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幸せ

雷という個体(やることがいちいち小さい)

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そんな訳で、メイフェアには『我が子をハラハラしながら見守る母親』的な役割を演じてもらいつつ、ほまれを見守ってもらう。

それに、メイフェアに何もかも手助けしてもらわなくてもあいつは立派にやってるよ。最初は下っ端の兵隊として使われる立場だったのが、何人もの若いボノボ人間パパニアンを従えて偵察に出たり、斥候を命じたりもしてる。

引き締まった横顔は、すっかり<男>のそれだ。そのくせ優しいから、子供や雌には人気がある。

それに対してらいはいかにも腕っぷし自慢の力強いタイプで、やや強引な様子が垣間見える。それでいて、ほまれが寛いでると木の実の食べかすを投げつけたり、いきなり飛び蹴りを食らわしたり、なるほどやることがいちいち小さい。

いや、別にらいがことさらみみっちいことをしてるという訳じゃない。群れの中での小競り合いという点では普通の行為だ。しかしほまれがいちいちそういう挑発には乗らず、堂々と振る舞ってるから余計に小さく見えるんだな。

しかも、子供や雌に対しても理不尽なことをしないほまれに比べて、らいは、ちょっと気に入らないことがあると、相手が小さな子供でも蹴ったり叩いたり突き飛ばしたりと乱暴だ。

まあ、これ自体は野生の中で生きる上で序列をはっきりさせる為には必要なことという一面もあるんだろう。人間ほどはそういうことを<恨み>として引きずらないから成立してるんだろうな。

これが人間の場合、<恨み>って形でいつまでも記憶に残ったりして、歳を取ってから同じ扱いをやり返されたりもするものの、ボノボ人間パパニアンは基本的によっぽどでない限りあまりいつまでもそういうことに拘らない傾向があるみたいで、と言うか、日常そのものが死と隣り合わせだからいちいち拘ってる余裕もないこともあるだろうから人間社会ほどは大きな問題にならないようだ。

が、かといってそんなことをされて嬉しい訳でもないのは当然で、その手の理不尽な真似をしてこないほまれが好かれるのは当然と言えば当然か。

さりとて、らいはそれがまた面白くない。だからほまれに嫌がらせのような真似をする。それがまた子供や雌から不評を買って人気を下げるという悪循環に陥ってるようだな。

人間ならその辺りを客観的に捉えて自らを改めていくこともできたりするものの、らいにはそれはできないようだ。一方でほまれにはある程度のそれができる。人間の下で育てられたことが影響してるのかもしれない。

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