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シモーヌ

カミナリ怖い(まあ、仕方ないか)

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雷雨の峠は過ぎつつあるようだったが、俺が宇宙船の方に移動しようとすると、ひそか達も全員、いや、セシリアは除いてだが、慌てて逃げ込んでいった。あの中が一番安全だと本能的に察しているらしい。

確かに、多少のスペースデブリの衝突など表面の衝撃吸収層で受け止め、戦車砲さえ通用しない外殻を持つ宇宙船の中は、おそらくこの惑星の中で最も安全だろう。宇宙空間を安全に、かつ、地上で自動車を走らせるくらいに気軽に航行できるように堅牢に進化した宇宙船を破壊できるのは、基本的に、圧着熱反応弾を装填した電磁加速質量砲レールガンくらいのものだ。一時期、武器として主流になりつつあった荷電粒子砲とかは、熱を拡散し加速された粒子も電気的に偏向させて威力を減衰させる形の対策が進んでしまって、今ではもうすっかり廃れてしまったらしい。で結局、重くて硬いものを超スピードでぶつけるタイプの武器に戻ってきてしまったと。

その中でも、圧着熱反応弾は、衝撃吸収層と反応して溶解させる化学物質が充填され、かつ着弾時の熱でプラズマ化した金属を高圧高速で噴射してシールドを無効化するというものだそうだが、それを、強力なものになれば秒速三十キロまで加速して撃ち出し、物質であればおよそ何でも破壊できるとも言われる凶悪な武器である。まあ、そんなものを装備してるのは、ガッチガチの軍用戦闘艦だけみたいだけどな。

そもそも宇宙船を攻撃すること自体が、終身刑レベルの凶悪犯罪扱いだし、心底いかれたテロリストでもない限りそんなことをするバカもいない。

と、何気にエレクシアから聞いたウンチクをそのまま語ってみただけだが、まあ、こういう場合はとにかく宇宙船に逃げ込むに限るというのは真っ当な判断だと分かると思う。

などと、こっちのことは別にいいんだ。余談が過ぎた。それより問題はあの助けを求める声の主のことだよ。

家族そろって宇宙船の中に避難していささか窮屈になりながらも、俺はタブレットでメイフェアとエレクシアの様子を確認した。すると、メイフェアから送られてきた彼女のカメラが捉えた映像に、河が見えた。

そしてその瞬間、ズームしたそこに、信じられないものが映っていたのだ。

秋嶋あきしまシモーヌ…!?」

そう、そこに映っていたのは、あのグンタイ竜グンタイの女王と瓜二つ…いや、あれは完全に怪物的なそれだったが、今度はそれとはまったく違う、確かに人間の姿をした、しかし透明な体をもつ<女性>であった。

しかも全裸の。

訳の分からない光景だったが、激しい落雷の後に現れた透明な体を持ったそれはもう、あの不定形生物由来のものだと考えるしかなかったのだった。

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