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3話「グリゼルダからの贈り物」
しおりを挟むナヨタ子爵夫妻はきっと、幼馴染で子爵令嬢の冴えない私よりも、美人でお金もちな伯爵令嬢のグリゼルダと結婚させた方が、自分たちの利益になると思っているのでしょうね。
中等部二学年の年度末パーティーが迫ったある日、グリゼルダが自宅にプレゼントを贈ってきたわ。
「お茶会に招いておきながらおもてなしできなかったお詫びです。
お受け取り下さい。
プレゼントしたドレスは必ずパーティーに身に着けてきて下さいね」
プレゼントにはそう書かれたメッセージカードが添えられていたわ。
グリゼルダから贈られてきたのは、どどめ色のリボンとドレスだったわ。
私は新手の嫌がらせかと思って、うんざりしたわ。
しかもドレスは胸元部分が大きく開き、足に大きなスリットが入った品のないデザインだったの。
こういうドレスは、長身でメリハリのあるナイスバディーのグリゼルダには似合うのでしょうが、私のようなスレンダーな体型の人間には似合わないわ。
それでも上位貴族からのプレゼントを無下にはできず、パーティー当日そのリボンとドレスを身につけることにしたわ。
ご丁寧にもグリゼルダは、我が家に使用人を派遣し、彼女たちに私のドレスの着付けをさせたの。
ベッヒャー伯爵家の使用人によって、私は髪を縦巻きロールにされ、厚化粧を施され、髪にどどめ色のリボンを結ばれ、同じ色のドレスを着せられたわ。
そして、彼女たちに連行されるように伯爵家の馬車に載せられ、パーティー会場に運ばれたわ。
彼女たちは私が会場に入るまで、私の側を離れなかったの。
彼女たちは何が何でも、私をこの格好でパーティーに参加させたかったみたい。
私が会場に入ると、室内がどよめいたわ。
皆が私を見て眉をひそめ小声で話しているの。
「何あのドレス? 似合ってると思ってるの?」
「グリゼルダの猿真似かよ」
「まるでグリゼルダの不気味なコピーだな」
生徒たちがひそひそと囁いていたわ。
私は居心地が悪くて、会場の隅に移動しようとしたの。
そのとき、コニーにエスコートされたグリゼルダが私の目の前に現れたわ。
グリゼルダの姿を見て、なぜ人々が私を見て、眉を潜めたのか原因がわかったわ。
グリゼルダは、私と全く同じデザインのドレスを身に着けていたの。
ただしドレスの色だけは違ったわ。
私のドレスはどどめ色、グリゼルダのドレスは真紅。
グリゼルダの派手な顔立ちには、縦巻きロールも、真っ赤なリボンも似合っていたわ。
メリハリのある彼女の体には、胸元の開いたドレスもよく映えていた。
私は地味な顔に似合わない厚化粧を施され、茶色の髪を縦ロールにされ、体型に合わないどどめ色のドレスを纏っていて……ここにいるのが死ぬほど恥ずかしかったわ。
お願い、みんな私を見ないで……!
私だって好きでこんな格好をしている訳じゃないのよ!
私はそう叫んで、この場から逃げ出したかった。
コニーが私の前に立ち、蔑むように目で私を見たの。
「まるでグリゼルダの劣化コピーだな」
そして、彼はそう冷たく言い放ったわ。
「先日、アリーゼ様にパーティーで着るドレスをどこに注文したのか、誰にデザインさせたのか、質問攻めにされましたわ。
やたらとドレスのデザインについて尋ねてくるので、おかしいと思っていたのですわ。
彼女は、私の真似っ子をしたかったんですのね。
アリーゼ様、ご自分のなさっていることを恥ずかしくないとは思わないのかしら?」
グリゼルダが私を見てそう言ったのでした。
彼女は悲しそうな顔をしていましたが、口元が上がっていました。
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