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幸せ

別行動(倦怠期ってやつかな)

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新暦〇〇二二年八月十八日。



そんなことがあって以降、あらたりんの関係がぎくしゃくし始めた気がする。

と言うか、そもそも別行動をとるようになってしまったんだ。それまでは、どこに行くにも一緒だったのに。

「倦怠期ってやつかな」

家にいても目も合わせようとしない二人に、俺は思わずシモーヌに問い掛けていた。

「かもしれませんね。それまで仲が良かっただけに反動が大きいのかも」

さらにひかりあかりにも問い掛けてみる。

「どう思う?」

「…歯車が噛み合わなくなったのは確かだと思う」

と、自分にピッタリとくっついてるじゅんの頭を優しく撫でながらひかりが応える。続けて、

「なんかさ~、<見解の相違>みたいのがあるみたいなんだよね」

あかり

「見解の相違?」

意味深な言葉に聞き返してしまう。

「うん。りんは子供が欲しいけど、あらたは『仲良くしてられたらいいじゃん』的な考え方みたいなんだよね」

「って、そうなのか?」

今度はエレクシアに確認を求める。彼女はボノボ人間パパニアンだけじゃなく他の種族の言語もある程度は解析できてるらしいから。ちなみにひかりあかりも感覚的に通じてるようだ。さすがに一緒に育ってきただけはある。

「はい。おおよそそうだと推測できるやり取りがあったのは事実です。ですがこれについては当事者間の問題ですので、私が口を差し挟む訳にもまいりません」

「…やっぱりあるんだな。あいつらにもそういうのが」

妙に納得してしまって、でもだからこそふと気になってしまった。

「じゃあ、ほむらさいはどうなんだ?」

その質問には、ひかりが答えてくれた。

ほむらさいは、今のところ、二人ともその辺りの考え方には食い違いはないみたい。二人とも、『できたら欲しいけど』くらいに思ってる感じかな」

「う~む。もっと本能的に子供を求めるものかと思ってたが、意外と冷静に考えてるものなんだな」

俺が呟くと、今度はあかりが、

「そりゃそうだよ。私達の<家族>だよ? 他のボノボ人間パパニアンとかの言ってることなんて全然分からないくらい、考え方が違うもん」

と。それをひかりが補足する。

「私も、お母さんが言ってることは分かるけど、お母さんの元の仲間達の言ってることは、正直、半分も分からない。その辺りはエレクシアの方が詳しいと思う」

『お母さん』というのは、もちろんひそかのことだ。人間ほど体系化された明確な言語がある訳じゃない分、状況が変わると結構変化してしまうものらしい。だから、今ではひそかは元の仲間とはコミュニケーションを取るのが難しくなってるそうだ。

そして、ボノボ人間パパニアンの社会に戻ったほまれはともかく、ほむらあらたのそれもかなり違ってしまってるのだと、エレクシアが説明してくれた。

いわば、『訛りがひどくなってる状態』って感じか。

もっとも、人間の言語ほどは複雑じゃないから、しばらく一緒に行動すればまた影響を受けていずれ通じるようにはなるらしいが。

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