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幸せ

間が悪かっただけだ(誰の所為でもない)

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「お茶が入りました」

治療用カプセルの中で眠るじゅんを見守っていた俺とひかりあかりとシモーヌに、セシリアが紅茶を用意してくれた。

それをいただきつつ、ひかりが改めて状況を説明してくれる。

「今日も、私達はいつも通りに調査をしてただけだったんだ。じゅんのこともあかりが面倒見てくれてたから何も心配してなかった。だからって別に油断してるつもりもなかった。

カマキリ人間マンティアンが接近してるってことでイレーネが対処に向かった時も、重大な脅威が周囲にいないことはちゃんと確認してた。ボクサー竜ボクサーの群れが近くにいたのは分かってたけど、今の装備なら十分に対処できる筈だった。

だけど私、じゅんがどれだけ私のことを、大切に想ってくれてるか、ちゃんと理解できてなかったんだって分かった……

じゅんは、私を守ろうとしてくれたんだ……」

普段のひかりからは想像もつかないほどに饒舌に語る姿が、彼女の心情を物語ってる気もした。

カマキリ人間マンティアンを追い払ったイレーネが戻ってくるより早く、ボクサー竜ボクサーの群れから斥候が近付いてきたのが分かったから、私はスタン(グレネード)で追い払おうとした。でも、それは不発で、仕方ないから銃で追い払おうとした時に、じゅんが飛び出してきて、それで……」

そこまで言ったところで声が詰まってしまったのか、ひかりは黙ってしまった。

「そうか……よく分かったよ。だが、それはひかりの所為じゃない。もちろん無謀なことをしたじゅんが悪いわけでも、じゅんを抑えておけなかったあかりが悪いわけでもない。

なにしろ、合理的に考えればひかりの能力と装備があれば問題なかったんだからな。たまたまその時に持ってたスタングレネードが不発で、あかりじゅんを止めるのが間に合わなかっただけだろう?

言うなれば『間が悪かった』だけだ。いつも通りなら何も問題なかったはずがそうじゃなかった。人生にはこういうこともある。

次からは、イレーネが少しでも離れる時はローバーに戻るようにしたらいいだけだ。もし誰かに責任があるとしたら、そういう時の想定が甘かった俺の責任だ。すまん」

そう言って俺は深々と頭を下げた。

こういう時、既に後悔して反省しているひかりを責めたところで意味はないと俺は思ってる。もしこれが、後悔も反省もしてないようなら、どこに問題があったのか具体的に指摘してやらないといけないかもしれないが、ひかりは頭のいい子だから、そういうことも自分で気が付くだろう。

だから俺は、彼女が自分自身を責めすぎないようにしてやればいいんだろうと思うんだ。

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