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第四世代
閑話休題 若いマンティアンの躓き
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「!?」
ドーベルマンDK-a拾弐号機の前脚を鎌で捉えた若いマンティアンは、その異様な感触にギョッとなる。
当然だ。<生き物の甲羅>などともまったく異なる、弾力性の欠片もない、
<有り得ない硬さ>
なのだから。
生き物を構成する物質は、たとえ骨などの硬い部分であっても、ごくわずかにしても弾力を持つ。しかし、拾弐号機の、大きな負荷がかかる部分を構成しているのは、途轍もない強度と硬度を持つ金属であるため、およそ弾力というものを感じさせないのだ。
普通の生き物では有り得ない硬さである。
知識がなければとにかく強烈な違和感を覚えるものだろう。
にも拘わらず、若いマンティアンは、しっかりと違和感を覚えつつそれを無視するかのように膝蹴りを繰り出してきた。
足技は、使うマンティアンもいるにはいるが実はあまり一般的ではなかった。と言うか、たいてい頭突きか噛み付きでケリがつくので、そもそも使う機会が少ないのだと思われる。
なので、敢えて足技を使ってみせるこの若いマンティアンは、そういう意味では<センス>がある方なのかもしれない。しかし、だからこそ自身の力に溺れているタイプと言えるだろうか。
だが当然、そんなものは拾弐号機には通用しない。足技を巧みに使うマンティアンについてもデータがあるからだ。
鎌で捉えられた前脚を、膝関節に当たる部分からぐるりと回転させて、膝蹴りを受け止めてみせる。これも、生き物の関節では異様にも思える動きだった。
「!?」
だから若いマンティアンはこれにも驚き、唖然とした様子を見せた。
すると当然、その隙を拾弐号機は見逃してくれない。膝蹴りを受け止めた前脚をすぐさま再び反転させて、パンチとして顔面目掛けて繰り出す。
ボクシングとしてみれば、肘から先を弾くように打ち出しただけの力の入っていないパンチになるだろうそれも、パンチを繰り出すための機構がそもそも生き物と違っている拾弐号機には関係なく、一撃で相手をKOするのに十分な威力を持っていた。
「ギッッ……!!」
まったく予測のつかない攻撃の連続に、また膝が落ちそうになる。なるが、なおも持ちこたえてみせた。
まったく、大したタフネスぶりである。
もっとも、それさえ既知の情報であった。野生の生き物はたいへんなタフネスぶりを発揮することも多い上にマンティアンは特にタフな部類ではあったものの、驚くには値しない。これくらいは種族として一般的な特徴なのだ。
が、だからこそさらに反対側の前脚による<ストレート>をくらう羽目になり、これが決め手となった。
地球人なら死んでいてもおかしくない打撃を何発もくらって痛い思いをして、ようやく逃げ出したのである。
自らに絶対の自信を持っていたであろう若いマンティアンの、初めての躓きであったのかもしれない。
ドーベルマンDK-a拾弐号機の前脚を鎌で捉えた若いマンティアンは、その異様な感触にギョッとなる。
当然だ。<生き物の甲羅>などともまったく異なる、弾力性の欠片もない、
<有り得ない硬さ>
なのだから。
生き物を構成する物質は、たとえ骨などの硬い部分であっても、ごくわずかにしても弾力を持つ。しかし、拾弐号機の、大きな負荷がかかる部分を構成しているのは、途轍もない強度と硬度を持つ金属であるため、およそ弾力というものを感じさせないのだ。
普通の生き物では有り得ない硬さである。
知識がなければとにかく強烈な違和感を覚えるものだろう。
にも拘わらず、若いマンティアンは、しっかりと違和感を覚えつつそれを無視するかのように膝蹴りを繰り出してきた。
足技は、使うマンティアンもいるにはいるが実はあまり一般的ではなかった。と言うか、たいてい頭突きか噛み付きでケリがつくので、そもそも使う機会が少ないのだと思われる。
なので、敢えて足技を使ってみせるこの若いマンティアンは、そういう意味では<センス>がある方なのかもしれない。しかし、だからこそ自身の力に溺れているタイプと言えるだろうか。
だが当然、そんなものは拾弐号機には通用しない。足技を巧みに使うマンティアンについてもデータがあるからだ。
鎌で捉えられた前脚を、膝関節に当たる部分からぐるりと回転させて、膝蹴りを受け止めてみせる。これも、生き物の関節では異様にも思える動きだった。
「!?」
だから若いマンティアンはこれにも驚き、唖然とした様子を見せた。
すると当然、その隙を拾弐号機は見逃してくれない。膝蹴りを受け止めた前脚をすぐさま再び反転させて、パンチとして顔面目掛けて繰り出す。
ボクシングとしてみれば、肘から先を弾くように打ち出しただけの力の入っていないパンチになるだろうそれも、パンチを繰り出すための機構がそもそも生き物と違っている拾弐号機には関係なく、一撃で相手をKOするのに十分な威力を持っていた。
「ギッッ……!!」
まったく予測のつかない攻撃の連続に、また膝が落ちそうになる。なるが、なおも持ちこたえてみせた。
まったく、大したタフネスぶりである。
もっとも、それさえ既知の情報であった。野生の生き物はたいへんなタフネスぶりを発揮することも多い上にマンティアンは特にタフな部類ではあったものの、驚くには値しない。これくらいは種族として一般的な特徴なのだ。
が、だからこそさらに反対側の前脚による<ストレート>をくらう羽目になり、これが決め手となった。
地球人なら死んでいてもおかしくない打撃を何発もくらって痛い思いをして、ようやく逃げ出したのである。
自らに絶対の自信を持っていたであろう若いマンティアンの、初めての躓きであったのかもしれない。
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