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シモーヌ

思い出話 密 その1

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という訳で、<孫ラッシュ>が始まる前に、一度、改めて家族の一人一人についてしっかりと振り返ってみたいと思った。

もちろんシモーヌが思い出したという不定形生物内での記憶とかについてもしっかり検証しないといけないとは思うが、今は正直、俺にとっては手に余る話なので、もう少し時間をおいてゆっくりと考えたい。で、気持ちを落ち着ける為にも、家族一人一人のことを把握し直したいんだ。

出逢いの経緯とかについてはさすがに割愛するが、これまでドタバタしててあまり触れてこなかったそれぞれの家族のことについて思い出しながら語っていこうと思う。

で、最初は当然、ひそかについてだよな。



ひそかは、エレクシアを除いた俺の<嫁>の中では一番、あざといくらいに可愛いタイプだっただろうな。真っ白でモフモフな毛に包まれ、クリっとした大きな瞳で真っ直ぐに俺を見詰めてくる様子とか、『どこのアニメキャラだよ!?』と正直思ってたりもした。

もちろん野生動物でもあるから非常に残酷で容赦ない一面も持ち合わせているが、甘える時は全身全霊で甘えてくる。そこには演技も打算もない。ただただ甘えたいから甘えてくるんだ。最初は心のどこかでは距離を置いて自分を抑えてたものの、エレクシアに尻を叩かれたのがきっかけになったというのもあっても、彼女を受け入れることになってたのは時間の問題だったのかもしれない。

俺が彼女を『身も心も』受け入れるようになるまでの間でも、ひそかは俺を慕ってくれてたと思う。最初は興味本位のただの好奇心からだったとしても、俺が頭を撫でたりするとすごく嬉しそうにしてたんだ。

それは俺を本当に癒してくれた。俺が正気を保っていられたのは彼女のおかげもあるのは間違いないだろう。だからすごく感謝している。

じんとも出会ったばかりで、俺を間に挟んでお互いに警戒しながら睨み合ってた頃、何度か彼女は俺に密林の中から採ってきたらしい果実を渡してくれた。ボスへの貢物ということだったんだろう。一部、俺には食べられないものもあったが、食べられるものについては美味しくいただいた。食べられないものについては返礼という形で彼女に返した。そうして一緒に食べたりもしたんだ。するとひそかは嬉しそうに表情を和らげていた。

彼女らは、人間のような笑い方はできないらしい。表情筋とかは人間と変わりないので作ろうと思えば笑顔も作れる筈だが、野性として暮らすうちにそういうメンタルを失ってしまっていたんだろう。それでも、穏やかな時、心地好い時には柔和な顔もしてみせる。それがまた可愛かったんだよなあ。

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