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第三世代

ルコア編 急がば回れ

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俺も、それなりにドラマや映画という形でフィクションには触れてきたりもしたんだが、その中で<新入り>に対してやけに高圧的に、

『とにかく自分達のルールに従え!』

と一方的に押し付けて反発を招いて軋轢を生じさせる。みたいな展開があるのが、どうにもピンと来なくてな。

もちろん、その集団の一員になるならそこのルールには従うべきなんだろうが、その前にまず、そこにはどんなルールがあって、どんな理由でそのルールが設けられていて、それに従わない場合はどういう問題が生じるのかを丁寧に説明する者がどうしていないんだ?と思ってしまうんだ。

実際、会社でもなんでも、俺が知る限りじゃ、ロクに説明もせずに一方的に『従え!』なんてやるところは、はっきり言って『まともじゃない』という印象だったんだけどな。

まあ、分かってるよ。そんなのは作劇上の都合だっていうのはな。そうやって登場人物が苦労した果てに報われてってのが、話を盛り上げるには必要なんだろうなってことは。だから、それについてはケチをつけたことはない。ただ、

『どうしてこの世界にはそれをおかしいと思うのがいないんだろう?』

とは、正直、思ってしまうんだ。

普通は人間の<エルダー>と呼ばれる指導役がついて丁寧に対処するし、人間で適任者がいない場合には、メイトギアなどをエルダー役にして対処するんだ。

人間の場合は、『面倒臭い』だの『そこまでやってられるか!』だの甘えたことを言う者もいるが、ロボットであるメイトギアは、もちろん、そんな甘えたことは言わない。

その新人がきちんと理解するまで丁寧に何度でもしっかりと説明するし手本も示す。

そう。それもまたロボットの役目だ。

人間ならどうしても、

『面倒臭い』

『そこまでやってられるか!』

と思ってしまうようなことを、不満一つ口にせず、淡々と確実にこなすんだ。そうすることで、無駄な軋轢も生じさせず、人間関係も円滑に保たれる。

それは実際に確認され、実証されてきたことなんだが、フィクションではそういうのは、

『退屈だ』

として敬遠される傾向にあるらしい。

正直、俺にはよく分からない感覚だ。

そんなわけで俺は、『面倒臭い』とも言わないし、ましてや、

『この群れに加わるなら四の五の言わずに俺達に従え!』

なんて言うつもりもない。

俺自身が間違いなく反感を覚えるようなやり方が上手くいくと信じることもできない。

力尽くで従えようとすれば、最初は上手くいったとしてもいずれ力関係が逆転した時点で必ずと言っていいほどの確率で破綻することは分かっている。

『急がば回れ』

ってのは、こういう場合にも当てはまるんだろうな。

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