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第四世代

丈編 お互いにスルーし合って

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新暦〇〇三八年六月十九日



そんなれいとメイの話もありつつ、一方でえいも当然、日常を送っているわけで、二人とはあまり関わらないようにはしていながらも、だからと言って険悪な雰囲気でもなかった。

地球人の場合はお互いに相手をスルーしているような姿を見ると、

『仲が悪い』

と解釈してしまいがちだし、地球人同士のそれだと確かに少なくとも『仲がいい』とは言えないだろう。

だが、マンティアンの場合には、互いに攻撃的な様子を見せていなければ問題ないんだよな。

地球人の<世界>は、ある意味ではほとんどすべてが地続きで繋がっていてはっきりとした境目がないと言えるだろうが、マンティアンの場合だと個々のそれがほぼ完全に独立してるんだよ。当人一人で完結してるんだ。子孫を残したり子供を育てたりする場合には一時的に繋がり合うこともあっても、それもあくまで『一時的に』なわけで。

確かに、まだ幼かった頃のれいえいに対してやたらと意識を向けていたことがあったのも事実ではありながらも、こうしてメイを迎えたことでも分かるように、異性として意識してたからであって、しかも完全な野生のマンティアンと違ってすぐ近くに暮らしていたからそうなったというのもあるだけで、例外的なものでもある。

だから本来ならお互いに関心を向けないのが当然なんだ。つがったり子供を育てるなどの理由以外で他者に関心を向けるのは、もうそれ自体が、

<宣戦布告>

に近いとも言えるかもしれないな。

ゆえに、こうやってお互いにスルーし合ってくれてるのが平和でいい。

が、その一方でよく見ると、れいえいについては、一瞬だけだが視線を合わせることもあるんだよな。それこそじっくり見てないと気付かないくらいの一瞬であるものの、二人にとってはそれで十分なんだろう。

地球人の感覚では理解できなくても、そもそも地球人に理解してもらおうなんて考えてもないだろうから、別にいいさ。自分達の感覚を押し付けようとするのがそもそも傲慢ってもんだし。

『自分と違う』

ってのを認められない奴は、価値観を同じくするコミュニティから出てくるのは避けた方がいいだろうな。

地球人社会でも、様々な価値観を持った者達によるコミュニティが作られてる。その代表格が<AI・ロボット排斥主義者>らによるコミュニティだ。それなりの規模の都市サイズのそれがいくつも存在するが、おおむね穏当に存在できてるコミュニティについてはそれこそ<鎖国>同然で閉じた社会を形成してるんだよ。

まあ、内部ではあれこれ不具合も抱えてるらしいが、基本的に他所とは関わらないようにしてるな。

関われば軋轢が生じるのは避けられないしなあ。

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