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第四世代
丈編 プロローグ
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丈は、マンティアンである。
父親は俺。母親は<刃>。明を姉に持ちつつ、気性はマンティアンとしては温和な方だ。
あくまで、
『マンティアンとしては』
だが。
だから当然、獲物や敵に対しては一切容赦がないし、そういう部分では恐ろしさもある。あるが、彼ももうマンティアンとしては<高齢者>だからな。衰えも見られる。加えて、明が天寿を全うしたかのように穏やかに生涯を終えたことで、もういつ彼の順番が巡ってきてもおかしくない状態だった。
それでも、先に命を終えたのは、レオンである異母姉の深だった。
はっきり言って生物としての強さはマンティアンの方がずっと上であり、バランスを取るためか、マンティアンは短命な傾向が強かった。
とはいえ、それもあくまで<傾向>というだけだからな。個体によって当然、違いはある。
深はレオンとしてはやや短く、丈はマンティアンとしてはやや長い、というだけのことだろうさ。
それでいて、深もすごく穏やかに生涯を終えることができた。なにか特別な疾病で苦しみながら死んだわけでもない。誉の実の母親である密は認知症を発症して壮絶な晩節を過ごし、丈の姉の明もやや認知症の傾向を見せつつも、密ほどの症状には至らず、概ね穏やかな最後だったと思う。
丈もその点では、年齢の割には健康だった。内臓なども衰えてはきてるものの、それ自体、年齢を考えれば自然な変化の範囲内だろうな。
残された時間はもう長くないとしても、だからこそ彼もまた、穏やかに天寿を全うしてくれそうだ。
親として、子供を見送るというのは忸怩たる思いもありつつ、何度も言うようにこんな世界に生み出してしまったことの顛末を見届けられるのは、むしろありがたいよ。子供達がどう生きられたかを確かめもせずに先に楽になりたくなかった。
だからこそ、明も深も、苦しみながら死んだわけじゃないのが、俺にとっても救いなんだ。
丈は、俺自身はほとんど構ってあげることもできなかった、本当に印象の薄い子だった。親としてそんなことを言うのは憚られるが、彼に対する記憶もそんなにないんだ。刃との一人目の子である明のことはよく覚えてる一方で、二人目の子である丈のことはあまり気に掛けていなかったってわけじゃないとは自分では思いたいものの、彼のことをどうでもいいと思ってたわけじゃないものの、他のあれこれにかまけてついつい疎かになっていたという部分が皆無だったかと言われれば、自信をもって『否!』とは言えないのも嘘偽りない話なんだ。
父親は俺。母親は<刃>。明を姉に持ちつつ、気性はマンティアンとしては温和な方だ。
あくまで、
『マンティアンとしては』
だが。
だから当然、獲物や敵に対しては一切容赦がないし、そういう部分では恐ろしさもある。あるが、彼ももうマンティアンとしては<高齢者>だからな。衰えも見られる。加えて、明が天寿を全うしたかのように穏やかに生涯を終えたことで、もういつ彼の順番が巡ってきてもおかしくない状態だった。
それでも、先に命を終えたのは、レオンである異母姉の深だった。
はっきり言って生物としての強さはマンティアンの方がずっと上であり、バランスを取るためか、マンティアンは短命な傾向が強かった。
とはいえ、それもあくまで<傾向>というだけだからな。個体によって当然、違いはある。
深はレオンとしてはやや短く、丈はマンティアンとしてはやや長い、というだけのことだろうさ。
それでいて、深もすごく穏やかに生涯を終えることができた。なにか特別な疾病で苦しみながら死んだわけでもない。誉の実の母親である密は認知症を発症して壮絶な晩節を過ごし、丈の姉の明もやや認知症の傾向を見せつつも、密ほどの症状には至らず、概ね穏やかな最後だったと思う。
丈もその点では、年齢の割には健康だった。内臓なども衰えてはきてるものの、それ自体、年齢を考えれば自然な変化の範囲内だろうな。
残された時間はもう長くないとしても、だからこそ彼もまた、穏やかに天寿を全うしてくれそうだ。
親として、子供を見送るというのは忸怩たる思いもありつつ、何度も言うようにこんな世界に生み出してしまったことの顛末を見届けられるのは、むしろありがたいよ。子供達がどう生きられたかを確かめもせずに先に楽になりたくなかった。
だからこそ、明も深も、苦しみながら死んだわけじゃないのが、俺にとっても救いなんだ。
丈は、俺自身はほとんど構ってあげることもできなかった、本当に印象の薄い子だった。親としてそんなことを言うのは憚られるが、彼に対する記憶もそんなにないんだ。刃との一人目の子である明のことはよく覚えてる一方で、二人目の子である丈のことはあまり気に掛けていなかったってわけじゃないとは自分では思いたいものの、彼のことをどうでもいいと思ってたわけじゃないものの、他のあれこれにかまけてついつい疎かになっていたという部分が皆無だったかと言われれば、自信をもって『否!』とは言えないのも嘘偽りない話なんだ。
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