上 下
2,010 / 2,556
第四世代

深編 成長の過程の一つ

しおりを挟む
新暦〇〇三八年四月四日



一方、しんと久々に顔を合わせたほまれの方も、それで何か今までと様子が変わったかと言われればそんなこともなかった。自分の代わりに実質的にボスとしての役目を果たしているとどろきの姿を見守るように陣取って、悠然と泰然と構えている。

その姿は、我が息子ながら頭が下がるよ。俺なんかよりよっぽど貫禄があると思う。

だがそんなことに嫉妬するつもりもない。年齢が上か下かで当人の価値が決まるわけでもないしな。これまで生きてきた期間が俺よりずっと短くても、ほまれの人生はものすごく濃密だ。毎日毎日、死と隣り合わせの環境で、自分や自分の家族だけでなく、群れの仲間達の命をも守ってきたんだ。そりゃ、両親の事故死や光莉ひかりの病気のことがあっても、それ以外は地球人社会の高度に整えられた環境で命の心配をすることなく外敵の襲撃を警戒することなくぬくぬくと暮らしてきた俺よりは密度が高くて当然だろう。

それに嫉妬するとか、馬鹿馬鹿しいってもんだ。

他者と比べることで奮起して自身を高めるよう努力をするため、それができるようにモチベーションを高めるため、って形で活かすなら素晴らしいと思うが、他者の頑張りを妬んで足を引っ張ろうとするなんてのは、<愚の骨頂>ってもんだと俺は思う。

いずれにせよ、俺から見てもほまれは尊敬に値する立派な人生を送ってきてる。確かに子供の頃には迷惑も掛けられたりしたが、そんなものは親としては当たり前のことだしな。子供ってのは親に迷惑を掛けることで成長していくもんだ。何より、他所様に取り返しのつかない大きな迷惑を掛けたわけじゃなければ、別に目くじらを立てることでもないさ。

まあ、他のパパニアンの縄張りの中で、

<自身の縄張りを主張する雄叫び>

を上げたりしたのは<迷惑>と言えば迷惑なんだろうが、それ自体、パパニアンとしてはごく普通にある、

<成長の過程の一つ>

らしいし。

そういうものを経て経験を積んで、パパニアンとしての生き方を学んでいくんだ。

それに彼は、そんな自分の<やらかし>を武勇伝のように語ったりしないしな。

もしかすると、しんは、ほまれがそうやって立派になったことを実感して安心したのもある……

……かどうかは分からないか。そんなのは<親の欲目>と言うか、

<そうであってほしいという願望>

に過ぎないしな。

いずれにせよ、しんほまれも、それぞれに自分の人生をしっかりと生きてくれてるのは確かだ。ボスとしての貫禄を見せるほまれと違って毎日ぐうたらしてるだけに見えるしんもな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

処理中です...