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ー光ー 第九章 鬼神と無能神様
第百十三話 星玉風
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なんと封印の儀はもう始まっているようだ。
天光琳は着くと走り出した。
天光琳の走る速さは天宇軒ですら追いつかない。
だが皆は天光琳を見失わないように追いかける形で走っていった。
封印の義は玲瓏美国の広場で行う。
祭りの時、舞台があったところだ。
向かう途中各国の王とぶつかりそうになった。
ぶつかりここで足止めされるのは一番最悪なパターンなのでなるべく端を走るようにした。
「おい、あれ天光琳じゃないか?」
「なんで来てるんだ......」
各国の王たちは首を傾げた。本来なら来なくて良いのに、なぜいるのだろう。
天光琳が広場に到着すると、広場には各国の王たちでいっぱいになっていた。
そのため、よく見えない。
身長が低く小柄な天光琳は頑張って前へ進もうとしたが、神が多すぎて潰されそうになる。
「では美梓豪"様"、お願いします」
星玉風の声が聞こえた。
まだ封印されていないようだ。
天光琳は潰されそうになりながらも一生懸命前へ進んだ。
もう天宇軒たちは天光琳のことを見失ってしまっただろう。
......と突然、美梓豪が手から光を出し、その光を眺めた。
これは緊急のお知らせが送られてきた合図だ。
美梓豪はその光を眺め、辺りを見渡した。
そして、星玉風の方に視線を戻した。
「何か言うことはないのですか?」
時間稼ぎをしているのだろうか。
天光琳はその間に急いで前へ進んでいく。
「そうですね......。もう一度......光琳さんに会いたいです」
星玉風がそう言うと、各国の王は驚いた。
「あんな無能神様に?」
「なぜ......?」
すると天光琳は大きく息を吸った。そして......
「玉風様っ!!!」
皆は声が聞こえた方に目を向けた。
そこには息を切らせた天光琳がいた。
天光琳は何とか前へ進み、星玉風と美梓豪が見える位置まで来たのだ。
「光琳さん......!」
星玉風はまさか天光琳がいるとは思っておらず、目から涙が溢れてきた。
「お祖父様、玉風様は悪い神ではないのです......神界を良い国にするために......星連杰様を殺したのです......なので!」
「知っているぞ」
「え......」と天光琳は驚いた。
美梓豪は寂しそうな顔で言った。
「光琳さん。私が頼んだのです」
何故だ。生きたくないのだろうか。
てっきり皆は神王を殺した悪い神だと思っていて、星玉風を封印しようとしているのかと思った。
だが違った。
「どうして......」
「今の神王は私です。私が死ななければ美梓豪様は王になりません」
そうか。そうだった。
まだ神王は星玉風なのだ。
星玉風は神王になりたくないと言っていた。
ここで封印されなければ神王になり続ける。
「でも......少し待てば玲瓏美国が追いついて、玉風様は神王にならなくても済むのではないですか......?」
「それでは遅いのです。追いつくと言っても、あと一ヶ月以上はかかるでしょう......?」
星連杰は神の力が弱い神を殺し、強い神だけを残らせ何年もそうやって繰り返してきた。
当然力の強い神子供も増え、弱い者は消えていった。
そのため、追いつくと言っても、玲瓏美国と佳宵星国の差は結構ある。一週間では無理だろう。
「美梓豪様。神王の最後の命令です」
星玉風は息を吸った。そして
「私を封印してください」
神王の命令は守らなければ行けない。美梓豪はそれに従わなければ行けない。
美梓豪は本当はやりたくない......と思いながら、ゆっくり封印の儀を進めた。
そして星玉風は金色の光に包まれた。
「玉風様!」
天光琳は護衛神を押し抜けて、星玉風の近くまで走ってきた。
「光琳!近づくな!光琳まで封印されるぞ!」
美梓豪は心配し、急いで天光琳の両腕を掴んだ。
「玉風様......玉風様......!」
「光琳さん......」
光に包まれた星玉風はだんだんと消えていく。もう助けられない。
すると星玉風は目に涙を浮かべながら微笑んだ。
「光琳さん、約束を守って下さり、感謝致します。......そして、笑ってください。涙は似合いませんよ」
笑えるわけが無い。しかし天光琳の笑顔は妹たちにそっくりだと言っていた。
最後に妹たちの笑顔を見たいのだろう。
「玉風様......また会いましょう!」
天光琳は無理やり笑顔を作った。
しかし涙はとまらない。
星玉風は安心したかのように微笑んだ。
「光琳さんは良い神です。神の力が使えなくたって......いつかきっとこの世界を良いものに変えてくれます。ありがとう......。」
そう言って星玉風は消えていった。
そして最後に残った光の玉は、ガラスのように割れ、パラパラと光のように消えていった。これが神心なのか?
星玉風はもう神界に戻ることは出来ない。
もう二度と会えない。
封印の儀が終わると、美梓豪は天光琳を離した。すると天光琳は地面に崩れ落ちた。
もう顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
「光琳!」
天麗華たちが追いついたようで、天光琳のそばに集まった。
そして......美梓豪は神王となった。
突然の事で美梓豪も理解が追いついていないようだ。
佳宵星国の王一族はいなくなり、国は滅びた。
佳宵星国の神々は各国に移動となる。
皆は安心している。これも全て星玉風のおかげだ。
美梓豪は星連杰のようにならないと心に決め、よい国にしていくだろう。
天光琳は着くと走り出した。
天光琳の走る速さは天宇軒ですら追いつかない。
だが皆は天光琳を見失わないように追いかける形で走っていった。
封印の義は玲瓏美国の広場で行う。
祭りの時、舞台があったところだ。
向かう途中各国の王とぶつかりそうになった。
ぶつかりここで足止めされるのは一番最悪なパターンなのでなるべく端を走るようにした。
「おい、あれ天光琳じゃないか?」
「なんで来てるんだ......」
各国の王たちは首を傾げた。本来なら来なくて良いのに、なぜいるのだろう。
天光琳が広場に到着すると、広場には各国の王たちでいっぱいになっていた。
そのため、よく見えない。
身長が低く小柄な天光琳は頑張って前へ進もうとしたが、神が多すぎて潰されそうになる。
「では美梓豪"様"、お願いします」
星玉風の声が聞こえた。
まだ封印されていないようだ。
天光琳は潰されそうになりながらも一生懸命前へ進んだ。
もう天宇軒たちは天光琳のことを見失ってしまっただろう。
......と突然、美梓豪が手から光を出し、その光を眺めた。
これは緊急のお知らせが送られてきた合図だ。
美梓豪はその光を眺め、辺りを見渡した。
そして、星玉風の方に視線を戻した。
「何か言うことはないのですか?」
時間稼ぎをしているのだろうか。
天光琳はその間に急いで前へ進んでいく。
「そうですね......。もう一度......光琳さんに会いたいです」
星玉風がそう言うと、各国の王は驚いた。
「あんな無能神様に?」
「なぜ......?」
すると天光琳は大きく息を吸った。そして......
「玉風様っ!!!」
皆は声が聞こえた方に目を向けた。
そこには息を切らせた天光琳がいた。
天光琳は何とか前へ進み、星玉風と美梓豪が見える位置まで来たのだ。
「光琳さん......!」
星玉風はまさか天光琳がいるとは思っておらず、目から涙が溢れてきた。
「お祖父様、玉風様は悪い神ではないのです......神界を良い国にするために......星連杰様を殺したのです......なので!」
「知っているぞ」
「え......」と天光琳は驚いた。
美梓豪は寂しそうな顔で言った。
「光琳さん。私が頼んだのです」
何故だ。生きたくないのだろうか。
てっきり皆は神王を殺した悪い神だと思っていて、星玉風を封印しようとしているのかと思った。
だが違った。
「どうして......」
「今の神王は私です。私が死ななければ美梓豪様は王になりません」
そうか。そうだった。
まだ神王は星玉風なのだ。
星玉風は神王になりたくないと言っていた。
ここで封印されなければ神王になり続ける。
「でも......少し待てば玲瓏美国が追いついて、玉風様は神王にならなくても済むのではないですか......?」
「それでは遅いのです。追いつくと言っても、あと一ヶ月以上はかかるでしょう......?」
星連杰は神の力が弱い神を殺し、強い神だけを残らせ何年もそうやって繰り返してきた。
当然力の強い神子供も増え、弱い者は消えていった。
そのため、追いつくと言っても、玲瓏美国と佳宵星国の差は結構ある。一週間では無理だろう。
「美梓豪様。神王の最後の命令です」
星玉風は息を吸った。そして
「私を封印してください」
神王の命令は守らなければ行けない。美梓豪はそれに従わなければ行けない。
美梓豪は本当はやりたくない......と思いながら、ゆっくり封印の儀を進めた。
そして星玉風は金色の光に包まれた。
「玉風様!」
天光琳は護衛神を押し抜けて、星玉風の近くまで走ってきた。
「光琳!近づくな!光琳まで封印されるぞ!」
美梓豪は心配し、急いで天光琳の両腕を掴んだ。
「玉風様......玉風様......!」
「光琳さん......」
光に包まれた星玉風はだんだんと消えていく。もう助けられない。
すると星玉風は目に涙を浮かべながら微笑んだ。
「光琳さん、約束を守って下さり、感謝致します。......そして、笑ってください。涙は似合いませんよ」
笑えるわけが無い。しかし天光琳の笑顔は妹たちにそっくりだと言っていた。
最後に妹たちの笑顔を見たいのだろう。
「玉風様......また会いましょう!」
天光琳は無理やり笑顔を作った。
しかし涙はとまらない。
星玉風は安心したかのように微笑んだ。
「光琳さんは良い神です。神の力が使えなくたって......いつかきっとこの世界を良いものに変えてくれます。ありがとう......。」
そう言って星玉風は消えていった。
そして最後に残った光の玉は、ガラスのように割れ、パラパラと光のように消えていった。これが神心なのか?
星玉風はもう神界に戻ることは出来ない。
もう二度と会えない。
封印の儀が終わると、美梓豪は天光琳を離した。すると天光琳は地面に崩れ落ちた。
もう顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
「光琳!」
天麗華たちが追いついたようで、天光琳のそばに集まった。
そして......美梓豪は神王となった。
突然の事で美梓豪も理解が追いついていないようだ。
佳宵星国の王一族はいなくなり、国は滅びた。
佳宵星国の神々は各国に移動となる。
皆は安心している。これも全て星玉風のおかげだ。
美梓豪は星連杰のようにならないと心に決め、よい国にしていくだろう。
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