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4話「コニーからの拒絶」
しおりを挟む私がグリゼルダのドレスのデザインを真似して、同じ物を作らせたというの!?
冗談じゃないわ!
誰がこんな胸元が大きく開いた下品なデザインのドレスを、好き好んで注文するものですか!
どどめいろだって大嫌いよ!
こんな趣味の悪いドレス、今すぐ脱いで、燃やしてしまいたいわ!
縦ロールだって、好きでしてるんじゃないんだから!
厚化粧だって今すぐ落としたいのよ!
私は心の中でそう叫んでいました。
しかし、相手は伯爵令嬢。
喧嘩腰に話すのは懸命ではありません。
「アリーゼ、君がグリゼルダから盗んでいたのはドレスのデザインだけじゃない!
僕は知っているんだ!
君が僕や父や母への誕生日の度に、
グリゼルダにプレゼントの相談して、
彼女のアイデアを盗んでいたことはな!
グリゼルダがプレゼントしてくれた物と同じデザインの万年筆や望遠鏡や手鏡が、君の名前でうちに届いたのが何よりの証拠だ!」
コニーや、彼の両親の誕生日が近づくと、グリゼルダにプレゼントの相談をされていました。
彼女は私のアイデアを盗んで、コニーや彼の両親にプレゼントを贈っていたみたいです。
「違うわコニー!
私の話を聞いて!」
「何が違うんだ!
君の今のその格好が何よりの証拠だろ!」
コニーからの叱責と同時に、会場中から冷ややかな視線が私に集まりました。
「同じドレスを着るとか、グリゼルダの熱狂的な信者なのかしら?」
「気持ち悪い」
「下位貴族のくせに、伯爵令嬢と同じドレスを着てパーティに参加するなんて、生意気な」
「悪質なストーカーかなんか? グリゼルダが可哀想」
会場に集まった人達は口々に私の悪口を言っています。
誰も私の事を信じてくれないのね……。
ここに私の味方はいないのですね。
私の心を恐怖と絶望が支配しました。
「アリーゼ・クルツ!
今日限り君との縁を切る!
僕は君を幼馴染だとは思わない!
二度と僕に話しかけるな!」
そして……ついに、コニーから絶縁されてしまいました。
「コニー、そんな……!」
「もう君は僕の幼馴染じゃないんだ!
気安く名前で呼ばないでくれ!」
私に向けるコニーの目は、まるでゴミでも見ているようでした。
「そんなに冷たくしたらかわいそうよ、コニー。
アリーゼ様もこんな大事になるなんて思っていなかったんじゃないかしら?
ちょっと私の真似っ子したかっただけよね?
そうでしょう? アリーゼ様」
グリゼルダ様の顔には同情の下に嘲りが隠れていました。
彼女は私に同情する振りをして、誰よりも私を嘲笑っていたのです。
彼女の目は、余計なこと言ったらクルツ子爵家を潰すわよ……と言っているようでした。
私は何も反論できず、耐えることしか出来なかったのです。
「グリゼルダ、君は優しいね。
こんなことされたのにアリーゼに同情するなんて。
でもこうするべきなんだ。
君のアイデアを盗む最低なストーカーの女とは、今すぐ縁を切りたかったから。
それが君と婚約者としての最低限のけじめだからね」
「ありがとう、コニー。
嬉しいわ」
コニーは穏やかな表情でグリゼルダを見つめ、彼女も熱の籠もった瞳を彼に向けていました。
私は二人の会話についていけませんでした。
「婚約……?
二人は婚約するのですか?」
私の声は震えていました。
コニーがグリゼルダと婚約……?
下位貴族を人とも思わない、冷徹で惨忍で嘘つきな彼女と婚約したの……?!
「まだいたのかアリーゼ!
僕とグリゼルダは婚約するんじゃない、婚約したんだ!
来週には僕達の婚約披露パーティーを開く予定だ!
君には招待状を送らないけどね!」
コニーがそう吐き捨てるように言いました。
「親同士が仲良しだから、子供の頃は僕たち二人を結婚させようと言う話もあったらしいけど……。
君は中等部に入ってから、我が家で開くパーティーを直前になってキャンセルしてばかりだ!
年頃になったら僕と婚約出来ると信じて自惚れていたんだろ?
だからナヨタ子爵家を軽んじていたんだろう?
我が家を軽んじるような奴は、幼馴染としても、友人としても失格だ!
分かったらもう二度とうちの敷居を跨がないでくれ!!」
彼は眉根を寄せ、まるで毛虫でも見るような目でそう言い放ちました。
会場からは「絶縁されて当然」「いい気味」という声が聞こえました。
私は彼の言葉を、呆然としながら聞いていました。
私が彼から離れた三つ目の理由、コニーからの拒絶。
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