1,927 / 2,387
第四世代
彗編 蓮華
しおりを挟む
新暦〇〇三七年十月二十六日
<先祖返りを起こしたパパニアンの赤ん坊>が亡くなってから四十八時間以上が経過し、やはり蘇生はしなかったことで、完全に不可逆的な変化が起こってるのが確認されたことで、イレーネが掘ってくれた墓穴に埋葬することになった。
その赤ん坊の名前は、
<蓮華>
深の子で死産だった連と同じく、俺の名の<れんぜ>から付けたものだ。ほんの一時でも俺達と関わって生きたんだから、名前くらいあってもいいだろう?
もちろんそれはただのセンチメンタリズムだというのも分かってる。名前なんかあってもなくてもこの子には関係ないだろう。だがこういうのも結局、生きている側が自分を納得させるためにするためのものだっていうのも事実だと思うんだ。これにより自分の気持ちに踏ん切りをつけるっていうな。
これまでにも何度も言ってきたことだと思うが、今回、改めて実感させられたよ。
蓮華を埋葬し、簡単とはいえ<弔いの儀式>を経て、俺は自分自身に、
『やることはやった』
と言い聞かせる。言い聞かせるためのアリバイ作りにはなったよな。
でも、
「助けてやりたかったよな……」
腕に抱いた錬慈の命を感じつつ、ついそう口にしてしまう。錬慈は生きられて、蓮華は生きられなかった……
別に『誰が悪い』というわけじゃないが、厳然たる事実としてそんな違いが生じてしまうのも確かだ。
「けれど、これからも助けようとはするんだよね? お父さん」
萌花を抱いた光に問われ、
「もちろんだ。可能な限りは助ける」
ときっぱりと口にした。そうやって救えた命が、<朋群人>として生きていくことになるということだよな。そして朋群人達が生きていけるための仕組みを、俺達は作っていかなきゃいけない。
命を助けるだけ助けておいて、
『後はお前達で勝手に生きろ』
というのもさすがに無責任に過ぎるだろう。
そうだ。親として、人間の子供をこの世に送り出すのも同じだ。一方的にこの世に送り出しておいて『後はお前達で勝手に生きろ』は、あんまりにもあんまりだろ。野生の生き物ならそれもありとしても、仮にも<人間>を称するのならな。
だから俺は改めて錬慈が自分の力で生きていけるようになるまでは俺の責任において育てていかなきゃなと思ったよ。
蓮華……これで許してくれるか……?
いや、許す許さないじゃないな。蓮華にしてみりゃ何が何だか分からないままに命を落としたんだしな。
だがこれが、
『人間として生きる』
ということなんだろうな。この気持ちを背負って生きるんだ。
<先祖返りを起こしたパパニアンの赤ん坊>が亡くなってから四十八時間以上が経過し、やはり蘇生はしなかったことで、完全に不可逆的な変化が起こってるのが確認されたことで、イレーネが掘ってくれた墓穴に埋葬することになった。
その赤ん坊の名前は、
<蓮華>
深の子で死産だった連と同じく、俺の名の<れんぜ>から付けたものだ。ほんの一時でも俺達と関わって生きたんだから、名前くらいあってもいいだろう?
もちろんそれはただのセンチメンタリズムだというのも分かってる。名前なんかあってもなくてもこの子には関係ないだろう。だがこういうのも結局、生きている側が自分を納得させるためにするためのものだっていうのも事実だと思うんだ。これにより自分の気持ちに踏ん切りをつけるっていうな。
これまでにも何度も言ってきたことだと思うが、今回、改めて実感させられたよ。
蓮華を埋葬し、簡単とはいえ<弔いの儀式>を経て、俺は自分自身に、
『やることはやった』
と言い聞かせる。言い聞かせるためのアリバイ作りにはなったよな。
でも、
「助けてやりたかったよな……」
腕に抱いた錬慈の命を感じつつ、ついそう口にしてしまう。錬慈は生きられて、蓮華は生きられなかった……
別に『誰が悪い』というわけじゃないが、厳然たる事実としてそんな違いが生じてしまうのも確かだ。
「けれど、これからも助けようとはするんだよね? お父さん」
萌花を抱いた光に問われ、
「もちろんだ。可能な限りは助ける」
ときっぱりと口にした。そうやって救えた命が、<朋群人>として生きていくことになるということだよな。そして朋群人達が生きていけるための仕組みを、俺達は作っていかなきゃいけない。
命を助けるだけ助けておいて、
『後はお前達で勝手に生きろ』
というのもさすがに無責任に過ぎるだろう。
そうだ。親として、人間の子供をこの世に送り出すのも同じだ。一方的にこの世に送り出しておいて『後はお前達で勝手に生きろ』は、あんまりにもあんまりだろ。野生の生き物ならそれもありとしても、仮にも<人間>を称するのならな。
だから俺は改めて錬慈が自分の力で生きていけるようになるまでは俺の責任において育てていかなきゃなと思ったよ。
蓮華……これで許してくれるか……?
いや、許す許さないじゃないな。蓮華にしてみりゃ何が何だか分からないままに命を落としたんだしな。
だがこれが、
『人間として生きる』
ということなんだろうな。この気持ちを背負って生きるんだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる