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幸せ

私の判断ミスだ(いや、そうじゃないよ)

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じゅんボクサー竜ボクサーと戦って怪我をしたということで、俺達は緊張していた。

一刻を争うような深刻な状況ではないらしいとはいえ、必ずしも軽いものでもないみたいだからな。

じゅん! 家についたから! もう大丈夫だからね……!」

一時間ほどして帰ってきた時、イレーネに背負われて運ばれるじゅんに、ひかりが声を掛ける。普段の、冷淡なくらいに落ち着いた彼女からは想像もつかないような慌てぶりだった。

最初は、数少ない自分と同じ境遇の男性オスだったから、雌としてのある種の義務感、いや、本能だろうか?で彼をパートナー候補と見做していたものの、家族同然に一緒に暮らし、面倒を見ているうちに、人間としても情が湧いてきたんだろうな。

なにしろ、姉のように母のようにじゅんの面倒を見てきたんだから。

正直、異性としてと言うよりは、それこそ弟や息子のように思っているという感じかもしれない。

ひかり、後はセシリアに任せよう」

治療カプセルの準備を済ませて待機していたセシリアが、手際よくじゅんをカプセルに寝かせ、治療開始のスイッチを押した。後は治療用ナノマシンに任せるしかない。

じゅん……」

治療用カプセルの中で眠るじゅんを、ひかりは泣きそうな目で見てた。滅多に見られない彼女の姿だった。

「お姉ちゃん……」

あかりがまたそんなひかりを心配そうに見詰める。じゅんのことももちろん心配だが、狼狽える姉のことが心配なんだろう。

「大丈夫だ。それにもう待ってるしかできないしな」

そうだ。医学的な知識に乏しい俺達は、治療用ナノマシンを信じて任せるほかにできることが何もないんだ。

それに、治療用ナノマシンの性能については、ふくとの大ゲンカで重傷を負ったひそかを治療した時もそうだし、それ以上に、ワニ人間クロコディアに襲われてちぎれかけたシモーヌの腕まで、傷痕は残ったものの後遺症もなく治してくれたくらいだから、それこそ折り紙付きだ。

ひかりも、頭では分かってるんだろうが、だからと言ってそうそう割り切ってもしまえないのが人間というものだな。

「お父さん、ごめんなさい。私の判断ミスだ……」

うなだれるひかりの姿は、まるで叱られて小さくなってる幼い子供のようにさえ見えた。それはたぶん、俺にとってはこの子が<娘>だというのもあるんだろう。彼女自身はもう立派に<大人>なんだが、親からすれば子供はいつまでたっても子供ってことなんだろうな。

よく言われることだが、自分が親になって、子供がこうして大きくなって、それでようやくその意味が実感できた気がするよ。

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