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シモーヌ
VS(とは言え少々不利な条件ではある)
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メイフェアのカメラに捉えられたそれは、河の中に体を半分沈めて、しかし必死に何かから逃げようとしてる女性の姿だった。透明な体を持った、そして、あのグンタイ竜の女王そっくりの、秋嶋シモーヌそのものの姿の。
それを見たメイフェアが何を思ったのか、俺には分からない。あれこれ想像はできるが、本当のところは分からない。ただとにかく彼女はその時、自身の能力のすべてを使ってその女性を助けようとしたんだろうなってことが分かるだけだ。
だが同時に、俺はまた別のものが映っていることにも気付いていた。
「來…!?」
思わず漏れたその言葉通り、來だった。來が秋嶋シモーヌを背にして身構えていたのだ。彼女を何かから守ろうとするかのように。
そんな來の前に飛び出してきたのは、他のワニ人間だった。あいつは、ワニ人間に襲われそうになっている秋嶋シモーヌを守っていたのだ。
來に飛び掛かろうとするワニ人間目掛けてメイフェアが落ちていく。次の瞬間、ザーン!と水中に飛び込み、何が何だか分からなくなってしまった。
カメラを現場に駆けつけたドローンのものに切り替えると、這いずるようにして岸に上がる秋嶋シモーヌと、それを支える來の姿が確認できた。河の中では何かがバシャバシャと暴れているのが分かる。恐らくメイフェアと複数のワニ人間が戦っているのだろう。
いくら要人警護仕様のメイトギアと言えど、防水自体は完璧でも水中での戦闘は必ずしも得意じゃない。とは言え、相手が人間のテロリストなどであれば、当然、向こうも本来は水中で活動するような生き物じゃないのだから条件は同じだ。しかし、ワニ人間は違う。彼らは水中こそが本来のフィールドであり、それに最適化された肉体を持つ。太い尻尾はヒレの役目もして、イルカのような水中運動性を発揮する、容易ならざる相手だった。
もっとも、ワニ人間の攻撃そのものは、メイトギアには有効とは言えないが。
なので、濁った水中での戦いは文字通りの<泥仕合>だった。水中で使うことはあまり想定されてないメイフェアのセンサー類は本来の性能を発揮できず、飛び掛かってきたワニ人間を捉えては投げ飛ばす程度のことしかできなかった。まったく手加減せず殺してしまえばいいのならまだやりようもあるものの、原則、殺さないように改めて指示したからな。
俺はメイフェアの<主人>じゃないが、人間の指示は基本的に尊重するのがロボットだ。秋嶋シモーヌが無事に河から離脱し安全を確保するまで足止めできればいいだけなので、そういうやり方になったのだった。
それを見たメイフェアが何を思ったのか、俺には分からない。あれこれ想像はできるが、本当のところは分からない。ただとにかく彼女はその時、自身の能力のすべてを使ってその女性を助けようとしたんだろうなってことが分かるだけだ。
だが同時に、俺はまた別のものが映っていることにも気付いていた。
「來…!?」
思わず漏れたその言葉通り、來だった。來が秋嶋シモーヌを背にして身構えていたのだ。彼女を何かから守ろうとするかのように。
そんな來の前に飛び出してきたのは、他のワニ人間だった。あいつは、ワニ人間に襲われそうになっている秋嶋シモーヌを守っていたのだ。
來に飛び掛かろうとするワニ人間目掛けてメイフェアが落ちていく。次の瞬間、ザーン!と水中に飛び込み、何が何だか分からなくなってしまった。
カメラを現場に駆けつけたドローンのものに切り替えると、這いずるようにして岸に上がる秋嶋シモーヌと、それを支える來の姿が確認できた。河の中では何かがバシャバシャと暴れているのが分かる。恐らくメイフェアと複数のワニ人間が戦っているのだろう。
いくら要人警護仕様のメイトギアと言えど、防水自体は完璧でも水中での戦闘は必ずしも得意じゃない。とは言え、相手が人間のテロリストなどであれば、当然、向こうも本来は水中で活動するような生き物じゃないのだから条件は同じだ。しかし、ワニ人間は違う。彼らは水中こそが本来のフィールドであり、それに最適化された肉体を持つ。太い尻尾はヒレの役目もして、イルカのような水中運動性を発揮する、容易ならざる相手だった。
もっとも、ワニ人間の攻撃そのものは、メイトギアには有効とは言えないが。
なので、濁った水中での戦いは文字通りの<泥仕合>だった。水中で使うことはあまり想定されてないメイフェアのセンサー類は本来の性能を発揮できず、飛び掛かってきたワニ人間を捉えては投げ飛ばす程度のことしかできなかった。まったく手加減せず殺してしまえばいいのならまだやりようもあるものの、原則、殺さないように改めて指示したからな。
俺はメイフェアの<主人>じゃないが、人間の指示は基本的に尊重するのがロボットだ。秋嶋シモーヌが無事に河から離脱し安全を確保するまで足止めできればいいだけなので、そういうやり方になったのだった。
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