だ。

より合理的な判断ができるのは決して<恥>じゃないさ。

むしろ、自身の行動がどんな結果をもたらすのか考えもせず無謀な蛮勇を見せるだけの振る舞いの方が、俺は恥ずかしいと思うんだよな。

で、例の若いマンティアンは懲りもせず俺達の集落の周辺をうろついていて、この日はえいとニアミスを起こした。

そのことにえいが先に気付き、距離を取ろうとする。

が、残念ながら相手もそれに気付いて、

『今度こそ』

とばかりにえいに迫ろうとした。

えいも決して弱いわけではないので、いよいよとなれば戦う力もあるだろうが、基本的にそれを望まないのであれば、俺としては戦うことを強要するつもりもない。

となれば当然、彼を守ることについて躊躇もしない。

だからロボットを救援に向かわせたんだ.

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