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第四世代

深編 感動ポルノ

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新暦〇〇三八年三月十日



『<人間の良さ>や<愛の素晴らしさ>を喧伝されたところで実際の人間(地球人)の振る舞いを見てると白けてくる』

そういうのがあるのは事実だろう? だからこそ、

<感動ポルノ>

なんて言葉もできたんだろうしな。

『感動的な<お涙頂戴シーン>を流しておけば見てる方は感動してくれる』

と考えて作ったとしても、たとえ、そんな打算じゃなく作ってる方は本気でそれが感動を呼ぶと思っていたんだとしても、見る方は必ずしもそう受け取ってくれないってのも事実のはずだ。

だから<残虐なシーン>さえ流さなければ子供が真っ当に育つというわけでもないだろうな。

問題は<コンテンツの内容>じゃない。どこまでいっても、

『生身の人間の実際の振る舞いこそが人間を作る』

わけで。

まあそういう意味じゃ、

『コンテンツの中で残虐なシーンを見せるからこそ強い人間に育つ』

というわけでもないし、

『コンテンツの中の残虐なシーンを見ることで現実を受け止められるようになる』

というわけでもないのも事実だとは思うから、そういう論旨で、

<コンテンツの中で残虐シーンを描くことの必要性>

を説くのも的外れなんだろうなとは俺も感じるよ。

だいたい、

『フィクションの中でまで世知辛い現実を見たくない!』

『フィクションだからこそ夢を見ていたい!』

とか言うのもいたじゃないか。なのに、『コンテンツの中で残虐なシーンを見せるからこそ強い人間に育つ』だとか『コンテンツの中の残虐なシーンを見ることで現実を受け止められるようになる』だとか、矛盾してないか? 

『自分の好きなものを擁護するためなら矛盾したことを言っててもいい』

なんてのは、

『平和を守るためなら実現するためなら暴力を振るっていい』

みたいな考え方と同類だとしか思えないけどな。

だからこそ俺は、

『コンテンツにおける残虐シーンの描写の是非を議論する』

こと自体は必要だとも思うんだよ。じゃないと、ただ残虐シーンを並べ立てて、

『どうだ! 興奮するだろう?』

的な考え方で作られるようなコンテンツばっかりになっても困るわけで。と言うか、安直にそういうのに頼るというのは、<感動ポルノ>の成り立ちと同じだろう?

それは<リアル>でもなければ<リアリティ>でもないと俺は感じる。

と同時に、そういう極端にふったコンセプトの作品があってもいいんじゃないか? とも思うんだよな。

いろんなものがあってこそ、<玉石混交>の状況があってこそ、飛び抜けたものがその中から生まれてくるってのもあるんじゃないか?って気はする。

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