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2章

52話

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 ダンジョン探索のグループが変わり、ルートが抜けてラギルが入ることとなっていた。

 もしゲーム通り魔道具を使った悪事が発生した場合、ラギルが犯人ならすぐにわかる。
 昼休みを終えて――私、レックス殿下、ロイ、ラギル、カレンと共に、ダンジョンの最深部へ向かっていた。
 ダンジョン内を歩きながら、私達は陣形について話している。

「ラギル様は剣を扱えますし、レックス殿下と一緒に前衛がよさそうですね」

「元冒険者だから動きがいいし、難無く最深部に行けそうかな」

 私は隣にいるロイと話しながら陣形を決めて、ダンジョンの階段を降りていく。
 このダンジョンに潜る郊外授業の時は、学園外だからロウデス教が行動を起こしやすい。

 ゲームだとロイが別クラスだから、レックス殿下、主役カレン、護衛のルート、悪役令嬢リリアンで向かっていた。
 悪役令嬢リリアンは婚約者だからと実力不足なのに同行して迷惑をかけ、更にダンジョン内に雇った盗賊を待機させたりもする。
 私はそんなことをする気がないから、ダンジョンに潜る郊外授業でも今まで問題は起きていない。

「……私、ダンジョン探索で迷惑をかけていませんよね」

 それでも思わず口に出してしまったのは、ダンジョンでの行動が婚約破棄を引き起こすからだ。
 中間試験でダンジョンに潜った時、悪役令嬢リリアンの行動により、レックス殿下が婚約破棄を言い渡すことになっている。

 中間試験で発生するダンジョン探索の試験で、悪役令嬢リリアンは皆の足を引っ張りまくった。
 それは雇った盗賊団に協力する為でもあり、主役カレンを危機的状況に陥らせる。
 盗賊団を対処した時に悪役令嬢リリアンが失言をして、盗賊団を雇っていたことが判明した。
 今までの行動も追及されて、悪事の元凶だと発覚していないけど婚約破棄を言い渡される。
 そして悪役令嬢リリアンは復讐心が強まり、主役カレンに対する悪事の規模を増していく。

 ――ゲームの出来事を思い返して、レックス殿下に嫌われていないか心配になり呟いてしまう。

「何を言っている!? リリアンがいるから俺達は安全にダンジョンに潜れているだろう!」

 前衛の二人に聞こえていたようで、レックス殿下が振り向いて叫ぶ。
 声色から不安になっていると察したようで、レックス殿下は力強く励ましてくれた。

「ここまで高度な光の球を操作できるとは……地下なのに、外と変わりません」

 ラギルも私のダンジョン探索用の発光体を魔法で作っていることに驚き、関心している様子だ。

「そ、そうですね」

 呟きの即座に反応した辺り、レックス殿下は私を気にかけてくれている。
 二学期の中間試験は婚約破棄イベントに関係しているから、つい不安になってしまった。

「リリアン様の魔法は凄いのに、様々な新しい魔法を試していると聞きました!」

 ラギルは私が魔力で発生させているダンジョンを照らす光の球、発光体を見て驚いた声を漏らす。
 興奮しているラギルの声が前から聞こえて、私は話そうとしていた。
 ダンジョン探索でもあまり周囲を警戒していないのは、私の魔法で辺りが見えているからだ。
 罠もすぐに把握できるから、予想外の事態が起きない限り何も問題はない。
 
「そうですね……どれも未完成ですし、失敗する可能性が高いみたいですけど、試してから判断したいと思っています」

「なるほど、素晴らしい考えだと思っております」

 そう言うけど、実際は成功しそうな魔法もある。
 このことを話せば目立つかもしれないし、ラギルを警戒しているから言わなくてよさそうだ。

 他者の魔力に干渉する魔法――ゲームでは存在しなかった魔法を、私は切札にしようとしている。
 それを隠すために複数の成功しなさそうな魔法を覚えようとしているから、ラギルも気付けていないのかもしれない。
 もしかしたら察しているかもしれないけど、それでも教える必要はなさそうだ。
 会話をしながらでも問題なくダンジョンの階段を降りていき、レックス殿下が呟く。

「地下十階まで来たが、ラギルは魔法も凄いが剣の腕もいいな」

「レックス殿下には敵いませんけどね……このダンジョンは地下十二階が最深部と聞きました。この調子で最深部まで行きたいものです」

 そう言いながら、レックス殿下とラギルが前を歩いて行く。
 何度かモンスターと戦闘になったけど、私、ロイ、カレンの後衛は戦闘で魔法を使っていない。
 それ程までにレックス殿下とラギルが前衛として強すぎて、学園のダンジョン程度なら余裕となっていた。
 戦いを見ていたけど、お世辞ではなく本当にレックス殿下の方が身体能力は高い。
 夏休みを経て今まで見た剣士の中でも最強だと思えるほどで、私に相応しくなると決意したからこそだ。

 その後も特に予想外のイベントは発生せず最深部に到達して、ラギルを入れたダンジョン探索を終える。
 警戒しすぎだったのではないかと思ってしまったけど、事件が起きようとしていた。
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