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第三世代

麗編 文明の進歩の速度

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俺がやろうとしていることは果てしなく困難なことなのかもしれない。

しかし、現に、

<力で一方的に相手を従属させるという方法>

自体、成功していないじゃないか。それによって長期間安定的に社会を維持できているという事例は存在しない。

力と人柄を兼ね備えた<王>が平和を実現したとしても、その後を受け継いだ者が<力による支配><一方的な隷従>を求めたことで社会が不安定化。やがて内紛が生じて結果として、

<名前は同じだが中身はまるで別の国>

になってしまったという事例も少なくないはずだ。

人間は、安定や安寧を求めながらも、<一方的な従属>を押し付けられると反発せずにいられない生き物でもある。

それを知るからこそ、AIは決して人間の<上>に立とうとはせず、あくまで<道具>として、

『<人間による統治>を補助している』

だけに過ぎないんだ。そういう形になるように、徹底的に抑制的に使われている。

『AIに支配されている』

と受け取られないようにな。

が、それでも一部の人間には『AIが人間を支配している!』と受け取られてしまって、それが<AI・ロボット排斥主義>に繋がっているのも事実ではある。

とは言え、現在の統治手法が確立されてからだけでも約二千年。この原型が誕生してからなら三千年。<力による一方的な支配>が否定されてからなら三千五百年以上の間、多少の小競り合いなどはありつつも、一部には<AI・ロボット排斥主義者>なども生みつつも、人間の世界そのものの存続を危うくするような衝突は起こっていない。

文明の進歩の速度については、研究者の間などでは、

『十八世紀から二十五世紀にかけてのそれと、二十六世紀から六十世紀にかけてのそれを比較すると、前者の方が速い』

と言われていたりもするそうだ。

しかし、紀元前の文明でも、進歩そのものの速度は必ずしも早くなく、むしろ産業革命以降の、特に十八世紀から二十一世紀にかけてのそれが異常だったとさえ言えるんだろうな。

加えて、人間が思い付く限りの<便利さ>についてはほぼ実現されてしまっているから、別に急いで進歩する必要もなくなっているらしいし。

シモーヌ達が生きていた三十七世紀から三十八世紀にかけての技術と六十世紀現在の技術とでは、パッと見はそんなに変わっているように感じられなくても、付き合せて比較してみるとやっぱり圧倒的な差があることも事実だから、ゆっくりではあっても確実に進歩はしてるんだよ。

でも、自治権を得て中央政府から独立し、敢えて他の惑星との交流を断ち独自の路線を歩んでるところなんかでは、自力では文明の維持が難しくなっているところもあったりするという話も。

だから、『なるべく他の惑星とは交流しない』という建前は保ちつつも、何だかんだと技術の提供は受けてたりするそうだ。

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