417 / 2,387
幸せ
私の判断ミスだ(いや、そうじゃないよ)
しおりを挟む
順がボクサー竜と戦って怪我をしたということで、俺達は緊張していた。
一刻を争うような深刻な状況ではないらしいとはいえ、必ずしも軽いものでもないみたいだからな。
「順! 家についたから! もう大丈夫だからね……!」
一時間ほどして帰ってきた時、イレーネに背負われて運ばれる順に、光が声を掛ける。普段の、冷淡なくらいに落ち着いた彼女からは想像もつかないような慌てぶりだった。
最初は、数少ない自分と同じ境遇の男性だったから、雌としてのある種の義務感、いや、本能だろうか?で彼をパートナー候補と見做していたものの、家族同然に一緒に暮らし、面倒を見ているうちに、人間としても情が湧いてきたんだろうな。
なにしろ、姉のように母のように順の面倒を見てきたんだから。
正直、異性としてと言うよりは、それこそ弟や息子のように思っているという感じかもしれない。
「光、後はセシリアに任せよう」
治療カプセルの準備を済ませて待機していたセシリアが、手際よく順をカプセルに寝かせ、治療開始のスイッチを押した。後は治療用ナノマシンに任せるしかない。
「順……」
治療用カプセルの中で眠る順を、光は泣きそうな目で見てた。滅多に見られない彼女の姿だった。
「お姉ちゃん……」
灯がまたそんな光を心配そうに見詰める。順のことももちろん心配だが、狼狽える姉のことが心配なんだろう。
「大丈夫だ。それにもう待ってるしかできないしな」
そうだ。医学的な知識に乏しい俺達は、治療用ナノマシンを信じて任せるほかにできることが何もないんだ。
それに、治療用ナノマシンの性能については、伏との大ゲンカで重傷を負った密を治療した時もそうだし、それ以上に、ワニ人間に襲われてちぎれかけたシモーヌの腕まで、傷痕は残ったものの後遺症もなく治してくれたくらいだから、それこそ折り紙付きだ。
光も、頭では分かってるんだろうが、だからと言ってそうそう割り切ってもしまえないのが人間というものだな。
「お父さん、ごめんなさい。私の判断ミスだ……」
うなだれる光の姿は、まるで叱られて小さくなってる幼い子供のようにさえ見えた。それはたぶん、俺にとってはこの子が<娘>だというのもあるんだろう。彼女自身はもう立派に<大人>なんだが、親からすれば子供はいつまでたっても子供ってことなんだろうな。
よく言われることだが、自分が親になって、子供がこうして大きくなって、それでようやくその意味が実感できた気がするよ。
一刻を争うような深刻な状況ではないらしいとはいえ、必ずしも軽いものでもないみたいだからな。
「順! 家についたから! もう大丈夫だからね……!」
一時間ほどして帰ってきた時、イレーネに背負われて運ばれる順に、光が声を掛ける。普段の、冷淡なくらいに落ち着いた彼女からは想像もつかないような慌てぶりだった。
最初は、数少ない自分と同じ境遇の男性だったから、雌としてのある種の義務感、いや、本能だろうか?で彼をパートナー候補と見做していたものの、家族同然に一緒に暮らし、面倒を見ているうちに、人間としても情が湧いてきたんだろうな。
なにしろ、姉のように母のように順の面倒を見てきたんだから。
正直、異性としてと言うよりは、それこそ弟や息子のように思っているという感じかもしれない。
「光、後はセシリアに任せよう」
治療カプセルの準備を済ませて待機していたセシリアが、手際よく順をカプセルに寝かせ、治療開始のスイッチを押した。後は治療用ナノマシンに任せるしかない。
「順……」
治療用カプセルの中で眠る順を、光は泣きそうな目で見てた。滅多に見られない彼女の姿だった。
「お姉ちゃん……」
灯がまたそんな光を心配そうに見詰める。順のことももちろん心配だが、狼狽える姉のことが心配なんだろう。
「大丈夫だ。それにもう待ってるしかできないしな」
そうだ。医学的な知識に乏しい俺達は、治療用ナノマシンを信じて任せるほかにできることが何もないんだ。
それに、治療用ナノマシンの性能については、伏との大ゲンカで重傷を負った密を治療した時もそうだし、それ以上に、ワニ人間に襲われてちぎれかけたシモーヌの腕まで、傷痕は残ったものの後遺症もなく治してくれたくらいだから、それこそ折り紙付きだ。
光も、頭では分かってるんだろうが、だからと言ってそうそう割り切ってもしまえないのが人間というものだな。
「お父さん、ごめんなさい。私の判断ミスだ……」
うなだれる光の姿は、まるで叱られて小さくなってる幼い子供のようにさえ見えた。それはたぶん、俺にとってはこの子が<娘>だというのもあるんだろう。彼女自身はもう立派に<大人>なんだが、親からすれば子供はいつまでたっても子供ってことなんだろうな。
よく言われることだが、自分が親になって、子供がこうして大きくなって、それでようやくその意味が実感できた気がするよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
163
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる