【完結】「私が彼から離れた七つの理由」

まほりろ

文字の大きさ
上 下
4 / 9

4話「コニーからの拒絶」

しおりを挟む

私がグリゼルダのドレスのデザインを真似して、同じ物を作らせたというの!?

冗談じゃないわ!

誰がこんな胸元が大きく開いた下品なデザインのドレスを、好き好んで注文するものですか!

どどめいろだって大嫌いよ!

こんな趣味の悪いドレス、今すぐ脱いで、燃やしてしまいたいわ!

縦ロールだって、好きでしてるんじゃないんだから!

厚化粧だって今すぐ落としたいのよ!

私は心の中でそう叫んでいました。

しかし、相手は伯爵令嬢。

喧嘩腰に話すのは懸命ではありません。

「アリーゼ、君がグリゼルダから盗んでいたのはドレスのデザインだけじゃない!
 僕は知っているんだ!
 君が僕や父や母への誕生日の度に、
 グリゼルダにプレゼントの相談して、
 彼女のアイデアを盗んでいたことはな!
 グリゼルダがプレゼントしてくれた物と同じデザインの万年筆や望遠鏡や手鏡が、君の名前でうちに届いたのが何よりの証拠だ!」

コニーや、彼の両親の誕生日が近づくと、グリゼルダにプレゼントの相談をされていました。

彼女は私のアイデアを盗んで、コニーや彼の両親にプレゼントを贈っていたみたいです。

「違うわコニー!
 私の話を聞いて!」

「何が違うんだ!
 君の今のその格好が何よりの証拠だろ!」

コニーからの叱責と同時に、会場中から冷ややかな視線が私に集まりました。

「同じドレスを着るとか、グリゼルダの熱狂的な信者なのかしら?」
「気持ち悪い」
「下位貴族のくせに、伯爵令嬢と同じドレスを着てパーティに参加するなんて、生意気な」
「悪質なストーカーかなんか? グリゼルダが可哀想」

会場に集まった人達は口々に私の悪口を言っています。

誰も私の事を信じてくれないのね……。

ここに私の味方はいないのですね。

私の心を恐怖と絶望が支配しました。

「アリーゼ・クルツ!
 今日限り君との縁を切る!
 僕は君を幼馴染だとは思わない!
 二度と僕に話しかけるな!」

そして……ついに、コニーから絶縁されてしまいました。

「コニー、そんな……!」

「もう君は僕の幼馴染じゃないんだ!
 気安く名前で呼ばないでくれ!」

私に向けるコニーの目は、まるでゴミでも見ているようでした。

「そんなに冷たくしたらかわいそうよ、コニー。
 アリーゼ様もこんな大事になるなんて思っていなかったんじゃないかしら?
 ちょっと私の真似っ子したかっただけよね?
 そうでしょう? アリーゼ様」

グリゼルダ様の顔には同情の下に嘲りが隠れていました。

彼女は私に同情する振りをして、誰よりも私を嘲笑っていたのです。

彼女の目は、余計なこと言ったらクルツ子爵家を潰すわよ……と言っているようでした。

私は何も反論できず、耐えることしか出来なかったのです。

「グリゼルダ、君は優しいね。
 こんなことされたのにアリーゼに同情するなんて。
 でもこうするべきなんだ。
 君のアイデアを盗む最低なストーカーの女とは、今すぐ縁を切りたかったから。
 それが君と婚約者としての最低限のけじめだからね」

「ありがとう、コニー。
 嬉しいわ」
 
コニーは穏やかな表情でグリゼルダを見つめ、彼女も熱の籠もった瞳を彼に向けていました。

私は二人の会話についていけませんでした。

「婚約……?
 二人は婚約するのですか?」

私の声は震えていました。

コニーがグリゼルダと婚約……?

下位貴族を人とも思わない、冷徹で惨忍で嘘つきな彼女と婚約したの……?!

「まだいたのかアリーゼ!
 僕とグリゼルダは婚約するんじゃない、婚約したんだ!
 来週には僕達の婚約披露パーティーを開く予定だ!
 君には招待状を送らないけどね!」
 
コニーがそう吐き捨てるように言いました。

「親同士が仲良しだから、子供の頃は僕たち二人を結婚させようと言う話もあったらしいけど……。
 君は中等部に入ってから、我が家で開くパーティーを直前になってキャンセルしてばかりだ!
 年頃になったら僕と婚約出来ると信じて自惚れていたんだろ?
 だからナヨタ子爵家を軽んじていたんだろう? 
 我が家を軽んじるような奴は、幼馴染としても、友人としても失格だ!
 分かったらもう二度とうちの敷居を跨がないでくれ!!」

彼は眉根を寄せ、まるで毛虫でも見るような目でそう言い放ちました。

会場からは「絶縁されて当然」「いい気味」という声が聞こえました。

私は彼の言葉を、呆然としながら聞いていました。



私が彼から離れた三つ目の理由、コニーからの拒絶。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

お飾り呼ばわりされた公爵令嬢の本当の価値は

andante
恋愛
婚約者を奪おうとする令嬢からからお飾り扱いだと侮辱される公爵令嬢。 しかし彼女はお飾りではなく、彼女を評価する者もいた。

真実の愛かどうかの問題じゃない

ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で? よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

その方は婚約者ではありませんよ、お姉様

夜桜
恋愛
マリサは、姉のニーナに婚約者を取られてしまった。 しかし、本当は婚約者ではなく……?

婚約破棄されましたが、貴方はもう王太子ではありませんよ

榎夜
恋愛
「貴様みたいな悪女とは婚約破棄だ!」 別に構いませんが...... では貴方は王太子じゃなくなりますね ー全6話ー

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

window
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

処理中です...