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第四世代

彗編 再確認

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新暦〇〇三七年十月二十七日



こうしてまた、俺達の集落に墓が一つ増えた。蓮華れんげの墓が。

それを視界の隅に捉えながら、今回の対応の問題点を洗い出す。

「結局、一にも二にもホビットMk-Ⅱの性能の限界を感じたって感じだな。俺としては」

と切り出した俺に、久利生くりうは、

「いや、確かに上を目指せばキリがないが、現状ではこれでも十分な対応だったと僕は思う」

そう言ってくれる。シモーヌも、

「私も久利生くりうと同意見かな。決してロボットの専門家じゃない私達にできることとなれば今でも大変なものだって気がしてるけどな」

と。

けれどこれに対してレックスは、

「ああ、私も今の時点で言えば立派なものだと感じている。しかし、錬是れんぜとしては現状で満足していてはいけないと言いたいんだろう?」

俺に問い掛けてきた。

「その通りだ。レックスの言うとおり、これで満足していたいわけじゃないんだ。どこまで行っても助けられる命と助けられない命が出てくるのは確かでも、最初から諦めることはしたくない。

もちろんこれが、<素人の理想論>でしかないのも分かってる。ホビットサンク村のホビットMk-Ⅱ達の性能が他に比べて劣っていると言っても誤差の範囲くらいだというのも事実なんだろう。けど、『それでも』なんだよ」

エレクシアが現場にいれば、いや、せめてドーベルマンMPMが現場にいれば、蓮華れんげは救われていたかもしれないと思うと、ついついそう考えてしまうんだ。

するとレックスは、

「ならやっぱり、地道に改良を加えていくしかないだろうな。技術に近道はない。ひたすら一歩一歩進むだけなんだ。その積み重ねが結果に至る」

諭すように言ってくれた。

結論はそこしかないのが分かっていて、敢えて俺に言いたいことを言わせてくれたんだ。俺にもそれが分かる。

俺自身も分かってる。ここまでにもそういうことを自分でも口にしてきたはずだ。だが、それだけでは納得できないのも人間という生き物の厄介さなんだよな。

『頭では分かっていても気持ちの上で納得できない』

というのがどうしてもある。そのための手間を、皆が掛けてくれる。

本当にありがたい。自分で考えても同じ結論になるのは事実でも、こうして自分以外の人間を通して確認できるというのも大事なんだ。人間という生き物は。

蓮華れんげを救えなかったことは、生涯、後悔として残るかもしれない。しかしこれもまた『生きる』ということだよな。いくつもの後悔を重ねて、懊悩を重ねて、そしてそのこと自体を経験としていく。

だからこそ『考える』というのが必要なんだ。

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