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ー光ー 第九章 鬼神と無能神様

第百十二話 知っていた

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 次の日。
 天光琳は朝食の時間は行くことにした。
 疑われないために。

 しかし泣きすぎたせいで両目が腫れてしまっている。
 天万姫や天浩然たちが心配して「大丈夫?何かあった?」と聞いてくれるが、天光琳は「大丈夫です」としか答えなかった。

 そして天俊熙が朝から何も話してくれない。
 昨日「そっとして欲しい」と言ったからだろうか。

 朝食のあとは天光琳は部屋に引きこもった。

 修行どころでは無い。
 天光琳は窓辺に椅子を置き、座りながら外の様子を眺めている。

 また天麗華と天俊熙は二神で話しているようで今は一神だ。


「玉風様......今は何をしているのかな」





 あっという間に日が暮れた。
 天光琳の心臓の音はどんどん大きくなる。

 佳宵星国では今どうなっているのだろう......それしか考えられなくなった。

 ......もし星玉風が星連杰を殺すのに失敗したどうなるのだろう。
 星玉風だけが封印されて、星連杰は生き続けるだろう。それが一番最悪なパターンだ。
 それだけはやめて欲しい......と天光琳は思った。

 そして立ち上がり、扇を持った。
 部屋の中で舞を踊るのだ。
 ......平穏無事之舞......。意味は変わったこともなく穏やかなさま......だが、舞ったところで何も変わらないだろう。
 しかしそうでもしないと気が落ち着かない。
 神の力が使えない自分が、人間ではなく神に対して舞っても意味がないのだが、天光琳は歌い、舞始めた。

 涙を流し、全身を震わせながら一生懸命歌って舞う。
 声が出ない。それでも歌い続ける。


「......光琳?」


 どうやら天麗華と天俊熙が戻ってきたようだ。しかし天光琳は手を止めない。


「どうしたんだ......」「光琳...何があったの......?」


 二神は心配しているようだが、舞を途中で辞めたくない。
 天光琳は止めることなく舞い続けた。

 舞終わり、二神の方を向いた......次の瞬間。突然大きな警報の音が聞こえた。


「なっなに!?」「なんの音だ!?」


 天俊熙と天麗華は驚いている。
 天光琳も驚いた。しかし初めて聞く警報なのに、なんの警報か分かってしまった。

 この警報は......神王が殺された時に神界全体に流される警報だ!


 廊下が騒がしくなった。
 そして窓が開いているため、街の神々の声も聞こえる。


「この警報はなんだ?」

「神王様が死んだそうよ!」

「神王様が死んだ!?」

「誰に殺されたんだ!?」



「麗華様、俊熙様、光琳様!今すぐ大広間に集まってください!」

「分かった、今行くわ」


 護衛神がそう言うと、天麗華は天光琳の腕を引っ張り、三神は大広間に向かった。



 ✿❀✿❀✿



 大広間に着くと、皆揃っていて天宇軒が険しい顔をしていた。


「星国に一体何が......」


 天浩然がそう言うと、天宇軒は天麗華の方を向いた。


「昨日、星国の様子はどう.........光琳?」


 天宇軒は天光琳の暗い表情を見て、途中で言いかけて天光琳の方を見た。

 すると後ろから護衛神が走ってくるのが見えた。


「宇軒様!たった今、報告が入りました!神王様を殺したのは......息子である星玉風だそうです」

「玉風さんが!?」


 天麗華がそういい、皆も信じられないという顔をした。
 そして天光琳は両手で手を隠ししゃがみ込んだ。
 皆は天光琳を見た。
 天光琳は......泣いているのだ。


「光琳。何が知っているのか?」

「玉風...様は......星玉風様、は良い...神なんです......」


 天光琳は泣きながら一生懸命喋った。
 天万姫は天光琳の側まで行き、しゃがんだ。


「ゆっくりでいいから......話してくれる?」


 もう......話しても良いだろう。
 もう神王は殺したのだから。
 もう終わったのだから......。

 天光琳は星玉風のことを全て話した。





「僕......今日のこと、全て知っていました......でも...言わないでって......」

「辛かったわね......でもあなたのせいではないのよ」


 天万姫は天光琳を慰めた。
 天麗華と天俊熙も昨日から天光琳がの様子がおかしかったことに納得した。


「たしかに神として殺しは許されない。ましてや神王なんて......。しかし、これにはちゃんとした理由があるわ。封印されなくて済むのてまはないでしょうか?」


 天語汐がそう言うと、天光琳は顔を上げた。
 そんなことができるのだろうか。


「確かにそうだ。封印するのは......次の神王。なら、美梓豪様になるな。梓豪様なら話を聞いてくださるだろう」


 天浩然も頷きながら言った。
 佳宵星国が滅びるとなれば、現在二位の玲瓏美国が次の一位の国となり、美梓豪が神王になる。
 美梓豪に事情を言えば封印されずに済むかもしれない。


「封印の儀が始まるのはいつでしょうか?」

「今夜...すぐだ」


 天俊熙が天宇軒に聞くと、天宇軒は眉間に皺を寄せて言った。
 すると天光琳は立ち上がり走り出した。


「おい!」


 天俊熙が腕を掴み、止めた。
 天光琳は片手で目を擦り、真剣な顔で言った。


「今からお祖父様に伝えなきゃ!」

「お前一神じゃ行けないだろ!?」


 神の力が使えない天光琳は天麗華たちのように紋を描くことが出来ない。
 そのため、誰か一緒に来なければ行けない。


「私も行くわ!」「俺も!」「俺も行こう」


 天麗華、天俊熙、天浩然がそういい、天光琳は再び泣きそうになってしまった。
 また国が滅びることとなる封印には各国の王は必ず行かなければいけない。その間は王妃が国を管理する。
 そのため天万姫は残らなければいけない。
 そしてまだ十八歳になっていない天李静は行けない。
 なので天万姫、天李静、天語汐、天李偉は残ることにした。


 五神は急いで移動する結界の上に立った。
 天宇軒が玲瓏美国の紋を描くと、五神は光に包まれ玲瓏美国に移動した。




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