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「猫ちゃんとの幸せな暮らしです!」編
第11話 名前決定!
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「すずぎすわぁ~~~~ん! 私、感動じまぢたぁぁぁぁぁぁ!」
土曜の朝、オレの部屋に美坂と河原が集まっていた。
ズビー! っと鼻水を噛んでいる美坂を無視して河原に話しかける。
「やっぱり、金曜の夜に投稿したのがよかったのかな」
「そうですね。土日でさらに再生数が伸びますよ」
河原はすました顔でそう言うが、クセなのかクリクリと耳たぶをいじる指先の落ち着かない動きに、抑えきれてない喜びが表れ出てる。
「河原さん、すごいですぅぅぅぅ! うぅぅぅ……! あんな……あんな感動的な動画を作るなんてぇ~~~……天才ですよ、天才……! ぅぅぅ……!」
美坂の噛んだばかりの鼻から再びズビズバと汁が垂れてくる。
美坂から天才と言われてニヤニヤが隠しきれてない河原に、オレは予定を確認する。
「え~っと、次に公開する動画は名前のやつだっけ?」
「はい、今日の夜に公開されるよう予約してあります」
「ズビッ……あ、私SNSで告知しときましたよ!」
オレたち三人の大まかな役割分担。
河原は動画制作。
美坂は広報。
そして、オレは撮影。
大体はこんなで、あとは臨機応変にって感じ。
チャンネルの管理者はオレ。
収益は「経費を引いてから残りを三分割」ということで一旦話がまとまった。
「ウェブメディアからいくつか取材の申込みも来てますよ」
「マジですか!? くっそぉ~……自分もずっと動画投稿してたのに、そんなの一回も来たことないですよ……!」
「そりゃあ、解説系動画じゃ来ないんじゃないですか?」
「そりゃそうですけど……」
「取材は、まだ待ってもらったほうがいいな。再生数が落ち着いたくらいの頃に、まとまった話を提供した方がいいだろう」
なんて言いつつ、実は煩わしいことを先延ばしにしたいだけだったりする。
「わかりました! 上手く伝えておきますね!」
ま、このへんの対応は美坂に任せておいて問題ないだろう。
「ところでロボットの名前、ほんとにこれでいいんですよね? もう公開したらやり直せませんよ?」
河原の向ける目線の先。
そこには「-ω-」な顔ですやすやと休む配膳ロボの姿があった。
「オレはいいけど、美坂は?」
「私も……大丈夫です、はい」
「ほんとに? こいつには美坂が一番愛着持ってるからな。もし美坂が気に食わないようなら、いつでも名前変えるぞ?」
「はい、ありがとうございます。でも、ほんとに大丈夫ですから」
「そうか……なら、いいんだな? 本当に、その……」
オレが最初にお供えした「おかかおにぎり」
その、おかか。
英語で言うと「ドライド・ボニート・フレーク」。
そこから名前の候補になったのは三つ。
まず、一つ目は「おかか」
二つ目は「ドラちゃん」
ただ、この二つはどちらも既存の有名キャラクターがあって色々と問題がありそうってことで、決まったのはもう一つの──。
「ボニーで」
「はい! ボニーちゃん、かわいいと思います!」
「そうか、美坂がそう言うなら決定だな」
美坂にしては少し歯切れの悪そうな返事。
いや、ほんとにちょっとだけなんだけど。
さすがに一年間一緒に外回りをしてたから、そんな些細な機微にも気付いてしまう。
「はいはい~、じゃあ予定通り今夜二本目の動画を公開しますね~っと」
そんな美坂の様子に一切気付いた様子もない河原は、ご機嫌でノートパソコンをタタタンと叩く。
「さっ! じゃあ一本目の動画も上手くいった私たちは、これからじゃんじゃん動画のネタになるような動画を撮り溜めするんですよね!」
「そうですね~、素材はいくらあってもいいですからね~」
「でも大変じゃないか? 編集するのは河原くん一人なんだろ?」
「ハハッ、お構いなく。これまでボクがネタを探すのにどれだけ苦しんできたと思ってるんですか……。それと比べたら、これからいくらでも素材がザクザク手に入るだなんて……ふふ、うふふふ……!」
一人怪しい笑みを浮かべる河原。
「河原さんが須々木さんのお隣さんってのもよかったですよね! こうやってすぐに集まれますし!」
「それですっ!」
急に大声を上げる河原。
「こういう撮影データってのは大体アップローダーで送るんですけど、大量の素材データを上げて落としてってするのは、実はかなり時間がかかるんです。それと比べて、撮影してすぐ隣の部屋にデータを物理的に持ち運べる……これはぁ! まさにっ! 夢のような環境ですよぉっ!」
まるで「ボクは新世界の神となる!」とでも言い出しそうな勢いで悦に入る河原。
「そ、そうか、よかったな……」
「えと……それじゃあ、さっそく始めましょうか、撮影……」
流石の美坂もちょっと引いている。
こうして、興奮冷めやらぬ河原と、鼻水も収まってきた美坂と、オレの三人で、ネコ型配膳ロボ改め──「ボニー」の撮影へと取り掛かった。
土曜の朝、オレの部屋に美坂と河原が集まっていた。
ズビー! っと鼻水を噛んでいる美坂を無視して河原に話しかける。
「やっぱり、金曜の夜に投稿したのがよかったのかな」
「そうですね。土日でさらに再生数が伸びますよ」
河原はすました顔でそう言うが、クセなのかクリクリと耳たぶをいじる指先の落ち着かない動きに、抑えきれてない喜びが表れ出てる。
「河原さん、すごいですぅぅぅぅ! うぅぅぅ……! あんな……あんな感動的な動画を作るなんてぇ~~~……天才ですよ、天才……! ぅぅぅ……!」
美坂の噛んだばかりの鼻から再びズビズバと汁が垂れてくる。
美坂から天才と言われてニヤニヤが隠しきれてない河原に、オレは予定を確認する。
「え~っと、次に公開する動画は名前のやつだっけ?」
「はい、今日の夜に公開されるよう予約してあります」
「ズビッ……あ、私SNSで告知しときましたよ!」
オレたち三人の大まかな役割分担。
河原は動画制作。
美坂は広報。
そして、オレは撮影。
大体はこんなで、あとは臨機応変にって感じ。
チャンネルの管理者はオレ。
収益は「経費を引いてから残りを三分割」ということで一旦話がまとまった。
「ウェブメディアからいくつか取材の申込みも来てますよ」
「マジですか!? くっそぉ~……自分もずっと動画投稿してたのに、そんなの一回も来たことないですよ……!」
「そりゃあ、解説系動画じゃ来ないんじゃないですか?」
「そりゃそうですけど……」
「取材は、まだ待ってもらったほうがいいな。再生数が落ち着いたくらいの頃に、まとまった話を提供した方がいいだろう」
なんて言いつつ、実は煩わしいことを先延ばしにしたいだけだったりする。
「わかりました! 上手く伝えておきますね!」
ま、このへんの対応は美坂に任せておいて問題ないだろう。
「ところでロボットの名前、ほんとにこれでいいんですよね? もう公開したらやり直せませんよ?」
河原の向ける目線の先。
そこには「-ω-」な顔ですやすやと休む配膳ロボの姿があった。
「オレはいいけど、美坂は?」
「私も……大丈夫です、はい」
「ほんとに? こいつには美坂が一番愛着持ってるからな。もし美坂が気に食わないようなら、いつでも名前変えるぞ?」
「はい、ありがとうございます。でも、ほんとに大丈夫ですから」
「そうか……なら、いいんだな? 本当に、その……」
オレが最初にお供えした「おかかおにぎり」
その、おかか。
英語で言うと「ドライド・ボニート・フレーク」。
そこから名前の候補になったのは三つ。
まず、一つ目は「おかか」
二つ目は「ドラちゃん」
ただ、この二つはどちらも既存の有名キャラクターがあって色々と問題がありそうってことで、決まったのはもう一つの──。
「ボニーで」
「はい! ボニーちゃん、かわいいと思います!」
「そうか、美坂がそう言うなら決定だな」
美坂にしては少し歯切れの悪そうな返事。
いや、ほんとにちょっとだけなんだけど。
さすがに一年間一緒に外回りをしてたから、そんな些細な機微にも気付いてしまう。
「はいはい~、じゃあ予定通り今夜二本目の動画を公開しますね~っと」
そんな美坂の様子に一切気付いた様子もない河原は、ご機嫌でノートパソコンをタタタンと叩く。
「さっ! じゃあ一本目の動画も上手くいった私たちは、これからじゃんじゃん動画のネタになるような動画を撮り溜めするんですよね!」
「そうですね~、素材はいくらあってもいいですからね~」
「でも大変じゃないか? 編集するのは河原くん一人なんだろ?」
「ハハッ、お構いなく。これまでボクがネタを探すのにどれだけ苦しんできたと思ってるんですか……。それと比べたら、これからいくらでも素材がザクザク手に入るだなんて……ふふ、うふふふ……!」
一人怪しい笑みを浮かべる河原。
「河原さんが須々木さんのお隣さんってのもよかったですよね! こうやってすぐに集まれますし!」
「それですっ!」
急に大声を上げる河原。
「こういう撮影データってのは大体アップローダーで送るんですけど、大量の素材データを上げて落としてってするのは、実はかなり時間がかかるんです。それと比べて、撮影してすぐ隣の部屋にデータを物理的に持ち運べる……これはぁ! まさにっ! 夢のような環境ですよぉっ!」
まるで「ボクは新世界の神となる!」とでも言い出しそうな勢いで悦に入る河原。
「そ、そうか、よかったな……」
「えと……それじゃあ、さっそく始めましょうか、撮影……」
流石の美坂もちょっと引いている。
こうして、興奮冷めやらぬ河原と、鼻水も収まってきた美坂と、オレの三人で、ネコ型配膳ロボ改め──「ボニー」の撮影へと取り掛かった。
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