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第三世代
麗編 成熟
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新暦〇〇三三年十一月三十日。
パパニアンは、基本的には雄が雌にアプローチすることで番うという形を取るものの、別に雌の方が雄を気に入って近付いていくという事例がないわけじゃない。昴を気に入った翠の方から接近していったように、麗と新のケースも、まあ、そういうことなんだろうな。
麗は、遊ぶ時は和や陽とでありつつ、二人と一緒に順に連れられて密林に入ったりもしつつ、それ以外はだいたい新にべったりだ。
彼女にとって新は、<命の恩人>で、しかもとても大事にしてくれる、大変な<優良物件>だろう。しかも、他のパパニアンとしては、自分のことを見ようともしないでパルディア(にそっくりなレオンの彩)と四六時中べったりの焔や、たまに好奇心に駆られて顔を出してくる誉の群れの子供達くらいだから、まあ、こうなるのも当然と言えば当然か。
が、実を言うと、最近、誉の群れの子供の雄の一人が、どうやら麗に気があるらしくて、ちょくちょく顔を出すようになっていた。
推定年齢は麗と同じく六歳くらいか。熱心に麗にアプローチを掛けるもののいかんせん彼女の方はまったく関心がない上に、その雄が近付いて来ようとすると一目散に逃げだしてしまうという有様。
しかも、そうやって麗が嫌がるとあれば、当然、新も黙ってはいないわけで、
「がぁーっっ!!」
と恐ろしい剣幕で襲い掛かって追い返してしまったりと、散々な目に遭っていた。
それでもその雄は諦めない。毎日顔を出しては麗にアピールするようになったんだ。
なのにやっぱり、麗は迷惑そうに冷めた視線を向けるだけで、ロクに彼の<求愛行動>を見ようともしない。それどころか、
『私はこの人が好きなの』
と言わんばかりに新に抱き付いて、彼に見せ付けようとする。
ただ、新の方は、嫌がってはいないものの彼女を雌と見做して愛してるようなそぶりは見せないので、それがまた、諦めがつかない原因になっているんだろう。
で、そうこうしている間に、麗が遂に<初潮>を迎えた。パパニアンの平均的な初潮年齢は六歳から八歳くらいの間とみられているから、若干、早い方なのかもしれない。
もっとも、ここに住んでることで、密林で採ってくる餌を食べる以外にも食事をしてるから、やや成熟が早い可能性もある。
さすがに子供を生むにはまだ幼いとはいえ、これから徐々に、<成熟した雌のフェロモン>も発散するようになっていくだろう。
これで新の彼女を見る目が変わってくるのか否か、興味が持たれるところではある。
パパニアンは、基本的には雄が雌にアプローチすることで番うという形を取るものの、別に雌の方が雄を気に入って近付いていくという事例がないわけじゃない。昴を気に入った翠の方から接近していったように、麗と新のケースも、まあ、そういうことなんだろうな。
麗は、遊ぶ時は和や陽とでありつつ、二人と一緒に順に連れられて密林に入ったりもしつつ、それ以外はだいたい新にべったりだ。
彼女にとって新は、<命の恩人>で、しかもとても大事にしてくれる、大変な<優良物件>だろう。しかも、他のパパニアンとしては、自分のことを見ようともしないでパルディア(にそっくりなレオンの彩)と四六時中べったりの焔や、たまに好奇心に駆られて顔を出してくる誉の群れの子供達くらいだから、まあ、こうなるのも当然と言えば当然か。
が、実を言うと、最近、誉の群れの子供の雄の一人が、どうやら麗に気があるらしくて、ちょくちょく顔を出すようになっていた。
推定年齢は麗と同じく六歳くらいか。熱心に麗にアプローチを掛けるもののいかんせん彼女の方はまったく関心がない上に、その雄が近付いて来ようとすると一目散に逃げだしてしまうという有様。
しかも、そうやって麗が嫌がるとあれば、当然、新も黙ってはいないわけで、
「がぁーっっ!!」
と恐ろしい剣幕で襲い掛かって追い返してしまったりと、散々な目に遭っていた。
それでもその雄は諦めない。毎日顔を出しては麗にアピールするようになったんだ。
なのにやっぱり、麗は迷惑そうに冷めた視線を向けるだけで、ロクに彼の<求愛行動>を見ようともしない。それどころか、
『私はこの人が好きなの』
と言わんばかりに新に抱き付いて、彼に見せ付けようとする。
ただ、新の方は、嫌がってはいないものの彼女を雌と見做して愛してるようなそぶりは見せないので、それがまた、諦めがつかない原因になっているんだろう。
で、そうこうしている間に、麗が遂に<初潮>を迎えた。パパニアンの平均的な初潮年齢は六歳から八歳くらいの間とみられているから、若干、早い方なのかもしれない。
もっとも、ここに住んでることで、密林で採ってくる餌を食べる以外にも食事をしてるから、やや成熟が早い可能性もある。
さすがに子供を生むにはまだ幼いとはいえ、これから徐々に、<成熟した雌のフェロモン>も発散するようになっていくだろう。
これで新の彼女を見る目が変わってくるのか否か、興味が持たれるところではある。
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