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第三世代

ホビットMk-Ⅰ編 改良を続けて

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新暦〇〇三四年五月二十五日



<ビアンカ妊娠・出産計画>の推移を見守り、うららの様子も見守り、アカトキツユ村であらたに保護されているレトの様子も見守りつつ、俺達自身も穏やかな日々を送りつつ。コーネリアス号にて運用されているホビットMk-Ⅰのデータ収集も淡々と行う。

その一方で、ボーキサイトを大量に含んだ泥を持つ河の上流を、母艦ドローンとドーベルマンMPMによって捜索すると、ついに、

「これは、この丘陵そのものがボーキサイトの塊ですね」

データを見たエレクシアがそう告げる。しかも、そこからさほど遠くない場所でも俗に<スカルン鉱床>と呼ばれる、多種多様な鉱物がまだら模様のごとく凝縮された鉱床が発見された。

「やはり、きちんと調査するべきでしたね」

エレクシアが発した言葉が耳に痛い。

そう彼女に言われた通り、ここまでは、あくまでこの台地の上の生態系についての調査に重点を置いてて、正直、鉱物とかについてはそのついででしかなかった。まあ、そこまで必要に迫られてなかったからというのもあったんだが、今後、<文明>を<社会>を成立させていくには、より一層の確実な<リソース>が必要だ。乱開発は控えるにしたって、最低限のものがないと当然のことながら文明社会など成立しない。

とは言え、

「なるべく、環境に負荷をかけ過ぎない範囲での利用をこれから考えていかないとな」

俺はそう告げた。

「そうね。異議なし」

「私もそれでいいと思う」

「僕もその方針に賛成だ」

非常に高度に発達した文明を知る、俺とシモーヌとビアンカと久利生くりうの四人で、当面の方針を決定する。ひかりあかりやルコアは今の生活で満足しているし、後は過不足ない生活環境を維持できれば不満はないそうだ。

だから、

<今の生活レベルを維持できる範囲の発展>

を、少なくとも俺達が生きている間は目指そうと思う。俺達がいなくなった後のことは、朋群ほうむ人ら自身の判断に任せるさ。

もちろん、エレクシア達ロボットが、かつて地球人がやらかした失敗を繰り返さないようにアドバイスもしてくれるようにしつつ、ゆっくりとゆっくりと社会を作り上げていこう。

今はまだ、不合理なしがらみや因習も因縁もここにはない。何世代にも亘って民族同士が憎しみ合うような軋轢もない。だったら、わざわざそういうものを改めて作る必要もないだろう?

他者にストレスを転嫁することで自分のストレスを緩和するような仕組みを作る必要もないしな。

そのためにも、ホビットMk-Ⅰの改良を続けていきたいんだ。

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