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幸せ

愛されてる実感(だから余裕が持てる)

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新暦〇〇二二年七月二十四日。



今日はチームBブラボーが調査に行ってるから、俺は池で釣り糸をたらしながらやっぱりあれこれ考える。

自分の気持ちを相手に一方的に押し付けることを<愛>だと思ってる人間は、恐らく、『それが愛だ』と思い込まされてるんじゃないだろうかと今じゃ思う。

身近な人間。例えば<親>に。

『こんなに愛してやってるんだから、ありがたがれ、信頼しろ、尊敬しろ。そうするのが当たり前だ』

的に接していられたら、

『自分の気持ちを一方的に押し付けることこそが<愛>』

みたいな勘違いをしてしまうんじゃないだろうか。

という気が、今はするんだ。

それが当たってるかどうかはもう確かめようもないが、そう考えると、ストーカーとかが、

『自分がこんなに愛しているのに…!』

ってな感じで自分の気持ちを一方的に押し付けてくる理由も分かってしまう気がするんだよな。

『自分の気持ちを一方的に押し付け、相手が応えてくれるのが当たり前。なぜならそれは愛だから』

とかいう形で学び取ってしまってる気がする。誰かから。

俺は、ひかりあかりにそうなってもらいたくなかった。だから、俺が両親やひそか達から感じたものを子供達にも向けるようにした。その結果が今、出てるんだろうな。

そして俺は今、それをじゅんにも向けている。あいつがここにいることを受け入れて、あいつが俺達とは『違う』という事実を受け入れてる。俺達の思い通りにならない事実を受け入れてる。

だから、釣竿で池を叩いていても怒鳴ったりしないんだ。

あいつは、悪意で邪魔をしようとしてるんじゃない。あいつなりに自分のしていることの意味を知ろうとしたんだろう。『魚が釣れる』という結果が得られなかったことで、竿の使い方が正しくないと感じたのかもしれない。手にした棒で水を叩くことで何かが得られると思ったのかもしれない。

それが好意的に解釈しすぎてるのだとしても、構わない。今の俺にはそれがもし間違っていたとしても気にしないでいられるだけの精神的な余裕がある。愛されてる実感があるからこその余裕だろうな。

じゅんは、ボノボ人間パパニアンとしてはもう一人前なんだとしても、その知能そのものはたぶん三歳児からせいぜい五歳児並みだろう。だとすれば俺達の<常識>が理解できないとしても無理はない。それを理解できるだけの能力がそもそも備わっていないんだ。

今後、もし、多少でも知能が上がるなら、多少は理解できるようになってくれる可能性はある。しかし現時点ではそれはない。その事実を認める余裕があるんだから、無理にあいつを力尽くで捩じ伏せて従わせる必要もない。

むしろ、下手に強引なことをしてあいつに恨まれたりする方がよっぽど残念だからな。

そういうのを<甘やかし>と受け取る人間もいるだろうが、それはじゅんと実際に向かい合っていない人間の推測に過ぎない。

あの子の表情や仕草を見て確かめながら実際に対処することになるのは、俺達なんだ。

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