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一緒に買い物に行くか?

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「一緒に買い物に行くか? ホムセンだけど」
「はい…!」
 結人ゆうとに問い掛けられた琴美は二つ返事で応えた。その時の表情も、<普通の女の子>のそれだっただろう。
『まともな両親の下に生まれていればそういう感じだったに違いない』
 という。
『やれやれ……』
 そんな妹の様子に一真は内心では苦笑いしていた。その一方で、
『ホントはこれが当たり前だったんだろうな……』
 なんて風にも思ってしまう。それが胸に痛い。
 ともあれ、琴美が喜んでいるなら是非もなく、三人でホームセンターへと向かう。
「取り敢えず予算は十万だな。でも、まずはカーテンでも吊るそうぜ。部屋が寒々しい。あと、炬燵の下に敷くラグだな。フローリングのままじゃ床に熱を奪われるばかりで電気代の無駄になる」
 結人も、命の恩人でもある女性の下で暮らしていたものの生活は必ずしも楽ではなかったので、経済観念は養われている。もっとも、かなり『緊縮財政寄り』ではあるが。
 さりとて、この時ばかりは敢えて気を大きく持つことを心掛けていた。
 そうして三人はまずカーテン売り場に向かうが、一真も琴美もどんなものを買えばいいのかすら分からない。いくつものカーテンの見本が並んでいるそこで戸惑うだけだった。
 そんな二人を見て、結人が、
「しょうがないな。今回は俺が選んどくからよ。気に入らなかったらそん時は自分達で好きなのを選んだらいい。で、買うのはレースカーテンと遮光カーテンの二種類。レースカーテンは外からの目隠しになりつつ光を取り入れるヤツ。遮光カーテンはその名の通り、外からの光を遮るヤツ。寝坊したい時なんかにはこれを閉めときゃまぶしくて目が覚めることがない。そんな感じだ。ついでに遮光カーテンはある程度の断熱性能があるのを選んどきゃ、冷暖房費の節約にもなる。窓からの熱気や冷気は割とバカにならねえからな」
 言いながら、ベランダに出るための掃き出し窓にもなっている窓用のレースカーテンと遮光カーテンを見繕った。色はあたたかみを感じさせるオレンジ寄りの黄色だった。
 それらをカートに入れ、次はラグ及びカーペット売り場に。すると一真が、<ユニット畳>に目を止めて。気付いた結人がまた、
「ん? やっぱ畳がいいのか?」
 と尋ねた。それに一真は、
「ああ……前の部屋が畳だったから。フローリングだとちょっと落ち着かないかなと思って……」
 正直に答える。
「分かるぜ。俺も自分の部屋の半分はユニット畳ってのを敷いてるんだ。そのまま寝っ転がれるしな」
 そう言いながら結人は、ユニット畳を躊躇なく、大型商品を乗せるための専用カートを持ってきて乗せていったのだった。

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