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第三世代
新編 いつもの光景
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真っ白だったはずの自分の体が、茶色のまだらに変化していく。なぜそうなるかを知らなければ、これはきっと本人にとっては恐ろしいことだろう。それこそ、
『自分はとんでもない病気に罹ったんじゃないか? 死ぬんじゃないか……!?』
と思ってしまう程度には。今の麗がまさにそれだと思う。
でも、厳密には違う。別に<死の病>でも何でもない。ただ、自分の体のメンテナンスを怠っていたことによる当然の変化だ。けれどそれを知らない麗は軽くパニックに陥ってしまった。
それを、光が労わってくれる。そして丁寧にケアを行い、<虫除けの花や実を磨り潰したもの>を塗り、毛繕いを行う。
すると、みるみる白さを取り戻していく。
「ううあ……? うあ……?」
穏やかに自分を見つめる光に、麗が問い掛ける。
『治ったの? 治った?』
と。
「うん。治ったよ。もう大丈夫」
柔和に微笑む光が、改めて労わってくれる。これまでもずっと、光は麗を労わってくれていた。新が一番労わってくれてたが、その陰で、ちゃんと、光も彼女を労わってくれていたんだ。
けれど、麗はずっとこれまで、新しか見ていなかったから、そのことに気付いてなかったんだろうな。新以外にも、自分をちゃんと見てくれてる人がいることに気付いていなかったんだ。
それは、光だけじゃない。陽も、順も、和もそうだった。和は幼さゆえに労わり方も拙かったかもしれないが、麗を大事だと思う気持ちに嘘はない。
麗、お前はこんなにも愛されていたんだよ。お前が新を愛していたのと変わらないくらいに、みんながお前を愛してくれていたんだ。
地球人の子供ならここで、光に縋り付いて泣いたりするところかもしれないが、地球人のメンタリティを持つわけじゃない麗は、そんな風に分かりやすい変化を見せたりはしない。ただ、おとなしく毛繕いをされているだけだ。
光が、全身の毛に丁寧に<虫除けの花や実を磨り潰したもの>を塗り込んでくれて、明らかに白さを取り戻しつつあった麗を、今度は陽が毛繕いしてくれた。麗は、じっとなすがままにされている。気持ちいいんだろう。
さらにそこに、和も加わる。そうだ。それがいつもの光景だった。新にだけじゃなく、陽と和にも、毛繕いをしてもらってたんだ。そのお返しに、麗も陽や和に毛繕いをしてた。
するといつの間にか、麗が陽の頭を毛繕いして、和が麗の毛繕いをしてという形に。さらにその後、今度は麗が和の髪の毛を毛繕いして、陽が麗の毛繕いをして。
本来の<いつもの光景>が、やっと戻ってきたのだった。
『自分はとんでもない病気に罹ったんじゃないか? 死ぬんじゃないか……!?』
と思ってしまう程度には。今の麗がまさにそれだと思う。
でも、厳密には違う。別に<死の病>でも何でもない。ただ、自分の体のメンテナンスを怠っていたことによる当然の変化だ。けれどそれを知らない麗は軽くパニックに陥ってしまった。
それを、光が労わってくれる。そして丁寧にケアを行い、<虫除けの花や実を磨り潰したもの>を塗り、毛繕いを行う。
すると、みるみる白さを取り戻していく。
「ううあ……? うあ……?」
穏やかに自分を見つめる光に、麗が問い掛ける。
『治ったの? 治った?』
と。
「うん。治ったよ。もう大丈夫」
柔和に微笑む光が、改めて労わってくれる。これまでもずっと、光は麗を労わってくれていた。新が一番労わってくれてたが、その陰で、ちゃんと、光も彼女を労わってくれていたんだ。
けれど、麗はずっとこれまで、新しか見ていなかったから、そのことに気付いてなかったんだろうな。新以外にも、自分をちゃんと見てくれてる人がいることに気付いていなかったんだ。
それは、光だけじゃない。陽も、順も、和もそうだった。和は幼さゆえに労わり方も拙かったかもしれないが、麗を大事だと思う気持ちに嘘はない。
麗、お前はこんなにも愛されていたんだよ。お前が新を愛していたのと変わらないくらいに、みんながお前を愛してくれていたんだ。
地球人の子供ならここで、光に縋り付いて泣いたりするところかもしれないが、地球人のメンタリティを持つわけじゃない麗は、そんな風に分かりやすい変化を見せたりはしない。ただ、おとなしく毛繕いをされているだけだ。
光が、全身の毛に丁寧に<虫除けの花や実を磨り潰したもの>を塗り込んでくれて、明らかに白さを取り戻しつつあった麗を、今度は陽が毛繕いしてくれた。麗は、じっとなすがままにされている。気持ちいいんだろう。
さらにそこに、和も加わる。そうだ。それがいつもの光景だった。新にだけじゃなく、陽と和にも、毛繕いをしてもらってたんだ。そのお返しに、麗も陽や和に毛繕いをしてた。
するといつの間にか、麗が陽の頭を毛繕いして、和が麗の毛繕いをしてという形に。さらにその後、今度は麗が和の髪の毛を毛繕いして、陽が麗の毛繕いをして。
本来の<いつもの光景>が、やっと戻ってきたのだった。
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