上 下
3 / 9

3話「グリゼルダからの贈り物」

しおりを挟む

ナヨタ子爵夫妻はきっと、幼馴染で子爵令嬢の冴えない私よりも、美人でお金もちな伯爵令嬢のグリゼルダと結婚させた方が、自分たちの利益になると思っているのでしょうね。








中等部二学年の年度末パーティーが迫ったある日、グリゼルダが自宅にプレゼントを贈ってきたわ。

「お茶会に招いておきながらおもてなしできなかったお詫びです。
 お受け取り下さい。
 プレゼントしたドレスは必ずパーティーに身に着けてきて下さいね」

プレゼントにはそう書かれたメッセージカードが添えられていたわ。

グリゼルダから贈られてきたのは、どどめ色のリボンとドレスだったわ。

私は新手の嫌がらせかと思って、うんざりしたわ。

しかもドレスは胸元部分が大きく開き、足に大きなスリットが入った品のないデザインだったの。

こういうドレスは、長身でメリハリのあるナイスバディーのグリゼルダには似合うのでしょうが、私のようなスレンダーな体型の人間には似合わないわ。

それでも上位貴族からのプレゼントを無下にはできず、パーティー当日そのリボンとドレスを身につけることにしたわ。

ご丁寧にもグリゼルダは、我が家に使用人を派遣し、彼女たちに私のドレスの着付けをさせたの。

ベッヒャー伯爵家の使用人によって、私は髪を縦巻きロールにされ、厚化粧を施され、髪にどどめ色のリボンを結ばれ、同じ色のドレスを着せられたわ。

そして、彼女たちに連行されるように伯爵家の馬車に載せられ、パーティー会場に運ばれたわ。

彼女たちは私が会場に入るまで、私の側を離れなかったの。

彼女たちは何が何でも、私をこの格好でパーティーに参加させたかったみたい。

私が会場に入ると、室内がどよめいたわ。

皆が私を見て眉をひそめ小声で話しているの。

「何あのドレス? 似合ってると思ってるの?」
「グリゼルダの猿真似かよ」
「まるでグリゼルダの不気味なコピーだな」

生徒たちがひそひそと囁いていたわ。

私は居心地が悪くて、会場の隅に移動しようとしたの。

そのとき、コニーにエスコートされたグリゼルダが私の目の前に現れたわ。

グリゼルダの姿を見て、なぜ人々が私を見て、眉を潜めたのか原因がわかったわ。

グリゼルダは、私と全く同じデザインのドレスを身に着けていたの。

ただしドレスの色だけは違ったわ。

私のドレスはどどめ色、グリゼルダのドレスは真紅。

グリゼルダの派手な顔立ちには、縦巻きロールも、真っ赤なリボンも似合っていたわ。

メリハリのある彼女の体には、胸元の開いたドレスもよく映えていた。

私は地味な顔に似合わない厚化粧を施され、茶色の髪を縦ロールにされ、体型に合わないどどめ色のドレスを纏っていて……ここにいるのが死ぬほど恥ずかしかったわ。

お願い、みんな私を見ないで……!

私だって好きでこんな格好をしている訳じゃないのよ!

私はそう叫んで、この場から逃げ出したかった。

コニーが私の前に立ち、蔑むように目で私を見たの。

「まるでグリゼルダの劣化コピーだな」

そして、彼はそう冷たく言い放ったわ。

「先日、アリーゼ様にパーティーで着るドレスをどこに注文したのか、誰にデザインさせたのか、質問攻めにされましたわ。
 やたらとドレスのデザインについて尋ねてくるので、おかしいと思っていたのですわ。
 彼女は、私の真似っ子をしたかったんですのね。
 アリーゼ様、ご自分のなさっていることを恥ずかしくないとは思わないのかしら?」

グリゼルダが私を見てそう言ったのでした。

彼女は悲しそうな顔をしていましたが、口元が上がっていました。

しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

無能だと捨てられた王子を押し付けられた結果、溺愛されてます

佐崎咲
恋愛
「殿下にはもっとふさわしい人がいると思うんです。私は殿下の婚約者を辞退させていただきますわ」 いきなりそんなことを言い出したのは、私の姉ジュリエンヌ。 第二王子ウォルス殿下と私の婚約話が持ち上がったとき、お姉様は王家に嫁ぐのに相応しいのは自分だと父にねだりその座を勝ち取ったのに。 ウォルス殿下は穏やかで王位継承権を争うことを望んでいないと知り、他国の王太子に鞍替えしたのだ。 だが当人であるウォルス殿下は、淡々と受け入れてしまう。 それどころか、お姉様の代わりに婚約者となった私には、これまでとは打って変わって毎日花束を届けてくれ、ドレスをプレゼントしてくれる。   私は姉のやらかしにひたすら申し訳ないと思うばかりなのに、何やら殿下は生き生きとして見えて―― ========= お姉様のスピンオフ始めました。 「体よく国を追い出された悪女はなぜか隣国を立て直すことになった」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/465693299/193448482   ※無断転載・複写はお断りいたします。

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

婚約者に駆け落ちされた結果

下菊みこと
恋愛
婚約者に結婚式当日に駆け落ちされた結果のお話。結果的にはみんな幸せ。ざまぁなし。納得できるかは人によります。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約者が幼馴染のことが好きだとか言い出しました

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のテレーズは学園内で第6王子殿下のビスタに振られてしまった。 その理由は彼が幼馴染と結婚したいと言い出したからだ。 ビスタはテレーズと別れる為に最悪の嫌がらせを彼女に仕出かすのだが……。

姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します

しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。 失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。 そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……! 悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。

【短編完結】婚約破棄なら私の呪いを解いてからにしてください

未知香
恋愛
婚約破棄を告げられたミレーナは、冷静にそれを受け入れた。 「ただ、正式な婚約破棄は呪いを解いてからにしてもらえますか」 婚約破棄から始まる自由と新たな恋の予感を手に入れる話。 全4話で短いお話です!

とっても短い婚約破棄

桧山 紗綺
恋愛
久しぶりに学園の門を潜ったらいきなり婚約破棄を切り出された。 「そもそも婚約ってなんのこと?」 ***タイトル通りとても短いです。 ※「小説を読もう」に載せていたものをこちらでも投稿始めました。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

処理中です...