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第四世代

深編 玉石混交

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新暦〇〇三八年三月十一日



『<玉石混交>が飛び抜けた作品が生まれてくる素地になる』

というのは、

『その作品自体はただの<石>にしか過ぎなくても、その作品に触れた他の創作者がそこから発想を受けて着想を得て<ぎょく>と言える作品を生み出すこともある』

ってことも含めてのものような気がするんだよな。

当たり障りのない作品ばかりで、刺さるものがなくて、ただただ浪費されるだけの作品を流れ作業的に作ってると、コンテンツ自体が衰退していくんじゃないか?

そんな気もするんだ。

これは、

『いわゆる<売れ線の作品>ばかりになっても飽きられる』

というのも含んでのことかもしれないな。なにしろ、ヒットした作品を参考にしたものが次々出てきてもそれらすべてがヒットするわけじゃないだろうし。それどころか同じ創作者が同じような作品を続けて出すと、

『引き出しが少ない』

『そういうのしか作れないのか』

『才能が枯れた』

とか揶揄するのが必ず出てくるしな。

『売れる』ことばかりに主眼を置いて作品作りをしていると、結局、似たようなものばかりになってしまうのは当然だろうさ。

『数は少なくても誰かに強く刺さる作品が作られて、それに触れた創作者志望の人間が面白いものを作る』

という形もあるんじゃないのか?

だから<感動ポルノ>も<残虐なシーンを含んだ作品>も、どっちもあっていいと俺は思うんだよ。

まあ正直なところ、今の時点では俺達の中に<創作者>と言えそうなのはいないからそこを考えたところであまり意味はないのかもしれないが、いずれ創作者が現れた時にそそれを伸ばしていける育てていける成長していける素地というものはあってもいいんじゃないかと思ってる。

俺のこの<手記>も、今はただの<つまらない散文>でしかなくても、これを上手く料理してくれるのが現れたりするかもしれないしな。

それに、光莉ひかり号やコーネリアス号のアーカイブに残されたコンテンツに刺激を受けて、

『自分もこういうのを作ってみたい!』

と考えるのも現れるかもしれない。

なんてことを俺が延々と考えてても、しんはやっぱりそんなことはまるで関係ないとばかりに、

「ふぁあふ……」

って感じで大きなあくびをしていた。

部屋の扉を閉めることをしない上に、別に隔離された空間ってのを彼女は必要としてないので、外からも割と丸見えな部屋なんだ。窓にもガラスと言うか<代替プラスチック製の透明な板>は嵌め込んでない。ただの<四角い穴>なんだ。そこからも彼女は出入りしたりもする。

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