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第三世代

モニカとハートマン編 何も根拠のないもの

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季節はずれのその風が何をもたらすことになるのか、この時点の俺は、正直、気付いていなかった。

けれど、久利生くりうとビアンカはこの時点ですでに予測していたらしい。そこで、

「ダミー集落、N003とN004方面に、それぞれドローン六機を追加。周辺の詳細を観測」

久利生くりうの指示に従い、コーネリアス号がドローンを派遣する。

<命令>ではなくあくまで<指示>なので、コーネリアス号もそのまま従ってくれる。強制力のある<命令>は、唯一の人間(地球人)である俺しか出せないからな。

しかし、これによってさすがに俺も異変を察する。

「何か、あったのか?」

いつもどおりにタブレット越しではあるものの尋ねると、久利生くりうが、

「今、普段のそれとは違う風向きで強い風が吹いた。もしかするとそれがこちらの<匂い>を例の<白いルプシアン>に届けることになるかもしれない。なので、警戒しておいたほうがいいと思う」

冷静に応えてくれた。

「なるほど…!」

そこでようやく事態を理解した俺は、頭を切り替える。

正直、例の白いルプシアンについては、これまでのところ、普通のルプシアンと見た目以外に違いがあるようには俺には感じられなかった。あかりが言うように確かに強いのかもしれなくても、その強さは、

『精々、龍然りゅうぜん程度だろう』

というのが実感だったんだ。龍然りゅうぜん程度なら、たとえ勝ち切れなくても、ハートマンやグレイでも対処できる。それほどの脅威でもないしな。

だが、軍人である久利生くりうとビアンカは、これまでのここでの経験から、『油断するべきではない』と感じ取っていたらしい。いや、もちろん俺も油断はしてないつもりだったんだが、この辺りは<素人>の悲しさか、つい、

夷嶽いがくは倒していないから、大丈夫だろう』

という思い込みに支配されていたらしい。素人ゆえに、これまでの経験から楽観的に捉えてしまっていたんだ。

しかし、それがただの<思い込み>に過ぎないことを、俺は思い知らされることになる。

そもそも、

きょうみずちがく夷嶽いがくを倒すことでさらに強力な<怪物>が現れる』

という認識自体が、何も根拠のないものでしかないんだよ。

決して、『それが正しい』と立証されたわけじゃない。これまでの経験則に基づいた単なる<仮説>なんだ。

夷嶽いがくを倒してないから<次の怪物>は現れないというわけじゃない』

それを証明するかのように、ビクキアテグ村を吹き抜けた風が僅か数分で例の白いルプシアンのところにまで辿り着き、瞬間、そいつが弾かれるように動くのがドローンのカメラに捉えられる。

「速い……っ!?」

一瞬で白いルプシアンの姿が画面から消える映像を見た俺は、思わずそう口走っていたのだった。

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